各教科でのシンキングツールの活用法

各教科でのシンキングツールの活用法

各教科におけるシンキングツールの活用法についてまとめました。

目次

国語でのシンキングツール活用のポイント
国語教育とシンキングツール
国語の授業以前に、そもそも私たちが「考えてみよう」と児童生徒に問いかける際に求めているのは、物の分類や構造化などから、自分の新しい物の見方や意見を作ることではないかと思います。
シンキングツールは頭の中や文章の中の考えを「見える化」して、新しい考えを作るための道具です。考えが見えるようになれば、自分自身でさらに考えることや他者との協働がしやすくなります。
「シンキングツール」の形により思考の方向性がきまり、視点によって自分の頭の中や文章の中にある思考が「見える化」できます。
シンキングツールを用いることで、より具体的、多角的、多画的に言葉と向き合うことができ、国語教育では「考える」活動の新たな地平を、切り開いていくことができます。

国語科でのシンキングツールの活用の基本的な考え方
「創造的・探究的な思考力を身に着け、予想できないこれからの社会で力強く生きていく力をつけよう!」という目的のもとアクティブラーニングが進められ、授業の在り方・教材の工夫は大きく変化しました。
シンキングツールはその「創造的・探究的な思考」を助けるためのものです。
国語には読む、書く、話す、聞くの4領域がありますが、いずれの場面でも「シンキングツール」を活用することができます。
特に「問題提起・問いかけ・課題の提示」と「応答・アウトプット・実践」の間に「シンキングツール」での「発散」と「収束」を入れると思考が「見える化」でき、思考を整理しやすくなります。

国語科でのシンキングツール活用のポイント
国語科でのシンキングツールの活用例
思考の発散と収束
シンキングツールには大きく「発散」「収束」と呼ばれる二つの活用法があります。
「発散」:生徒により多くの情報を意識・認識させる活動
「収束」:集まった情報の中から必要なものを選択・順序だてをさせる活動
授業の中では、この「発散」と「収束」が「発散⇒収束⇒発散⇒収束」という風に連続することになります。
さらに、この発散と収束は、「大きな発散⇒大きな収束」の場面と、授業の“ある場面”で完結する「小さな発散⇒小さな収束」があります。それらがうまくつながり、「計算用紙としてのシンキングツール」が「パフォーマンス課題」と連動した時、想像以上の新しい気づきや考えが生まれます。

「読解」の場面と「シンキングツール」
「読解」の場面でシンキングツールを活用するときのポイントは 解答への誘導にならないことだといえるでしょう。
解答への誘導を目的に授業進めると、シンキングツールが単なるワークシートとなり、児童生徒の思考の自由度が大きく制限されます。これは、児童生徒の思考を可視化するシンキングツールのメリットが生かされておらず、児童生徒が自分なりに「考えを作る」ことにはつながりません。
手順を理解、習得し、解答へたどり着かせるためのワークシートが必要な場面もありますが、この違いに意識的になり、どのような場面で、どう使い分けるのかを意識することがポイントとなってきます。
シンキングツール:自分の考えを作り出すための思考の方法を示す、いわゆる計算用紙。思考の方向性を誘導する。
ワークシート:手順を理解・習得し、解答までの道筋を示す地図。行き着く先「読み」へ誘導する。


応用的な活用・ブラッシュアップのためのポイント
ツールをアレンジする
授業の内容によっては、シンキングツールの使い方をアレンジすることで、より効果的に授業設計を実施できます。
その際、「どういう意図でこのツールをつかうのか」「そもそもこのツールはどの思考スキルに即して設計されたものか」というコンセンサスを忘れずにアレンジを行うことで、ツールの良さを生かしたアレンジをおこなうことができます。
模範回答に導くためにツールを使うのではなく、「考える」という、教科・科目を超えた汎用スキルのためにツールをつかう、という観点をもつことで柔軟に、効果的にツールを活用することができるようになります。
参考リンク なにこれ?かんたんツール説明
それぞれのツールと対応する思考スキルについては上記リンクを参照してください。

