FAQとマニュアルとでは、主な役割や活用シーンが異なります。マニュアル化とは、業務の手順や決まりごとを体系的にまとめることです。新入社員や異動となった後任者を即戦力として育成する場合や、バックオフィスなどの定型業務を効率化する目的でよく使われます。
一方、FAQ化とは、多く寄せられる問い合わせをQ&A形式で整理することです。業務に関する疑問や質問とその回答をまとめることで、社内ナレッジの蓄積と共有を促します。
マニュアルには基本的な仕事の進め方が記載されており、取り組む上で疑問や悩みが出てきたらFAQを用いて解消する、といった使い分けが可能です。
FAQとマニュアルは強みや活躍する場面が異なるため、それぞれの特徴を押さえて活用することが大切です。FAQとマニュアルの両方を取り入れることで期待できる主なメリットについて解説します。
マニュアルとFAQを作成し、併用することで、社内のヘルプデスクやコールセンターへの問い合わせ削減につながります。マニュアルを見ながら業務に取り組み、途中で出てきた疑問点をFAQで解決する仕組みを構築すれば、業務に不慣れな人でもスムーズに仕事を進められます。
また、社内からの問い合わせ件数が減った後は、問い合わせ内容の分析や社員教育、業務の効率化といった本来の業務に集中することが可能です。加えて、少人数で社内ヘルプデスクの運営が可能になり、人件費などのコスト削減にもつながります。
ヘルプデスクでは、通常1つの問い合わせについて1人のスタッフが対応します。そのため、情報や知識が共有されにくく、特定の人以外は分からない、できないという属人化の状況を招きやすい傾向があります。
また、各スタッフが自分の経験やスキルをベースに進めることになり、個人によって応対品質に差が生まれます。加えて、業務経験や知識が豊富な人に仕事が集中し、負担が増える可能性もあるでしょう。
個人の経験や知識を、マニュアルやFAQを活用して社内ナレッジとして蓄積し、共有できれば属人化の解消につながります。また、マニュアルやFAQの作成によって業務に必要なスキルを可視化することで、チーム全体の底上げと業務効率化を推進できます。
新入社員や異動していた後任者の場合、分からないことが多く、都度担当者に質問しなければならないためストレスを抱えがちです。また、社内ヘルプデスクの担当者が不在だと、すぐに疑問を解決できず、業務の遅延につながります。
マニュアルやFAQを作成し、業務上の疑問を自己解決できる仕組みを構築することで、最低限の工数で業務を進められるため、効率化が進みます。また、ヘルプデスクに尋ねる手間が省ける上、より早く必要な回答を得られます。
加えて、退職や異動に伴って発生する引継ぎにおいても、業務手順やルールなど必要な情報をマニュアル化しておけば引継ぎ工数を削減でき、新入社員の独り立ちも促せるでしょう。
マニュアルとFAQを取り入れるメリットは多いものの、導入や運用がうまくできない可能性もあります。ここでは、マニュアルとFAQの導入時に生じやすい課題を紹介します。スムーズな活用に向けて、必要な対策を講じるために参考にしてください。
マニュアルやFAQの作成を通して、業務の棚卸しができ、業務フローの改善につながるというメリットが期待できます。しかし、作成には工数や時間がかかることが多く、リソースを確保できないために導入できない、運営しても途中で使われなくなる、といったケースが考えられます。
また、マニュアルやFAQは必要な情報が網羅され、常に最新の状態にアップデートされている必要があります。一度リリースして終わりではなく、新しい情報を更新する、よくある問い合わせを整理して回答文を修正する、といった作業が継続的に発生します。
導入を検討する際に十分なリソースを確保できるよう配慮することが大切です。問い合わせを管理するシステムとFAQを連動させて、半自動的に更新する仕組みを構築する方法も良いでしょう。社内でリソースが確保できない場合は、外部サービスを利用するという選択肢も有用です。
