【認定自治体インタビュー】岐阜県岐阜市の取り組み

【認定自治体インタビュー】岐阜県岐阜市の取り組み

岐阜県岐阜市は、2023年に全国2例目のロイロ認定自治体に認定されました。
岐阜県岐阜市の認定自治体認定までの取り組み、今後のビジョンについてお話しいただきました。



お話いただいた方
栗本 光彰先生
ご所属
岐阜市立鷺山小学校(現在)
岐阜県教育委員会(認定当時)

認定に使った条件
条件① ロイロ認定ティーチャー自治体内の70%以上の学校または、50名以上在籍している。
条件② 公開研修型のロイロノート勉強会を直近一年以内に実施している。
条件③ ロイロノートの活用に焦点を当てた公開授業を直近一年以内に実施している。
条件④ 申請自治体の教職員の内「ロイロ授業デザイントレーナー」が3名以上在籍している。


Q1 ICTを活用した授業改善のために、自治体として、どのような取り組み・研修を実施しましたか?
教育長・教育委員会からの提言・方向性の決定
岐阜市教育長より、ICTを利活用することで、先生方の授業に関する考え方・捉え方を大きく変える改革を起こす必要があると提言があり、そこから、岐阜市として「個別最適な学び」をICTを活用して授業で実現していく必要があることを先生方に発信していきました。
岐阜市では2022年度の先行導入校での導入から、わずか2年でロイロの導入、そして認定自治体認定を達成することができましたが、これにはまず、市教委全体でICTを使った大きな改革を行っていく必要がある、という強いビジョンがあったことも大きな原動力になっています。

段階的な研修の実施
岐阜市ではロイロの正式な全校導入は2023年4月からでした。2023年4月の本格導入に向けて様々な研修を実施しました。
ロイロの研修では「先生方が実際に操作・体験する」ことを重視し、多彩な研修を実施しました。


2022年 夏:先行実証校での実践
全市導入に先駆け、先行実証校の希望を募り、希望のあった先行実証校向けに研修を実施しました。
先行実証校に積極的にICT・ロイロの活用を促すことで全市導入に先がけ、活用事例の蓄積と、全市導入後での他校への伝播を目指しました。

2023年冬:各中学校区ごとの集合研修(悉皆研修)
2023年4月からの全市導入に向けて、2023年2月から3月に各中学校ごとに、全教員向けの研修を行いました。
研修では全校の先生方が集まってロイロの基本操作を実際に体験し、基本機能について学びました。
また、同時に各学校の管理者向けにアカウントの設定方法についても指導を行い、学校が自立してロイロの運用ができるように取り組みました。

2023年夏:授業デザイン研修(希望研修)
各学校のICT利活用推進リーダーとなる先生育成のために、認定ティーチャー認定のための授業デザイン研修を実施しました。
岐阜市には70校の小中学校がありますが、この研修で70名以上の先生方が認定ティーチャーに認定されました。
希望研修ではありましたが、各学校長にICT利活用推進のリーダー育成のために各学校1名ずつは講座に参加してほしい、とお願いをし、結果として、各学校に認定ティーチャーが誕生し、それぞれの学校でICT利活用推進の中心的役割を果たすようになりました。


LEG岐阜の先生方を迎えての研修
岐阜県内では、岐阜市に先駆けて多くの自治体でロイロが導入されており、私立の学校でもロイロが多くの学校で採用され、多くの先進的な活動を行なっておられる先生方がおられました。
そこで、岐阜県内のロイロの先生方のグループ(LEG岐阜)の先生方とも連携をとり、LEG岐阜の先生方を講師として迎え、岐阜市外の事例も学べる希望制の研修も実施しました。

各教科研究会への支援・学校主催の研修会の支援
市教委主催の研修のほか、各教科研究会や学校主催の研究会にも支援を行いました。
教科研究会で、技術的なサポートを行なったり、市教研訪問の事後指導では、ICT活用に関わる取組の評価や授業の価値づけを行いました。また、学校主催の全校研究会の一部に参加し、ICTに関わる指導助言をしました。
さらに、先行して認定ティーチャーになった先生方と、今後の岐阜市の方向や取組について、相談する会を何度も持ちました。
このように、数多くの研修を重ねることで、岐阜市ではICTの利活用の推進を図り、認定自治体認定のための準備を積み重ねていきました。

