チャットボットとは、画面上で入力されたテキストに対する回答を自動で提示するプログラムのことです。質問に対して自動で回答できるため、主に問い合わせ対応のために活用されています。
問い合わせ対応の一部を自動化できるチャットボットは、問い合わせ対応業務の効率化や人手不足の解消などに効果的です。メリットが多いため導入を進める企業が増えていて、具体的には以下のようなシーンで活用されています。
近年、チャットボットの注目度が高まっています。その理由のひとつが、人材不足です。
日本は少子高齢化によって人手不足が深刻化していて、人材確保に課題を感じている企業も多いでしょう。人手が足りない中で業務を滞りなく進めるには、システムによる業務の自動化・効率化が求められます。そのひとつとして、チャットボットを活用した問い合わせ対応が注目を集めるようになりました。
また、AI技術の進展もチャットボットが注目を集めている理由のひとつです。AIを搭載したチャットボットは自然言語処理によって入力されたテキストを正しく解釈し、適切な回答を作成・提示できます。このようにAI技術が進歩したことでチャットボットの性能が向上し、より活用の幅が広がりました。
チャットボットを導入すると、以下のようにさまざまな効果が期待できます。
これら10の効果について、以下で詳しく見ていきましょう。
チャットボットは自動で問い合わせに回答できるので、24時間365日の対応が可能です。有人対応の場合、定休日や営業時間外は対応できませんが、チャットボットを導入すれば問い合わせに対していつでも即時対応できます。
時間を問わず対応したいと思っても、有人対応の場合は人材確保や人件費などの観点から断念せざるを得ないケースも多いでしょう。チャットボットなら人が対応する必要はなく、24時間365日対応のハードルを大幅に下げられます。
「電話をかけるのが苦手」という人でも、チャットボットなら気軽に問い合わせができます。問い合わせ対応は顧客との貴重な接点のひとつで、問い合わせのハードルを下げられるのは大きなメリットです。
問い合わせのハードルが高いと、疑問や困りごとを解決できずに顧客が商品やサービスの利用をやめてしまうかもしれません。
例えば「グッドマンの法則」では、「自社の商品・サービスに対して不満や疑問を感じた人の約9割は、問い合わせをしないまま他社製品に流れていく」としています。気軽に利用できるチャットボットを問い合わせの一次窓口として用意しておくことで、上記のような顧客の離脱や販売機会の損失を防ぐ効果が期待できます。
参考:NPO法人顧客ロイヤリティ協会「本当の『グッドマンの法則』を正しく理解しましょう。」
コールセンターやヘルプデスクによくある課題のひとつが、オペレーターによって対応品質が変わる点です。人によって知識や経験に差があるため、どうしても回答内容や回答を提示するまでの時間などに差が出てきます。
チャットボットならシステムが回答するので、いつ誰が問い合わせをしても同じ品質の回答が得られます。これにより、対応品質の均一化が可能です。
ここまで紹介してきた「いつでも問い合わせができる」「問い合わせのハードルが低い」「対応品質が均一」といった効果によって、顧客満足度の向上が期待できます。顧客満足度は売上やリピート率などを左右するため、企業が注視すべき指標のひとつです。
近年、消費者は商品やサービスそのものだけでなく、商品・サービスの利用に関わる体験全体を重視する傾向にあります。アフターサポートや問い合わせ対応も体験のひとつで、チャットボットによる利便性の向上もマーケティング戦略のひとつとして有効です。
簡単な質問やよくある質問はチャットボットに任せられるため、オペレーターや担当者の負担を減らして業務を効率化できるのもメリットです。例えばカスタマーサポートなら、オペレーターが対応すべき問い合わせの件数が減って、1日に対応できる件数を増やせるでしょう。
経理や情報システムなど、従業員からの問い合わせを受けることの多いバックオフィス部門は、チャットボットに問い合わせ対応を任せることでより重要な業務に注力できるようになります。
チャットボットの導入で有人対応が必要な問い合わせ件数が減ることで、今より少ない人数でも対応できるようになるかもしれません。電話回線やオペレーターの数を減らすことができれば、コスト削減につながります。また、少ない人手でも業務をこなせるようになれば、人手不足を解消できるのもメリットです。
チャットボットには問い合わせ対応に必要な知識がデータとして集約されているので、知識の一元化や属人化の防止につながります。人のように異動や退職がなく、長期的に知識や知見が残り続けるのもメリットです。
知識や業務の属人化が起きると、担当者が急に退職したり引き継ぎが不十分だったりするケースもあり、対応品質が大きく落ちてしまいます。チャットボットなら、このような心配はありません。
商品やサービスについて疑問や不明点がある状態で購入に進む人は少ないでしょう。また、購入前の商品やサービスについて電話やメールでわざわざ問い合わせる人は多くありません。そのため、気軽に問い合わせができないと販売機会を逃してしまう可能性があります。
気軽に質問できて回答がすぐに返ってくるチャットボットを用意しておけば、購入前のユーザーの疑問や不安を即時解消できます。これにより、コンバージョン率の向上につながるのも期待される効果のひとつです。
チャットボットに寄せられた問い合わせは、データとして蓄積が可能です。問い合わせデータを分析することで、顧客ニーズを把握しやすくなるというメリットもあります。
例えば、商品の使い方について同じ内容の質問が多い場合、商品自体の改良もしくはマニュアル・公式サイトなどの修正が必要だと考えられます。顧客ニーズを汲み取って商品やサービスに反映させることで、顧客満足度や売上の向上が期待できるでしょう。
チャットボットは問い合わせを受け付けた件数や回答を提示した回数などのデータが残るため、効果測定が可能です。例えば「チャットボットの対応件数が多い月は問い合わせの入電件数が少ない」という場合、チャットボットによって業務負担を軽減できたと判断できます。