作成したマニュアルやFAQが利用されない、というケースも多く見られます。工数をかけて作成しても利用されなければ意味がないため、多くの社員に利用してもらえるように工夫する必要があります。
対象社員にメールで通知する、社内ポータルや社内イントラネットの目立つ場所にリンクを設置する、といった対策により、マニュアルやFAQの存在を周知しましょう。また、必要なタイミングで検索できるように、コンテンツの導線を見直すことでも利用を促せます。
マニュアルの情報量が多い場合、視認性に欠けていると読まれない可能性もあるため、よくある質問だけFAQへ移行するなど情報の整理も必要です。
マニュアルやFAQを利用した社員が自己解決できれば、問い合わせ件数は減ると想定できます。ただ、閲覧されていたとしても、疑問解決に至っていないのであれば問い合わせ件数の削減にはつながりにくいでしょう。
リックテレコム社の「コールセンター白書2020」内では、FAQで検索した内容の70%は未解決であることが示されています。代表的な理由として、スペルミスやちょっとした表現の違いなどによって、キーワードを入力しても求める回答を導き出せない「0件ヒット」があります。
ただ、タイプミスや言い換えがあっても、近い項目がヒットすれば求める回答を得られやすくなります。社員が使う検索キーワードにコンテンツを合わせていくための対策と同時に、検索ヒット率が高いFAQシステムを取り入れることも大切です。
基本的にはマニュアルで業務フローを把握し、過程で生じた疑問をFAQで解決する、という使い方が一般的です。そのため、業務の途中で分からないことが出てきた際に、すぐに解決できるようFAQを機能させることが重要です。
使い勝手の良いFAQサイトを作るには、まず目標を明確化します。最終目標としてのKGIと、中間目標としてのKPIという2つの指標を用いて目標を決めることで、効果の測定や分析、改善を効率的に進められます。
次に、質問と回答のリストを作成し、FAQシステムを選定します。FAQの記事内容を決める際には、過去の問い合わせ履歴を参照し、優先順位の高いものを絞り込むとスムーズです。
FAQサイトを公開した後は、改善と運用を繰り返してPDCAサイクルを回していきます。問い合わせの多い質問の追加や、業務に関する変更の反映など、定期的に改善を行ってアップデートしましょう。
マニュアルと併用するFAQサイトの構築には、最適なFAQシステムが必要です。ここでは、FAQシステム選びにおけるポイントを2つ紹介します。
FAQサイトで最も重要なのは、必要な回答により早く辿り着けることです。FAQシステムには多くの種類がありますが、カテゴリ選択よりもキーワードを直接入力して探せるタイプが、求める答えが早く見つかる傾向があります。
また、検索スピードが遅いと利用者が検索を面倒に感じてしまい、社内ヘルプデスクへの問い合わせが増えることも考えられるでしょう。前述した「0件ヒット」の状態では、キーワードで検索しても疑問が解決されず、離脱につながります。
社員の利便性を考慮し、検索スピードが早く、検索ヒット率の高いFAQシステムを選ぶことが重要です。
FAQサイトを構築する際には、質問と回答のテキスト作成やページ導線の改善、利用データの分析などさまざまな作業が発生します。初めてFAQサイトを導入する場合、作業に手間取ってしまうこともあるでしょう。
FAQサイトを立ち上げても、うまく運用できなければ利用されず、問い合わせ削減などの想定した効果が得られない可能性も出てきます。製品やプランによっては、閲覧数や検索キーワードの分析や改善提案まで一貫して依頼できるケースもあります。
システム導入や運用の各フェーズで必要なサポートを受けられるシステムを選ぶと安心です。
マニュアル化とFAQ化は役割が違うため、それぞれの特性を活かして運用することが重要です。マニュアルとFAQの併用により業務効率を高めるためには、すばやく回答を得られて、ユーザビリティーの向上を目指せるFAQサイトの構築が有用です。