【イベントレポート】自己調整学習勉強会in大分

【イベントレポート】自己調整学習勉強会in大分

2025年5月17日(土)に大分県別府市の明星小学校で自己調整学習に関するイベントが開催されました。
3名の講師から、自己調整学習や個別最適な学びの理論と実践をご紹介いただきました。
これからの教育を進めるうえで欠かせない「個別最適な学び」「自己調整」「パフォーマンス課題」について深く考える、学びの多い1日となりました。

個別最適の理論と実践
宗實 直樹先生(関西学院初等部)
マンホールクイズの導入
マンホールを題材にしたクイズを出題されました。子どもたちは、根拠を探すため、自ら地図帳を広げながら取り組むようになると話されました。
意図的に子どもたちが目を向けたくなるような教材に出会わせることが大事である。そうすることで、授業外でも自然と追究したくなるとのことでした。
子どもを見取るとは?
1人の子を見てその子の学びを見取って行く事が個別最適な学びだと話されました。全員を見取ることは難しいので、まずは3人に着目して、過程を見取る→その子の学びを周りに広げていくと良いと語られました。
また、3人を見ているとその子の関わりから、いろいろなことが解像度高く見えるようになると話されました。授業中の子どもの思考はもちろんのこと、その子の学び方も把握できるようになると紹介されました。
個別最適な学びとは
個別最適な学びとは、「子どもが、自己選択・自己決定しながら、自律的(自立的)な学びを進めるために、教師は多様な選択肢を柔軟に提供し、全ての子どもの学習権を保証すること」だと紹介されました。
「ある程度の縛りとある程度の自由を与えれば、子どもたちは力を発揮できる」と語られました。
教科の本質を通す
なんとなくの自由進度学習にならないようにするためには、教科の本質的な学びを通すことが重要だと話されました。
特に社会科では、目に見えないものを見出していきながら「概念的知識獲得と活用」が大切になります。「どのように」という発問だけでなく、「なぜ」を問うことで概念的知識の獲得に繋がると話されました。
自己調整学習の理論と実践
木村 明憲先生(桃山学院大学 准教授)
自己調整学習とは
「教育とは子どもたち・社会の未来の幸せをつくる仕事である」と強調されました。自己調整ができることで自分の生活を豊かにすることができ、子どもたちの幸せにつながると話されました。
自由にやれば調整力が身につくわけではなく、調整するとは何なのかを教師が教える必要があると話されました。観察→模倣→制御→調整と少しずつ段階を踏みながら、子どもたちに手放す時間を増やし、自己調整力を高めていくことができると提示されました。
自己調整学習と自由進度学習の違い
学習を誰とやるか、どのくらいの時間やるかなどを自分で決めながら取り組むことが一般的な自由進度学習だと紹介されました。自己調整学習はそれを含みながらも、もっと広い意味で、自分の行動・気持ちを見つめ考え、修正して、コントロールする学習だと言及されました。
自由進度学習と一斉学習は二項対立ではなく、「自由進度で学びながら調整する」「一斉で学びながら調整する」その両方が必要だと話されました。自由進度の中でも、調整を働かせなければ、教科の本質からズレたところで探究をすることになると述べられました。
メタ認知→感情の調整
オーストラリアの学校の事例を元に、感情を大事にする学びのあり方を紹介されました。「Listen to your body」という表現があるように、自分と対話して感情をメタ認知して、コントロールできる経験を積むことが重要だと話されました。
どうすれば学習に向かえるようになるかの方略を、教師が教えることも必要だと伝えられました。子どもたちは一人一人の感じ方や落ち着き方が違うからこそ方略も変わるため、教師が環境を整えることが大切だと話されました。
学習計画の重要性
自己調整学習を進める上では、単元計画の設定が重要だと話されました。また、その計画を教師と子どもで共有することが必要だと話されました。
一斉学習と自由進度学習は、二項対立ではないと言及されました。教科の本質からズレないためには一斉学習でねらいを抑える必要もあり、課題を理解した上で自由進度学習に取り組めるようにすることが大切だと語られました。
実際の例として、タイマーを用いた体育の授業実践をご紹介いただきました。タイマーを使って時間を意識することで、授業途中の振り返りが発生する→メタ認知を発動させる→学習の修正につながる、というサイクルが生まれ、常に教科の本質からズレることなく思考し続けることができると話されました。
わくわくパフォーマンス課題
立石 俊夫先生(わくわくパフォーマンス課題研究所)
わくパ課題とは?
わくわくパフォーマンス課題(略して「わくパ課題」)とは、日常の学習課題を、問題を抱えた主人公のリアルな物語に変換したストーリー型パフォーマンス課題です。導入では、梅雨をテーマにしたパフォーマンス課題を元に、どのような流れで学習が進んでいくのかを紹介されました。
生成AIにアイデアを考えてもらうこともできるが、データ収集も本質的な問いも全部スキップされ、子どもたちの頭の中は思考ではなく「選択」になるので、使い方をよく考える必要があると述べられました。
日頃の学習課題をStory化する
日頃の学習課題をStory化したパフォーマンス課題にするだけで、わくわくする深い学びに繋がる、と話されました。今回は、大河ドラマを題材に、Story化のプロセスをご紹介いただきました。
思考レベルは下がらない
一度身についた思考のレベルは下がらない、と言われています。授業の中では、この思考のレベルを高めていくことが求められていると語られました。わくパ課題に取り組むことで、より高い思考レベルにたどり着くことができると紹介されました。
また、わくパ課題に取り組む過程の中で、個人→ペア→クラス全体と調整のスケールを拡大しながら、学習方略を共有→ポータブルスキル化することが重要だと話されました。

わくパ課題が目指すところ
学習スタイルを「マラソン型」(個人完結)ではなく「駅伝型」(他者にたすきを渡し合う協働)へ転換し、正解のない課題でも「万人が納得するゴール」に近づく経験こそ大事だと話されました。
そのためには、教師自らが課題設定力を磨き、教師自身もワクワクする授業を設計すべきだと熱弁されました。
シンポジウム
「指導の個別化と学習の個性化の違いは何か?」「自己調整の学びをどのように評価していくのか?」といったことについて、宗實先生・木村先生・立石先生による熱い議論が繰り広げられました。
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