小6 国語 宮沢賢治「やまなし」「イーハトーヴの夢」【実践事例】(台北日本人学校)
台北日本人学校
稲木 健太郎教諭
作品にふさわしい挿絵を考える活動を通して、作品世界や主題、作者性についての読みを深めます。
単元学習を終えた後、探究的課題として「『やまなし』の挿絵コンクール プレゼン大会」を設定しました。作品にふさわしい挿絵はどのようなものか、児童は自分が絵本作家になったつもりでプレゼンテーションを行います。挿絵のイメージを語るためには作品や作者について各自の理解を深め、主題に迫ることが求められます。また、挿絵をキーワードにすることで、色や雰囲気、登場人物の様子などへの分析活動へとつなげることができます。こうした探究的課題への取り組みを通して、本作品で重要な「情景を読む」力が養われると考えました。
ロイロノート導入のメリット
情景を比較するときに、カードを並べて表示できるので、比べて考えやすかったです。
「提出箱」にある友達のイメージを全体で共有することで、自然と議論が起き、自分の解釈が深まりました。
学習の記録を、カードに整理して残すことができました。
シンキングツール機能「ピラミッドチャート」を使うことで、主張カードと根拠カードを明確に区別し、話の構成を整理して考えることができました。
自分の解釈や情景を読み取った記録(カード)を、そのままプレゼンテーションに使用することができました。
実践の目標
情景に注目しながら、作品ならではの豊かな表現を読み取ることができる。
作者が著した複数の作品や作者の伝記などから、作者の理想や信念、思いなどを読み取ることができる。
情景と登場人物の言動、作者らしさを関連付けながら、作品の主題について自分の解釈をもつことができる。
根拠をもとに、自分の思いを明確に伝えることができる。
実践の場面
1. 本時の探究的課題を設定する
本単元では、5年生の時に学んだ情景に注目した読みをもとに、登場人物の言動や情景から物語のイメージをつかむ学習を行った。
探究的課題の設定にあたっては、作者の伝えたいことや物語の面白さがまだ分からないという児童の感想から、作品の親しみやさや物語の理解に重要な働きをする「挿絵」をキーワードとし、作品のイメージに合う「挿絵」とはどんなものかという課題を設定した。挿絵を考える際には教科目標に迫るため、①作品のイメージ(情景)に合うもの、②「作者らしさ」が表れるもの、という2つの条件を提示した。
2. 自分のイメージを広げ、物語を解釈する
「やまなし」について、児童それぞれの「今の読み」をアウトプットするため、情景と登場人物の言動から伝わってくる「五月」と「十二月」の幻灯のイメージをロイロノート・スクールのカードに書かせた。本文に根拠を求めながらイメージするよう促した。
3. イメージと解釈を共有し、比較、関連付けを行う
場面2で各自が作成したカードを全体で共有した。全体共有により、様々なイメージに触れることができ、自分のイメージに近いもの、異なるものはどれかという視点から、イメージを比較・関連付けながら自分の読みを明確にしていった。また、今後のプレゼンテーションの参考にするため、特に納得のいく友達の意見を自分のノート上に保存させた。
4. グループで議論をし、プレゼンテーション用のカードを作成する
グループでのプレゼンテーションに向け、グループでそれぞれの解釈を共有し、イメージや根拠を議論させた。カードの上限を5枚とし、議論の中で出た考えを取捨選択しながら、グループの全員が納得できるカードづくりに取り組んだ。
この活動を通して、場面2で行った各自の読みが根拠をともなった「確かな読み」へと進めることができた。
5. プレゼンテーションに向け、ピラミッドチャートで主張と根拠を明確化する
グループで作成したカードをもとに、プレゼンテーションの構成を考えた。シンキングツール機能の中から「ピラミッドチャート」を使い、自分たちの主張と根拠を整理しながら、話す内容を深めていった。ピラミッドチャートの最上段には、どのような挿絵がふさわしいかという主張、中段と下段には主張を支える根拠(場面のイメージや情景描写、作者らしさ)を配置するよう指示した。
6.「やまなし 挿絵 コンクール」のプレゼンテーション大会を行う
「どのような挿絵がふさわしか」というテーマで、グループごとにプレゼンテーションを行った。
本学習を終えた児童の振り返りには、「初めはよく分からなかった物語が、『挿絵』について考えることで、場面ごとのイメージがわいた」、「作者の思いや信念を調べることで、読みが深まることが分かった。他の作者でもその人の大切にしている考えを探って読んでみたい」といった記述が見られた。探究的な読みが必要となる課題設定を行ったことで、教科の目標を達成することができた。