企業がチャットボットを導入する時、何らかの効果を期待して導入するケースがほとんどでしょう。期待した成果が得られているか知るために、効果測定が行えるのも重要なポイントです。
チャットボットはメリットの多いツールですが、次のようなデメリットがあることも把握しておかなければなりません。
上記3つのデメリットについて、以下で解説します。
チャットボットの導入と運用には、各種費用がかかります。チャットボットを動作させるための環境構築などに必要な初期費用に加えて、クラウドサービスのチャットボットを利用する場合は毎月の利用料も必要です。
チャットボットを利用できる状態にするため、想定される質問・回答の洗い出しやシナリオ設計といった手間も発生します。運用を始めたら分析・改善を繰り返し、チャットボットの精度を高めていかなければなりません。
このようにチャットボットの導入・運用には費用と手間がかかるため、そのための予算や人手を確保しておく必要があります。
チャットボットが対応できるのは基本的に回答が決まっている簡単なもので、事前に登録されていないイレギュラーな質問や、細かい聞き取りが必要な複雑なトラブルなどには対応できません。このような問い合わせは有人対応が必要で、チャットボットだけで全ての問い合わせに対応できるわけではない点にも注意が必要です。
チャットボットは、「簡単な問い合わせの受け皿となり、電話やメールでの問い合わせ件数を減らす」という目的のツールだと考えておきましょう。「チャットボットを導入すれば人のオペレーターは不要になる」というわけではありません。
チャットボットは、利用者からの問い合わせを受け付けることで効果を発揮します。そのため、そもそもの問い合わせ件数やチャットボットで対応できる問い合わせが少ないなど、効果が出にくいケースもあります。
先述の通りチャットボットの導入・運用には費用がかかるため、十分に活用されなければ費用対効果が上がりません。チャットボットの導入を決定する前に問い合わせの件数や内容を確認し、「チャットボットの導入が本当に適しているのか」を検証することが大切です。
チャットボットの効果を測る指標には、以下のようなものがあります。
起動回数や対応回数は、チャットボットがどの程度利用されているのかを把握するのに役立ちます。起動回数や対応回数が少ない場合は、チャットボットの設置場所やメッセージの内容を見直す必要があるかもしれません。
回答率や解決率は、チャットボットの対応品質を測る指標です。回答率や解決率の低さは利用者の問題を解消できていないことを意味するため、質問・回答の拡充や修正が求められます。
チャットボットにはコンバージョン率や顧客満足度を高める効果もあるため、導入前後でこれらの指標に変化があったかどうかを確認することも大切です。オペレーターや担当者の負担軽減を目的としている場合は、有人対応した問い合わせ件数もチェックしてください。
チャットボットを効果的に運用するために、以下の手順で導入を進めましょう。
最初に目的と目標を設定しておくことで、自社に必要な機能を持ったツールを適切に選定できるようになります。導入をスムーズに進めるために、運用担当者も早い段階で選定しておきましょう。
導入先と運用担当者を決定したら、目的と目標を達成するために必要な機能を洗い出し、機能や費用の条件を満たすツールを選定します。ツールを決めたら運用体制や環境を構築し、テスト運用に問題がなければ正式に運用開始となります。
最後に、チャットボットの導入事例を2件紹介します。これからチャットボットを導入したいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
株式会社クスリのアオキは、社内の問い合わせ対応のためにAIチャットボットを導入しています。労務担当者は全国にいる約1万5,000人の従業員からの問い合わせを受け付けていて、担当者の業務負担の大きさが問題となっていました。
チャットボットを導入したことで、労務課への問い合わせを約75%削減、問い合わせ対応にかかっていた時間を約3,500時間削減することに成功しました。回答までにかかる時間を短縮でき、労務課に問い合わせをしていた従業員からも好評を得ています。
参考:PR TIMES「クスリのアオキ様が15,000人以上の労務関連の社内問い合わせ対応にパナソニックの AI チャットボット「WisTalk」を導入」
埼玉県では、県の業務に関する質問にチャットボットが対応する「埼玉コンシェルジュ」を導入しています。
県民は24時間好きな時間に問い合わせが可能なため、時間や場所にとらわれず気軽に質問でき、県民サービスの向上につながっています。
また、チャットで問い合わせができるようになったことで、県民からの電話による問い合わせ件数の減少という効果も得ることができました。
参考:彩の国さいたま人づくり広域連合「埼玉県におけるAI、RPA等先進技術を 活用した取組 ~スマート自治体の実現に向けて~」
チャットボットを導入すると時間を問わず自動で問い合わせを受け付けられるようになるため、利用者の利便性を向上させながらオペレーターや担当者の業務負担を軽減することができます。ただし、本記事で紹介したように、全ての問い合わせをチャットボットに任せられるわけではない点に注意してください。
有人対応の件数を極力減らしたい場合は、チャットボットに加えてFAQを活用するのがおすすめです。チャットボットではうまくシナリオが作動しないものや、チャットボットのチューニングがうまくいかない時などは、FAQが役立ちます。
FAQシステムの『Helpfeel』は、独自技術によって相手の意図を予測した回答の提示が可能です。構築作業の代行や運用改善の提案にも対応しているので、精度の高い問い合わせ対応ツールをお探しの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。