授業案改善のために。自分の授業への13の質問
シンキングツールを授業で使うときには、以下の質問を自分自身に問いかけていくことで、無駄のない、より洗練された授業をデザインすることができます。
この活動を経て、児童生徒がどのような考えを作り出すことを想定していますか?
どれか1つ、使わないシンキングツールを決めるとしたら、どれですか?
別のシンキングツールと入れ替えられそうなところはありませんか?
授業展開の中で生徒同士がカードを送ったり、提出箱でカードを共有する場面はどこにありますか?
シンキングツールを使わなくてもできるところはありますか?
このシンキングツールを使う目的は、何をすることですか?
自分なりの考えを作り出させるために一番時間をかけさせたいのはどこですか?
このあとさらに発展させるとしたらどんな授業ができそうですか?
このあと何かパフォーマンス課題を考えていますか?
教材はどのように通読しますか?
この単元を学習することで、どういう力を身につけさせることを狙っていますか?
ロイロの操作・カードの操作が児童生徒にとって難しく、きめ細かい支援が必要だと想定される場面はありますか?

できあがった授業に対して上記の質問を投げかけていくことで、授業を改善していくことができます。

算数・数学でのシンキングツール活用ポイント
算数・数学科教育とシンキングツール
算数・数学は答えが1つですが、様々に思考を巡らし解に到達する必要があります。
その過程で、シンキングツールを使って『思考を可視化』することにより,思考が深まることができます。

算数・数学教育とシンキングツール活用の基本的な考え方
算数・数学では、具体的な事柄から一般的な事柄を導く活動が多くの場面で実施されます。
その際、「事象を分類する」「視点をかえる」などの思考スキルを使うことで、具体的な事柄の背景にある、共通点・規則性を発見しやすくなります
さらに「発見した規則を定式化する」「自分の考えを他者に論理的に説明する」などの活動もシンキングツールを活用することでよりスムーズにおこなえるようになります。

算数・数学科でのシンキングツール活用のポイント
算数・数学科でのシンキングツールの活用例
様々な事象を分類する
身の回りのさまざまな事象をシンキングツールで整理することによって思考が整理され、具体的な事柄の背景にある共通点・規則性がみつけやすくなります。

共通点や規則を発見させる
シンキングツールで思考を整理することで共通点や規則性が発見しやすくなります。
視点を事前に提示して、共通点・規則性を意識させることで、発散した思考を収束させ、考えをまとめやすくなります。


応用的な活用・ブラッシュアップのためのポイント
算数・数学では、以下のポイントに留意しながら、シンキングツールで授業に新しい動きを与えることを意識することで。より対話的で深い授業を設計しやすくなります。

授業設計・シンキングツール活用のポイント
課題を簡単明瞭に提示できないか。
生徒の湧き出る発想をカードで見える化できないか。
アウトプットした生徒の発想をシンキングツールを切り替えることで、新しい視点を与えられないか。
見える化した思考を生徒同士が評価しあうことで、思考の相乗効果を生み出せないか。

理科でのシンキングツール活用のポイント
理科教育とシンキングツール
理科の学習では「なぜ?」という疑問をもとに課題を解決する活動が中心となるため、「情報の収集、整理、比較、解釈」といった思考場面が連続することになります。また、様々な社会的課題に対して、科学的事実をもとに解決法を導き出すことも、学びの重要な要素となっています。
シンキングツールは、情報の視覚化・選択・序列化といった操作を容易にすることができ、解決すべき課題に応じて、その思考過程をサポートしてくれます。そのため、理科の授業の中でこれらのツールを活用することを通して「科学的思考」の場面をより高度化し、有意義なものにすることができます。

理科教育でのシンキングツール活用の基本的な考え方
理科の学習では「なぜ?」という疑問をもとに課題を解決する活動が中心となるため、「情報の収集、整理、比較、解釈」といった思考場面が連続することになります。
また、様々な社会的課題に対して、科学的事実をもとに解決法を導き出すことも、学びの重要な要素となっています。
理科の授業の中でこれらのツールを活用することを通して「科学的思考」の場面をより高度化し、有意義なものとできるのではないでしょうか。

理科教育でのシンキングツール活用のポイント
2つの思考場面とシンキングツールの活用
理科の学習においては、大きく分けて2つの思考場面が考えられます。
① 実験・観察活動の結果、あるいはそれらと既習内容を材料にして、科学的事実を推論する過程(左図)
これは一般的な教育課程の中で展開されています。理科用語や記号などを暗記することに終始するのではなく、「情報を比較したり、組立てたりすることで、論理的に思考する」という、まさに「科学する姿勢」につながる場面です。
② 既習内容にとどまらず、設定した課題や社会的課題に対して、解決に向けて多角的・多面的なアプローチを試みる過程
これは、教育課程の中では具体的なものが示されていないが、社会に参画する態度の育成にもつながる重要な教育活動です。自らの生き方にもつながる内容に取り組む中で、新たな価値観を見出すことにもつながる場面です。

