【イベントレポート】敬愛小学校 ICT公開研修会2024

【イベントレポート】敬愛小学校 ICT公開研修会2024

2024年9月21日(土)に北九州市の敬愛小学校で開催されたICT公開研修会のイベントレポートです。
県内外から約150名の先生方にご参加いただきました。
毎年恒例の敬愛小学校の先生方による公開授業だけでなく、
全国の認定ティーチャーが敬愛小学校の児童相手に6教科で特別授業を行いました。
これからの教育を進めるうえで欠かせないキーワードである「学習者主体の学び」「生成AI」について深く考える、学びの多い1日となりました。

敬愛小学校の先生による公開授業
2年 英語「Long Vowels」 
シンキングツールを使って発音の違いを分類する
英単語の中の“a”の発音の違いについて、どのようなルールがあるのかを考えました。
正しく発音をしたパネルが消えイラストが出現するゲームでは、児童は自然にIs that~?と聞いたり、I don't know.と英語で発言しているのが印象的でした。
タブレット端末を用いてイラストの発音を分類することで、発音の違いを明確にし可視化する活動をシンキンングツールを用いて行い、学んだことを収束させることができていました。
6年 国語「文章を推敲しよう」
ロイロを使って自己PR文を推敲する
・自己PR文を推敲しながら、推敲するときに大切なことを考えました。
・見本例をみて推敲するポイントを考え、その上で改めて自分の自己PR文を見直します。
・三人一組でお互いの文章をカードで送り合い、話し合いをしました。
4年 算数「小数のわり算」
共有ノートで協働するとは?
新たな問題と出会った時に、直感で解けそうか、難しいかを共有ノート上にカードの色で表現します。カードの色で表現することで、同じ色の友達と考えたり、一人で考えたり、分かっている友達に相談に行ったり、と学び方を自己選択することができます。
また、共有ノート上には、学びを振り返るスペースや自分で問題を作成・追究するスペースが用意されています。解けたら終わりではなく、自分で学びを発展させていく姿が印象的でした。
5年 社会「米作りのさかんな地域」
ウェビング+共有ノートを使って
持続可能な農業を行うためにどのような取り組みを行えばいいのか、JAへの提案書作成ワークに取り組みます。
「消費量アップ」「人手不足」などのテーマの中から、自分が追究したいものを自己選択し、方策を考えます。自分で考えるか、同じテーマの友達と考えるのか、課題解決の方法も自己決定するため、子どもたちから「共有ノート作ってください!」という声が上がることが印象的でした。
6年 理科「BTB水溶液を使っていろいろな水溶液を調べよう」 
カメラを効率よく使って
理科の授業ではカメラの機能が効率よく使われていました。
先生の手元をその場で映像で映すことで試薬の色の変化を児童にはっきりと演示したり、児童も実験の結果を写真で記録することで詳細に実験を記録することができていました。
認定ティーチャーによるによる特別授業
4年 社会「自然災害にそなえるまちづくり」
宗實 直樹先生(関西学院初等部)
実在の災害を取り上げて「なぜ犠牲者が出なかったのか」を考える
大規模な土砂崩れに見舞われながら、犠牲者が一人も出なかった実在の事件を取り上げて、「なぜ犠牲者が出なかったのか」をグループワークも含めて児童に考えさせました。
「全員が早期避難していた」事実を伝えて、「なぜ早期避難を全員がしたのか」をさらに考える
追加の情報として、「災害の際、住人は全員が早期避難を行なっていた」という情報を児童に伝え、「人々はなぜ早期避難を選択したのか。全員が避難できたのか」という新たな問いについて考察を深めていきます。
災害弱者もいるのに、なぜ全員避難できたのか、どのように全員の意思を統一したのかなど、新たな視点を追加しながら災害に強い町づくりについて考察を深めていました。
4年 総合「課題解決学習 PBL 製品開発」
