小4 国語 白いぼうし ロイロノート・スクールで離れた場所にいながら意見を共有し、読みを深めながら、不思議が詰まった物語を全員で読解する授業を展開します【実践事例】(大阪教育大学附属天王寺小学校)
授業担当者 | 大久保亨 |
ICT環境 | |
学年 / 教科 | 小学4年 国語 |
単元 | 白いぼうし |
〈実践の概要〉
「白いぼうし」(光村4年上)を、ロイロノート・スクールを活用して読み解いていく授業を行いました。
休校中、子どもたちとの顔合わせさえできていない状況ですが、こちらからは動画配信・カード送信、子どもたちからはカードの提出というやり取りの授業を行っていきました。その授業の中で、普段の授業では出会えない気づきや、発見が生まれました。
活動の場面に合ったシンキングツールを使うことで、子どもたちは新たな発見や謎に出会います。さらにそこに友達の考えを組み込む活動を入れることで、読みは深まります。
休校中だからこそできた、友達全員の考えを読む時間の確保は、ロイロノートの有用性を私たちに示してくれました。 また、個人とのやりとりもカードででき、全体へのカードによる伝達も、資料箱の活用などで行うことができることも休校中の子どもへの支援として有用なものでした。
〈ロイロノート・スクール導入の効果・メリット〉
ロイロノート・スクールを使うことで、全員の考えを共有し、じっくり読む時間を確保することができました。
シンキングツールを使って、自分の思考の流れを「見える」化したり、友達の考えをシンキングツールに組み込むことで、自分の読みを深めたりする場面が見られました。
一人ひとりに対する細かい添削や、面白い気づきなどをモデリングすることも簡単にできるので、支援の手立てとしても有効活用できました。
〈実践の目標〉
登場人物の様子や言動、物語の表現から、登場人物の人柄や気持ちなどについて具体的に想像することができる。
物語を読んで気づいたことや感じたことを、「なりきり作文」を書く中で表現しようとしている。
「なりきり作文」を読んで、一人一人の感じ方などに違いがあることに気づくことができる。
〈場面1〉初発の感想、不思議に思ったことを交流する
あまんきみこ作「白いぼうし」は、読後に不思議が残る物語です。また、その不思議も子どもによって違ってきますし、導き出す答えももちろん違ってきます。そこで、まずは感想と不思議を共有できるようにしました。自分と同じ考えをもっている友達や、感じ方が違う友達がいることに気づき、それらの不思議を解明していくことを課題として捉えられるようにしました。
〈場面2〉物語の設定・人物像を捉える
物語の基本設定である時・場・人物を捉える活動を行いました。物語全体を捉えるために作成した表を埋めていく活動は、表のセル一つ一つにカードを埋め込むと、簡単に書き込むことができました。
「なぜ松井さんはちょうの代わりに夏みかんを置いたのだろう。」という発問から、松井さんの人物像に迫れるようにしました。まず、自分の考えを書いたカードを提出箱に入れます。次に、「ぼうしチャート(くらげチャート)」の足の部分に、自分が良いと思った(自分と同じ・違う・気づかなかったなど視点は様々)カードを5枚選び挿入します。最後に、5枚のカードの考えを踏まえて松井さんの人物像をくらげの頭に挿入します。このような流れの活動を行うと、子どもの思考の流れがこちらにも子ども本人にも「見える」化されました。
〈場面3〉最後の場面の謎に迫る
物語の最後に、小さな声が松井さんに聞こえる場面があります。その声の正体と内容、松井さんに聞こえたことの謎について考えました。その3つの観点に対する自分の考えを黄色のカード、その根拠となる文章や考えを白いカードに書きました。そして、「バタフライチャート」に自分が納得した友達の黄色カードを観点別に入れました。右端は新たな発見を挿入するスペースです。自分の新たな気づきは緑色のカードで挿入するようにしました。友達の黄色カードを読んで、自分の考えに自信をもったように見られる子もいれば、1人のバタフライチャートの中に、様々な考えが見られることもありました。
〈場面4〉「なりきり作文〜スピンオフストーリー〜」を書く
「白いぼうし」のちょう、もしくは女の子に視点人物を変えて物語を作り直す活動を行いました。作る前に、2で作った表をちょう・女の子視点に作り直して、「なりきり作文」の下書きを作ります。その上で、視点人物を変えた際に生まれる余白を自分で考えて書くという活動です。物語は四場面に分けられるので、カードも四枚に書きます。カードに書くのが難しい子は、ノートに書いたものを送ってもらい、こちらがカードに打ち込みました。これまでに自分たちで考えた「白いぼうし」の不思議についての理解や発見の表現を期待した活動で、子どもたちはのびのびと自分の作文を仕上げてきました。
〈場面5〉投票(相互評価)を行う
子どもたちの作文を、誰のものか分からないようにして資料箱に入れます。そして、友達の作文を読み、「イイね(支持)」「なるほど(受容)」「わかる(共感)」の観点で投票しました。投票するのは3人まで、必ず3つの観点のどれかにコメントを書き、自分が投票した理由を示すようにしました。普段の授業では、授業時間や準備の関係でゆっくり読むことが難しいですが、休校中の子どもたちはたっぷり時間をかけて他の友達の作文を読むことができました。そのため、その授業のふりかえりでは「読むことの楽しさを感じた。」「いろいろな考えがあって面白かった。」「他の作品でもやってみたい。」というポジティブな意見が多く見られました。
〈場面6〉単元の振り返りを行う
今回の単元の活動を通してのふりかえりを行いました。不思議の解明、「なりきり作文」の創作、全体を通して、感想や気づきを共有しました。物語を読むことの楽しさを再認識すると共に、これからの子どもたちの読書生活に「様々な視点で読むことの面白さ」という種植えをして単元を終えました。
授業の様子