Q2 認定自治体を目指していったことで、どのような変化がありましたか?
岐阜市内の先生方のモチベーションの向上
当初、ロイロ認定自治体や認定ティーチャーに関心を持っていたのは教育委員会の担当とごく一部の先生方のみでした。
ところが、「全国で二例目、岐阜県では初の認定自治体を目指す」と先生方にお伝えすることで、岐阜市内の先生方が自分たちの実践に自信を持てるようになり、日頃の実践や研修への積極的な参加などへのモチベーションが向上したのではないかと感じています。

先進的な取り組みを行う先生方の認知度の向上
認定自治体を目指していくことで「ロイロ認定ティーチャー」や「授業デザイントレーナー」と言ったロイロの認定資格について先生方のご理解や認知度が高まっていきました。
そのため、「あの先生はロイロ認定ティーチャーだ」「授業デザイントレーナーの資格も持っている」など、先生方同士の中で先進的な取り組みを行っている先生が誰かがはっきりとわかるようになり、先進的な取り組みを行っている先生方のモチベーションの向上や、先生同士の学び合いの活性化にもつながりました。

各学校での研修の自走化
各学校の認定ティーチャーの先生方の情報が市内で共有されていくにつれて、、「近隣の先生方を対象に先進的な取り組みについて教えてほしい」と、学校間の研修も積極的に行われるようになりました。
これまで研修といえば、委員会が学校に募集をかけるトップダウン型のものが中心でしたが、各学校の認定ティーチャーの取り組みが共有されていくに従って、学校主催の研修も数多く開催されるようになりました。
また、委員会からも各先生方の実践を共有していくことによって、学校間で積極的に講師派遣を依頼し、研修を行われるようになりました。

様々なメディアの掲載やイベントでの登壇
認定自治体への認定をきっかけに岐阜市の取り組みが多くのメディアに取り上げられるようになり、注目度が高まったように感じます。
中日新聞、岐阜新聞といった新聞社のほか、リクルート・地方自治研究機構など様々な機関から岐阜市の取り組みに対しての取材の申し込みをいただくようになりました。
また、EDIX東京、関西での教育委員会向けセミナーなど、多くのイベントでも登壇することになりました。

Q3 認定されてよかったことは?
岐阜市の取り組みの認知度の向上
ロイロから、岐阜市の認定自治体の認定をプレスリリースしていただいたことで、全国的にも認知され、方々から取材や登壇の依頼をいただくようになりました。そのことで、岐阜市の先生方の頑張りや、先進的な取り組みを全国に向けて発信していくことができました。
これは、岐阜市教員委員会の財産にもなりましたし、教育委員会定例会や議会答弁でICT活用が活発に進められていることをアピールすることにもつながりました。

周辺自治体への影響
また、岐阜市の取り組みについて、岐阜地区周辺の自治体からも注目が集まり、研修や授業での取り組みについて意見を聞かれることが増えてきました。
身近な地域の先生方から意見を求められる機会が増えることで、岐阜市内の先生方は、改めて、自分たちの取り組みが周囲から評価されていることを知り、授業改善へのモチベーションを高めていくことができました。
岐阜市の先生方は、岐阜地域の他自治体に異動することもあります。周辺自治体での岐阜市の導入をきっかけにロイロを導入する自治体が増えていったことで、異動先でもロイロがそのまま使える安心感を持つことができ、より一層ICTの利活用推進に取り組むことができるようになりました。

Q4 ICTを活用して、今後、どのような教育を目指していきますか?
ロイロの導入、認定自治体の認定を通じて、全国学力調査のICT活用指標など、様々な指標は大幅に向上し、先生方の授業観も、子どもたちの考え方も大きく変わっていったと感じています。
今後はさらに、子ども主体の個別最適で協働的な協働的な学びの授業への転換が進み、探究的な学びが繰り広げられ、楽しく充実した学びを実現していきたいと考えています。
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