荒谷 舞先生(横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校)
なぜを大切にして考える
日本のお金の価値が年々変化しているのはなぜなのか?を児童に考えさせました。
「なぜ?」と考えることが発明に繋がるという認定講師の導入により、授業のテーマに児童の興味関心が湧いていました。
こうなったらいいと思うアイディアを考え共有する
「日本は新しいものを開発していく必要がある」ことに着目をし、アイディアを考えて、発明王になろう!をテーマに児童一人一人が「こうなったらいいな」と思うアイディアを考えました。
グループになり一人一人が考えたアイディアについて共有し、グループ内で一番いいと思うアイディアを活発に話し合い、決定していました。
5年 英語「現在進行形」
徳千代 太一先生(フリーランス英会話講師)
学習事項をインタラクティブに確認
「現在進行形」の文法事項について、英語・日本語を混えた会話を通じて、児童から引き出しました。
子どもたちはスライドを見ながら自然と英語を使い、今日の活動への興味・モチベーションを高めました。
オリジナルキャラクター作りと表現活動
カメラボタンと手書き機能を使って、オリジナルキャラクター作りをします。身近なものを写真に撮り、イラストを加えることで「〇〇 is 〇〇ing now. 」と、英語で表現する文を考えました。
児童たちはキャラクターのスライドをタブレットで見せ合い、「知りたい」という気持ちから積極的に必然性を持って会話活動に取り組んでいました。会話の後は互いのキャラクターカードを「生徒間通信」を用いて交換することで達成感を得ることができました。
5年 算数「文字と式」
樋口 万太郎先生(中京大学現代教育学部准教授)
図形を入り口に文字と式を考える
子供達に既知の図形をあげさせて、その後、一つの式を表します。そこから「何の図形なのか」を問いかけました。
そこから、文字と式を使って図形や数学的な法則を表すことを考えさせていました。
図形・式・形の観点から、文字式で図形を表すことを考える
台形の例を挙げてから、児童に「図形」「式」「形」の観点で文字式で図形を表すことを考えさせました。
児童はグループで話し合いながら、図形を式でどのように表せるのか試行錯誤を行なっていました。
6年 理科「水溶液の性質」
梅下 博道先生(ノートルダム学院小学校)
授業計画とルーブリックの共有
「共有ノートで創ろう!水溶液紹介カード」というテーマと、授業計画を子どもたちと共有します。計画を子どもたちと共有することで、見通しを持って活動に取り組むことができるだけでなく、課題を自分ごととして捉えることができます。
また、評価基準(ルーブリック)も子どもたちと共有します。評価基準を提示することで、個人作業にならず、グループで作業を調整することができるようになります。
バーチャル理科室で協働課題解決
1つの共有ノート内に、グループの活動スペースを作成しておきます。子どもたちは自分の班の活動スペースで、計画・実行・振り返りの過程を自分のペースで進めることができます。
子どもたちはウェブカードや教科書だけでなく、過去の実験動画や振り返りも活用し、単元全体の学びを意識しながら活動に取り組む姿が印象的でした。
6年 国語「やまなし」
中野 裕己先生(新潟大学附属新潟小学校)
「五月」と「十二月」の場面どちらが気に入ったか
みんなで音読し、「五月」と「十二月」どちらの場面が気に入ったか挙手しました。
自分はどこが気に入ったのか、プリントに線を引きながら考えました。
自分の考えを近くの人と共有し合いました。
「私」は「五月」と「十二月」の場面どちらが気に入ってるのか考えてみる
今度は「私」はどちらの場面が気に入っているか考えます。
自分で考えた上で、また近くの人と考えを共有し合いました。
先ほどの読みと合わせて考えたことで思考が深まり、様々な解釈が発表されました。