左図:岡山県備前市立香登小学校 津下哲也先生/右図:大手前高松中学・高等学校 合田 意先生

以下に示すシンキングツール(思考ツール)指導案は、このいずれかまたは両方に取り組む具体的事例で、できらだけ多くの先生方に必要な情報にたどり着いていただけるように、校種・学年で分類してあります。

その下には、シンキングツールの様々な活用方法を参考にしていただけるように、シンキングツール別の活用例にリンクを貼っています。ここでは他教科も含めての活用例を見ていただくことができます。ぜひご活用ください。

応用的な活用・ブラッシュアップのためのポイント
各シンキングツールの具体的な活用イメージをまとめます。自分自身の授業にシンキングツールを取り入れる際の参考にご参照ください。
順序付ける(基準をもとにして情報を並び替えることで思考を促す):座標軸/ダイアモンドランキング など
比較する:ベン図 /データチャート/座標軸 /ダイアモンドランキング など
分類する:Yチャート/Xチャートなど
関連付ける:ウェビングなど


多面的に見る・多角的に見る:チャート/バタフライチャート/フィッシュボーン/PMI /くまでチャート など


理由付ける:くらげチャート/データチャートなど

見通す:フィッシュボーン/キャンディチャート/KWL/情報分析チャート など
具体化する:ピラミッドチャート など

抽象化する:ピラミッドチャートなど

構造化する:ピラミッドチャート/情報分析チャートなど
要約する:プロット図など

変化をとらえる:同心円チャート など


社会科・地歴公民科でのシンキングツール活用のポイント
社会科・地歴公民科とシンキングツール
実社会でおこっている社会的な物事に目をむける必要がある社会科・地歴公民科では、他教科以上に「児童生徒の考えを作り出す」ことに意識的にならなければ、用語や知識の暗記のウェイトが大きくなりがちです。

社会科・地歴公民科でのシンキングツール活用の基本的な考え方
そのため、社会科・地歴公民科でシンキングツールを活用するためには、生徒たちが「新しい考えをつくり出す」ことを重視した授業設計や活用がとても大切になっていきます。
また、思考の発散・収束、パフォーマンス課題など、授業デザインの手法をうまく取り入れていくことで児童生徒が自ら考える場面を授業の中でデザインしやすくなります。

社会科・地歴公民科でのシンキングツール活用のポイント
社会科・地歴公民科で児童生徒が主体的に学ぶ授業設計・シンキングツール活用のポイントをまとめました。
社会科・地歴公民科でのシンキングツールの活用例
発散思考と収束思考
児童生徒が主体となる学びの実践においては、授業の中で、「発散思考(考えを広げる場面)」と「収束思考(考えをまとめる・整理する場面)」を意識することがとても大切になっていきます。
先生は、生徒の思考のプロセスに寄り添うとともに、授業の中でどのように思考の発散・収束の場面を組み込んでいくのかを設計していくことがとても大切になっていきます。
発散思考・収束思考の連続の具体例
授業例:ラオスをとりまく課題を考える
展開①:発散:課題の整理(左図)
展開②:収束:広げたものを整理・比較する(中図)
展開③:発散:整理した内容にフォーカスして、再展開する(右図)

展開④:収束(左図):再展開した内容をブラッシュアップし、収束に向かう
展開⑤:収束(右図):これまでの展開を踏まえて、「カタチ」にする
パフォーマンス課題における課題設定のポイント:GPRASPS
社会科・地歴公民科の授業では、他教科以上にパフォーマンス課題の設定が有効です。
パフォーマンス課題において、児童生徒が主体的に学ぶ授業を設計するためには単元全体を貫く課題設定をおこなうことがとても大切になっていきます。
良い学びにつながる課題設定はGRASPSを意識することがとても大切です。
Goal 目的があるか
Role  役割があるか
Audience  相手があるか
Situation 状況の設定があるか
Performance 完成作品は何か
Standards 観点を設定しているか
これらのポイントを意識しながら課題設定をすることで、より児童生徒が主体的に学ぶ授業を設計しやすくなります。


