ヘルプデスクは、ユーザーからの問い合わせに対応する部門のことです。ヘルプデスクは大きく分けて、顧客からの問い合わせに対応する「社外ヘルプデスク」と、社内からの問い合わせに対応する「社内ヘルプデスク」の2種類に分かれます。
それぞれの特徴と業務内容について、以下で詳しく見ていきましょう。
社外ヘルプデスクは、顧客や取引先などからの問い合わせに対応するヘルプデスクです。製品やサービスに関する質問やトラブル対応など、社外ユーザーからの疑問や問題に対応します。
顧客対応が主な業務となるため、社外ヘルプデスクの業務は顧客満足度の向上に貢献します。困った時にヘルプデスクから的確な回答がもらえれば、「安心して利用できる」「信頼できる企業」といった印象を持ってもらえるでしょう。
社外ヘルプデスクは単純な問い合わせだけでなくクレームや契約関連の質問にも対応する必要があるため、幅広い知識やコミュニケーション力が必要とされます。
社内ヘルプデスクは、従業員からの問い合わせに対応するヘルプデスクです。主な業務内容はIT関連のサポートで、パソコンの不具合や業務システムの使い方、ネットワークの接続など、日常業務で発生するパソコンやシステムに関する問い合わせに対応します。
これらの質問やトラブルは部署を問わず発生するため、全従業員からの問い合わせに対応しなければなりません。情シスなど特定の部署だけで対応するのは難しいため、問い合わせ対応の専門部署として社内ヘルプデスクを設けている企業も多くあります。
社内・社外問わず、ヘルプデスクには同じ内容の問い合わせが多く寄せられるケースが珍しくありません。ヘルプデスクのオペレーターにとって、これは大きな負担になります。
例えば、業務システムのパスワードリセットや基本的な操作方法に関する質問は、部署や役職を問わず多くの人から寄せられるでしょう。問い合わせ件数が多いほど、対応するために多くの時間や人手がかかります。
このような比較的簡単な問い合わせに多くのリソースがかかると、より重要な問い合わせが後回しになってしまい、業務全体の効率が低下する原因となります。何度も同じ質問と回答を繰り返すのは、オペレーターのストレスにもつながるでしょう。
ヘルプデスクに問い合わせが集中するとオペレーターが手一杯になり、迅速な対応が難しくなるケースがあります。
例えば、問い合わせの件数が多過ぎたりオペレーターの人数が少なかったりすると、ユーザーに「問い合わせをしたのに回答がなかなかもらえない」という印象を与えてしまいます。
また、複雑な質問やイレギュラーなトラブルなどオペーレーターだけでは対応が難しい問い合わせがあると、上司や専門部署に確認するエスカレーションが必要です。この場合も回答を提示するまでの時間がかかり、ユーザーの不満やストレスの原因になります。
特に社外ヘルプデスクの場合は顧客満足度の低下を招くおそれがあるため、注意しなければなりません。
近年、ChatGPTなどの生成AIが注目を集めており、ヘルプデスク業務にもその導入が進んでいます。生成AIとは、文章や画像などのコンテンツを生成できるAIのことです。
生成AIをヘルプデスク業務に用いると、ユーザーからの問い合わせに対して自動的に適切な回答を提供できるようになります。オペレーターを配置しなくても24時間365日の対応が可能となり、ヘルプデスクの運営にかかるリソースを大幅に減らせるでしょう。
生成AIは問い合わせ対応だけでなく、FAQの文章生成や精度の向上にも活用できます。例えばAIチャットボットで問い合わせを受け付けるようにすれば、日々の問い合わせから学習してFAQにコンテンツを追加したり回答内容を修正したりできるのがメリットです。
ヘルプデスクに生成AIを活用すると、次のようなメリットがあります。
上記4つのメリットについて、以下で詳しく見ていきましょう。
生成AIをヘルプデスク業務に活用することで、単純な質問への回答や問い合わせの一次受付を自動化できます。
例えば、よくある質問や簡単な手続きに関する問い合わせなら、オペレーターが対応しなくても生成AIだけで十分対応が可能でしょう。これにより、オペレーターの負担軽減につながります。
また、生成AIを使って精度の高いFAQを用意できれば、問題の自己解決率を上げることも可能です。全体の問い合わせ件数が減り、オペレーターはより複雑な問い合わせや顧客対応に集中できるようになるでしょう。
生成AIはオペレーターが不在でも自動で問い合わせに対応できるため、24時間対応が可能になります。
特に営業時間外の問い合わせが多い企業にとっては、大きなメリットでしょう。また、ヘルプデスク担当者が他の業務に追われていたり不在だったりしても、生成AIならいつでも対応できます。
全てのユーザーがヘルプデスクの営業時間内に問い合わせができるとは限らないため、24時間対応を求める声も少なくありません。社外ヘルプデスクの場合は、24時間対応によって顧客満足度の向上が図れます。
生成AIの導入で問い合わせ対応の自動化を進めることで、オペレーターが対応すべき問い合わせが減ります。人が対応しなければならない問い合わせが減れば、オペレーターの人数や残業時間も減り、コストの削減につながるのもメリットです。
専門知識を有するオペレーターの人件費は高くなる傾向にあるため、人件費の削減を目指せるのは企業にとって見逃せないメリットです。
生成AIで問い合わせを受け付けるようにすると、問い合わせ内容をデータとして管理できるようになります。このデータはナレッジとして蓄積したり、分析してマーケティングに活用したりできます。
オペレーターが対応する場合、スキルやナレッジの属人化が起きやすくなる点に注意しなければなりません。オペレーターごとの回答内容や対応品質に差が出ると顧客満足度の低下につながり、オペレーターの欠勤や離職の際に問題が生じるおそれもあります。
生成AIの活用によるナレッジの蓄積と共有は、属人化を防いでヘルプデスク全体の対応レベルを向上させる効果が期待できます。
家事代行や介護支援などの暮らしサポートサービスを展開している株式会社ベアーズでは、スタッフからの問い合わせに対応するために検索型FAQ「Helpfeel」を導入しました。Helpfeelは、生成AIを活用してFAQ構築などの業務を効率化できるサービスです。
株式会社ベアーズには6万人以上の家事代行スタッフが在籍していて、1日に300件以上の問い合わせが寄せられます。緊急度や優先順位の仕分けだけでも業務負荷が高く、「人を介さず対応できるようにしたい」との思いからHelpfeelの導入を決めました。
Helpfeelの導入後はヘルプデスクの受電率が低下しており、電話対応の業務負荷の軽減に成功しています。
ヘルプデスクが抱える「同じ内容の質問が多い」「回答までに時間がかかる」といった課題は、生成AIの活用によって改善が期待できます。ヘルプデスクの業務効率化を目指している企業は、生成AIの活用を検討してみてください。
ただし、生成AIにはハルシネーションといわれる偽情報や誤った情報を生成するリスクに注意しなければなりません。生成AIを使ったFAQやチャットボットを導入する場合は、ハルシネーション対策が行われているかどうかも確認しましょう。
本記事で導入事例として紹介した「Helpfeel」は、FAQの回答記事は最終的に必ず人が確認するため、ハルシネーションが発生せず正しい情報が表示されるのが特徴です。独自の検索技術にAIをかけ合わせた検索機能など便利な機能を備えているので、ぜひご活用ください。