教科別公開トーク
国語
本日の授業の中で、どのような点を重視して展開していったのか語られました。
「対話」を重ねることで、みんなでよりよくしていく視点を培うことを大切にしているとお話し頂きました。
あえてロイロを使わずプリント1枚で飛び込み授業したのは、児童の手数を減らし思考の流れをスムーズにするためであり、手段にとらわれずあくまで子供主体であることが重要であると語られました。
算数
「既習事項を生かして新しい課題に取り組む」「課題の設定→情報収集→整理分析→まとめという探究サイクルを意識した授業デザイン」など、それぞれが授業を実施する際に意識したことを語られました。
「導入時は活動スペースを確保してあげる」「経験・繰り返し」「見えない子どもの頭の中の思考を俯瞰して見とる」など、共有ノートを使うときに意識していることについてもご紹介いただきました。しかし、共有ノートを使うことが目的ではなく、どんな活動を授業に設定するのか、その活動の中の自己選択できるツールの1つになっているか、が大切だと言及されました。
社会
・本日の授業に対する質問を元に、社会科で育てたい力や、授業の展開方法について意見交換が行われました。
・調べ学習など、子どもに任せると『拡散』しすぎる場合はどうしたらいいか?という悩みがあがりました。
・個別活動と一斉授業をバランスよく組み合わせること、教員が「今は見取りの時間」と狙いを持って拡散を見守ることが大切とお話いただけました。児童が自由に調べている中で、良いスタイルや手法を先生が取り上げて、周りの児童に『こんな良いやり方があるよ』と気づかせてあげることも効果的だとのアイディアもありました。
理科
本日の授業の振り返りをしながら、理科の教育の中でICTやロイロがどのように活用できるのかお話いただけました。
児童の実際の提出物や作成した共有ノートを振り返りながら、「自己調整能力」や「協働的に学ぶ力」など、理科の授業においてどんな資質能力を育てていけるのか、ICTを活用することで理科教育がどのように変わっていくのかをお話いただけました。
英語
本日の授業の振り返りをしながら、認定講師による英語の会話が必然的に生まれる授業をするための授業展開方法や敬愛小学校がの先生が目指している英語教育についてお話いただけました。
現在進行形の授業では「No questions No interests」という考え方のもと、一人一人が選んだキャラクターに意外な一面を持たせて生徒同士が互いのキャラクターに興味を持ち、質問を重ねるようなアクティビティを行うことで質問が必然と生まれ、会話が生まれることの面白さについてお話いただけました。
総合
敬愛小学校で取り組まれている総合の活動について、ロイロ認定イノベーターの荒谷先生が講評をおこないながら、総合的な探究の活動でどのようなことを大切にしていけばいいのかをお話しいただけました。
敬愛小学校が取り組んだ「アンゴラ・スリランカでの課題解決の活動」を例に、先生が総合にどのようにかかわっていくのがいいのか、児童の主体性をどこまで尊重すべきかなどについてお話いただけました

