中学 社会 中世社会から学ぶ現代社会の諸問題【実践事例】(佐伯市立直川中学校)
佐伯市立直川中学校
立石 俊夫教諭
ロイロノート・スクールとシンキングツールを用いて、現代社会の諸問題の解決策を探る授業を展開します。
歴史的学習をアクティブ・ラーニングとして考えるとき、必ず思い浮かぶのは「歴史をなぜ学ぶのか」という命題である。
その答えとして「歴史をなぜ学ぶのか?それは過去の成功や失敗を学び、教訓や現代社会の問題の解決のためのヒントを学ぶためである。」と生徒たちと共通理解をした。
私たちは、過去の戦争や災害・外交政策・人権・環境対策・文化などから得られた膨大なデータを有している現代人であるため、その強みを活かしたい。過去のデータから得られる教訓やヒントを、現代社会の諸問題の解決のために活かすことが「歴史を学ぶ」意義であり、その手法を生徒と共に考え、私も含めて共に習得することこそが歴史学習の根本的な目標である。
例えば、江戸幕府について考えるとき、詳細な仕組みを学ぶだけでなく、「なぜ260年もの間続くことができたのか、政権の持続性について考える」ことが重要である。そのような観点に立つことで、私たちが歴史を学ぶ意義が生まれてくると考える。
今回授業を実践した中学1年生では、歴史的分野において中世社会までを学習することにしている。この中世社会には、現代社会に繋がる文化など追究するに価する大変貴重な命題が数多く存在する。
まずは中世社会を概観し、さらに現代社会の諸問題の解決策を探る授業を行った。
実践授業の内容
準備
【学習目標】
思考スキルとシンキングツールを確認しよう!
【学習内容】
8つの思考スキルと、20個のシンキングツールについて整理する。
【シンキングツールについて】
「関大初等部式思考育成法研究平成28年度版」2017年2月10日発行の資料を参考にして作成。
(PDF4ページ目を参照)
1時
【学習目標】
隣国との付き合い方を歴史上の人物から学ぼう!
【学習内容】
4人の政治家(厩戸王、北条時宗、足利義満、豊臣秀吉)の外交制作を評価する。
【シンキングツールについて】
「PMIシート」を使用する。『トピックを評価する』
2時
【学習目標】
中世社会とはどんな社会なのか考えよう
【学習内容】
中世社会の特色を多面的に考える。
【シンキングツールについて】
「フィッシュボーン図」を使用する。『多面的にみる』
3時
【学習目標】
中世社会の教訓から現代社会の少子高齢化の対策法を考えう。
【学習内容】
現代社会(ふるさと直川を含む)現代社会の「少子高齢化」という問題について中世社会から得られる教訓をもとにその解決策を考える。
【シンキングツールについて】
「キャンディチャート」を使用する。『仮定する』
授業の流れ
1.【準備】思考スキルとシンキングツールの確認
8つの思考スキルと、20個のシンキングツールについて学習して、すべて使えるようにする。
2.【1時】4人の政治家
学習課題として、現代社会において東アジアの国々と外交に大きな問題を抱えており、その問題を解決するために歴史上の人物の行動に学ぶ必要がある。4人の人物がなぜそのような行動を取り、その結果どのように評価されたのか、現代に活かす知恵をつかもうという課題を設定する。
4人の政治家(厩戸王、北条時宗、足利義満、豊臣秀吉)の外交政策の違いをPMIシートを使い、P:プラス面、M:マイナス面、I:改善点をそれぞれ考え評価する。そこから隣国とのつきあい方(外交の基本姿勢)を学ぶ。
最後に黄色のカードで振り返り、4人の政治家から学んだことを全員発言する。
①PMIシート
②PMIシート
③まとめ
④授業の振り返り
3.【2時】中世社会の概観
2時では、鎌倉から安土桃山までの中世社会の特色から、概観を考える授業を行う。
まず、室町時代の特色をこれまでの思考ツールを用いて、イメージを膨らませる。
次に、フィッシュボーン図を用いて多面的に考え、視点を明確にして、中世とはどんな時代だったのか、その理由も考える。
最後に生徒たちが作成したフィッシュボーン図を全体に共有する。次時の予習として、中世社会の教訓を現代社会の課題の一つである「少子高齢化」へのアプローチの一つとして考えるという課題を出す。
①ファースト図
②ワークシート
③フィッシュボーン図
④授業の背景
4.【3時】中世社会から考える少子高齢化
3時では、キャンディチャートで学習課題「少子高齢化対策」について意見を発表する。
発表後、教室後ろのカンファレンス席に移動して、机を囲んで座り議論方式で進めるハークネスメソッド形式を用いて自由討論を行い検討する。中世社会のイメージ図を見て、どのように高齢者や子どもが生きていたのか考え、中世の高齢者と子どもは互いに介護と育児の相互関係にあったことを導き出す。
最後に単元の振り返りをワークシートにまとめる。
①ファースト図
②ハークネスメソッドの様子1
③ハークネスメソッドの様子2
④授業の振り返り
思考スキルとシンキングツールとは何か
思考スキルとは何をしたら「考える」ことになるのか具体的に「行動」で示したものである。
そして頭の中にあるという「情報」を自分にも他人にも分かりやすくするために書き込み、イメージさせる図をシンキングツールという。
思考スキルとシンキングツールの関係を表した表は、リンク先PDFの4ページ目をご覧ください。
学習の手順と評価の手順
「なおかわ学習」は社会の授業の基本形である。
な:なぜだか考える → お:お互いの考えを知る → か:考えを深め合う → わ:わかったことをまとめる
【ルーブリックとは何か】
授業のゴールである、学習到達状況を評価するための、評価基準である。
授業で自分は何ができて、何ができなかったのかを明らかにするものであり、S・A・Bで表す。
[S:スーパー(素晴らしい)]100点以上
[A:十分満足]90点以上
[B:だいたいできた]70点以上