応用的な活用・ブラッシュアップのためのポイント
一度設計した授業に対して、以下のポイントで展開を見直すことで、無駄を削ぎ落とし、よりブラッシュアップした授業展開を考えることができます。
シンキングツールの使い過ぎ、シンキングツールを使うことが目的化していないか考える。
そぎ落とす勇気を持ちましょう

英語・外国語でのシンキングツール活用のポイント
英語科・外国語教育とシンキングツール
英語の授業の根本的な目標は、『英語がわかる、使える』にとどまらず、『英語を使って何かができる』ではないでしょうか。
児童生徒が授業で習得した「英語を聞く・読む・話す・書くスキル」を駆使して、何か新しい考えを構築し、それを外に向かって発信していく場面において、シンキングツールが子どもたちの思考の支えになります。
そのため、どのような言語材料を扱う単元であっても、外国語・英語学習においてはちょっとした表現活動の場面さえあればシンキングツールが非常に効果的に使えると言えるでしょう。
英語科でのシンキングツール活用の基本的な考え方
英語教育でシンキングツールを活用する際には
① 情報の収集・受信
② 考えを発散・収束するなどの整理
③ 考えの発信
という3つのステップを意識するとわかりやすくなります。
上記のステップを意識しながら授業の中でシンキングツールを取り入れることで、児童生徒が自分の思考を整理し、英語を使って表現をする活動がスムーズに行えるようになります。
英語科でのシンキングツール活用のポイント
英語科でのシンキングツールの活用例
情報の収集
知っていることや調べたことを整理する際に、シンキングツールを活用することで思考が可視化され、考えが整理しやすくなります。

考えを発散・収束するなどの整理
収集した情報をもとに自分の考えを発散・収束すること際にもシンキングツールを活用することで、よりスムーズに考えを整理することができるようになります。
また、考えを整理する際に視点を提示することでうまく思考を収束させることができるようになります。

考えの発信
英語をつかって自分の考えを表現する際にも、シンキングツールを使って資料を作成していくことで、よりわかりやすく考えを発信しやすくなります。

応用的な活用・ブラッシュアップのためのポイント
「考えを作る」という働きは、他の教科と変わりませんが、英語・外国語学習では、児童生徒が他教科と違い、「母語ではない言語で思考を作る」ことになるため、以下の2点を意識するとよりよい授業を設計することができます。

① 児童生徒の発達段階・言語の習得レベルを意識する
シンキングツールを用いる際、どの段階で英語を使うのか、それとも日本語で考えさせるのかは児童・生徒の発達段階、習得レベルに合わせて計画していく必要があります。
例えば情報の収集・受信の段階において、英語で書かれているWebサイトを読んで必要な情報を集めていくのはとてもレベルの高い活動です。日本語で情報を収集する時よりも、シンキングツールの助けが重要になってくるでしょう。
また、考えの発信においても、例えばプレゼンテーションを作成するとしたら、英語特有の話の組み立て方に注意を払う必要があります。ここでもまた、シンキングツールを用いてスモールステップで内容を組み立てることが新しい考えの構築をサポートしてくれるはずです。

②「英語を使って何かができる」授業を増やすことを意識する
英語の授業では、英語を用いて「物語を読んで感想を伝えあう」「ある社会的テーマについて調べ学習をしたのちに、解決策を話し合う」「日本食のレシピを海外に向かって発信する」「災害の経験をもとに、防災の心得をまとめ日本にいる外国人に利用してもらう」「お店の紹介ムービーを作成し、海外からのお客様を獲得する」など、全ての教科や分野の学習ができると言っても過言ではないと思います。
言語材料の習得にとどまらず、目の前の児童・生徒が一つでも[* 多くの「英語を使って何かができる」経験ができるようにいしきすることで、より児童生徒が主体的に英語を活用できる授業を設計していくことができます。

シンキングツール・思考ツールについて学べる研修会・コンテンツ
ロイロではシンキングツール・思考ツールについて学べる研修会やコンテンツをご用意しています。
シンキングツールを活用した授業作りについて学ぶことができるオンライン研修です
32ページ/3.3 MB
各ツールごとに活動例を示しながら、シンキングツールの使い方をご紹介しています。

全国の先生方の指導案を検索する
ロイロでは全国の1000名以上の先生方の指導案を学年ごと・教科ごとに検索することができます。
シンキングツールを活用した多くの指導案を検索することができます。


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