認定T実践事例紹介
国語「子供の学び×教科の学び with ICT」
中野 裕己先生(新潟大学附属新潟小学校)
「授業の不易(普遍的な教師の居方)・流行(生成AI×作文指導)」をテーマにお話しいただきました。
「子どもは関係性の中で学んでいる」からこそ、教師と子どもの間でなるべくあたたかい関係性を築いていくことが大切ではないかとお話し頂きました。
生成AIを使って作文指導をすることで、今までの指導の中で出てきた困りごとを解決できるのではないかとご提案頂きました。また、実際にその場で生成AIを使って添削を行いました。
算数「実際に使用したロイロ作成物を大公開!どう使うのか、使う意図は?」
樋口 万太郎先生(中京大学現代教育学部准教授)
ICT教育・算数教育で多数の著作を出されている樋口先生が、これまでの実践で使った多くのワークシートを共有していただけました。
また、ワークシートだけでなく、「事実と概念の区別」、「できる知識とわかる知識」など、授業づくりやワークシートを使う際の考え方についてもお話いただけました。
総合「各教科の見方・考え方を働かせ探究のサイクルを回す中で、社会に生きる資質・能力へと繋がる学び」
荒谷 舞先生(横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校)
・地域に根ざした課題/実生活と結びついた課題での総合学習事例を、実際の写真や動画を通して、たくさん紹介していただきました。
・子供達が各教科で身につけた力を複合し、価値として発揮する場の設定が総合の役割。学習者自身が挑戦と失敗、振り返ってまた挑戦するサイクルをデザインし、意識的に回していくことの重要性を話していただけました。
・その際のICT活用は「可視化/共有化/集積」がスムーズにできることに価値があると言及されました。
社会「社会科×ICT、ホンマに使うのはここ!」
宗實 直樹先生(関西学院初等部)
児童生徒が「社会的な見方・考え方」を育むためにどのようなことを意識ながら授業を作っていくのがいいのか、ICTをどう取り入れていくのがいいのかをお話いただけました。
社会科でどのような場面でICTを活用するのが有効かお話いただけるとともに、ICTを活用することで実際の授業場面がどのように変化したのか、実際の板書や資料を交えてお話いただけました。
理科「理科の見方・考え方に基づいた単元・授業デザイン」〜シンキングツールで深める科学的思考〜」
梅下 博道先生(ノートルダム学院小学校)
理科という教科は、そもそも探究的な学びのサイクルになっています。だからこそ、理科という教科の本質を見つめて、「見方・考え方」を身につけることができる授業デザインが大切だと語られました。
特に、「考え方」を意識した授業デザイン・単元デザインが大切だと紹介されました。理科の授業でどの学年も扱う「比較する」という考え方は、国語や算数でも活かすことができます。各教科だけで完結せずに、教科横断的な視点や子どもたちの生き方を見据えた視点を教師が持っておくことが大切だと話されました。
英語「LoiLo x Output~自らアウトプットしたくなるロイロの使い方~」
徳千代 太一先生(フリーランス英会話講師)
冒頭では、良いプレゼンテーションについての話がありました。テクニックに頼るのではなく、「Transformation(変容)」から「Action(行動)」へと変わるプレゼンこそが、真に優れたプレゼンだというお話をしていただきました。聞き手に変化を促し、次の行動につながるプレゼンの重要性が強調され、参加者の心に響くものでした。
次に、LoiLoノートの「共有ノート」を使い、「協働・共有」の力を育むための実践方法についてお話いただきました。具体的には、1つの共有ノートに複数のカードを置いて「作業場」を作り、他者が参照できる状態を作ることで、ピアレビューが自然と行われる環境を構築していくということや、子供たちに共有ノートを使用させる際には、事前にルールを作成することの重要性についても触れられ、実践的なアドバイスが提供されました。

全体講演会
22世紀まで生きる子どもたちの10年後に目をこらして
野中潤教授(都留文科大学)
これからの時代を生きる子どもたちがどのようなICT活用・授業改善が必要かをお話いただけました。
生成AIの活用
生成AIを活用することで、どのような実践が行えるか共有していただけました。
授業で使う問いのアイデアを考えたり、評価基準の案を考えたり、これまで自力で考える必要があったものを生成AI と対話的に考えながら内容を深めていけることや、参加したイベントのサマリーなどを簡単に作れる事例をお話しいただけました。
生成AIに評価をさせる
事前に評価基準を伝えて、児童生徒の作成した文章や原稿を生成AIが評価する事例を教えていただけました。
先生方は莫大な数の生徒からの課題が提出されることになります。その際、Chat GPTによって評価を行われることで、生徒へのフィードバックを瞬時に返すことができます。
フィードバックを瞬時返すことによって、児童生徒はスムーズにリテイクができ、何度でも書き直しをすることができ、文章力や表現力の向上につながる事例を教えていただけました。
新しい時代の学びはどう変わるか
多様化する社会の中で、求められる資質能力や、学校に求められる役割がどう変わっていくのかお話しいただけました。
生成AIを活用して、個別最適化された主体的な学びを実現する事例をご紹介いただけ、新しい時代の先生の役割や学校の役割、授業のあり方を考える機会をいただけました。

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