カスタマーサクセスは、現代のビジネスにおいて非常に重要な役割です。製品やサービスを提供する企業が、単に顧客に売るだけではなく、顧客の成功を支援することを目的としています。これにより、企業は顧客との信頼関係を築き、長期的な収益の向上を図ります。
ここでは、カスタマーサクセスの基本的な定義や役割、そしてカスタマーサポートとの違いを明確にし、なぜ多くの企業がカスタマーサクセスに取り組んでいるのかを解説していきます。
カスタマーサクセスとは、顧客が製品やサービスを利用して成功を収めるよう企業が積極的に支援する取り組みを指します。問題が発生した際に対応するカスタマーサポートとは異なり、顧客のニーズを予測し、事前に価値を提供することを重視します。
カスタマーサクセスに取り組んでいる企業は「顧客の成功を自社の成功」と捉えています。カスタマーサクセスによって顧客の満足度やエンゲージメントを高めること(顧客の成功)で、結果的に顧客の継続利用やリピート購入を促進(自社の成功)に繋がります。
例えば、SaaS企業は、導入後に顧客がサービスを最大限に活用できるようサポートすることで、顧客の成功を確保し、LTV(顧客生涯価値)の向上を実現しています。
▼LTVについては下記の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの最も大きな違いは、顧客との関わり方です。
カスタマーサポートは、主に顧客が問題に直面した際に対応する受動的な業務であり、トラブルシューティングや問い合わせ対応に重点を置きます。
対してカスタマーサクセスは、顧客の成功を目的に、能動的に行動します。顧客がまだ気づいていない潜在的なニーズや、より効率的な活用方法を提案し、常に先を見越したサポートを提供するのが特徴です。
▼カスタマーサポートの役割については別の記事でも解説していますので、併せてご覧下さい。
カスタマーサクセスが重視される背景には、SaaSやサブスクリプション型ビジネスの増加があります。
サブスクリプションサービスは今後も拡大すると予想されており、2021年度には9,615億円だった国内市場規模は、2025年には約1兆1,185億円まで成長すると予測されています。(出典:矢野経済研究所)
サブスクリプション型ビジネスでは、顧客の契約継続が売上に直結するため、非常に重要であり、その役割を担うのが、カスタマーサクセスです。
市場には数多くのサブスクリプション型ビジネスが溢れかえっているため、多くの成功体験を顧客に与えられなければ、簡単に顧客が離れてしまいます。
商品やサービスのクオリティが高いことはもちろん、顧客が持つ印象、体験のシェアなどCX(カスタマーエクスペリエンス/顧客体験)が、競合に勝る付加価値を生み出すためには必要です。
こうしたCXの概念が浸透したことも、カスタマーサクセスが重視されるようになった背景のひとつといえます。
▼カスタマーエクスペリエンスに関するさらに詳しい解説は、下記の記事をご覧下さい。
カスタマーサクセスが目指すのは、顧客の成功体験を創出し、LTVを最大化することです。
LTVとは「顧客生涯価値」のことで、商品やサービスの利用開始から終了までに、顧客が企業へもたらす利益を指します。そしてLTVを向上させるために、次の3つをKPIとして設定します。
3つのKPIを達成するために、カスタマーサクセスが介在すべき場面を解説します。
オンボーディングは、顧客が製品やサービスを利用し始める最初の段階であり、最も重要なフェーズのひとつです。このプロセスがスムーズかつ効果的に行われることで、顧客は製品の使い方や利便性を素早く理解し、早期に価値を実感できます。
例えばSaaS企業では、新規ユーザーに対して初期設定や利用方法をステップごとに案内し、導入初期のハードルを下げるようなことをカスタマーサクセスが実践しています。適切なオンボーディングを行うことで、顧客は初期に成功体験を実感できます。
結果として「契約したけど使われずに終わってしまう」といったような顧客のサービスへの理解不足による解約リスクを低減できます。
顧客の継続利用を促すためには導入後の支援が欠かせません。顧客が興味を持ってサービスのオンボーディングが完了したとしても、サービスをしっかり使いこなし、成功体験を得ることができなければ、契約を継続してもらうことは難しいからです。
カスタマーサクセスは、定期的なフォローアップや導入後のサポートを行うなど顧客の継続のために必要な支援を実行することで、チャーンレート(解約率)の低下を目指します。
▼チャーンレートの改善策については別の記事でも解説しているので、併せてご覧下さい。
カスタマーサクセスは、アップセルやクロスセルによって自社の売上を向上させる役割を担います。
サブスクリプション型ビジネスの場合、解約率を抑えることで売上の維持につながりますが、顧客単価は上がらないため、それ以上の売上アップは期待できません。アップセルやクロスセルを実施すれば顧客単価を引き上げ、LTVを向上させることができます。
すでに自社の商品やサービスを利用している顧客なら、ニーズを把握しやすく、新規顧客の開拓に比べて売上向上の見込みが高いため、カスタマーサクセスにおいてアップセルやクロスセルは欠かすことのできない役割です。
カスタマーサクセスの効果を最大化するためには、データに基づいた顧客理解と、顧客ライフサイクル全体にわたる戦略的なアプローチが必要です。
これにより、企業は顧客のニーズを的確に把握し、長期的な関係を築くことが可能になります。
顧客の行動データを活用することで、企業は顧客の利用状況やニーズを予測し、最適なタイミングで価値あるサポートを提供できます。
たとえば、過去に解約した顧客のデータを分析し、共通したつまずきのポイントを見つけます。そして新規顧客の製品利用状況をリアルタイムで追跡し、過去つまずきが多かったポイントに到達する前に解決策を提案するなどの能動的な対応が可能です。
これにより、顧客満足度の向上やチャーンレートの低下に直接つながります。
カスタマーサクセスは、顧客獲得後の短期的なサポートにとどまらず、顧客ライフサイクル全体を通じて継続的な関係を構築することが重要です。
たとえば、SaaS企業であれば初期の利用フェーズでの基本サポートに加え、数ヶ月後には製品の高度な機能を紹介したり、利用状況に応じた新しい提案を行うことが有効です。
顧客が自社のサービスをより深く理解し、活用できるようサポートを提供し続けることで、顧客の成長に合わせた柔軟なアプローチが可能となります。
カスタマーサクセスで気をつけるべきポイントは、リソースの分配や最適化です。企業のリソースは限られており、どのような顧客にどのような支援をするのか、1社あたりどれくらいの工数をかけるのか、という点で最適化が必要です。
この最適化について多くの企業のカスタマーサクセスでは、顧客を3つにセグメントする「タッチモデル」を採用しています。
次に重要視する顧客に対しての支援が、ロータッチです。少ない工数で効果的に支援をするため、1対nで研修会やWebセミナーを実施する、といった手法を採用します。
最後にテックタッチではデジタルを使って顧客を支援を実施します。ハイタッチ、ロータッチはいずれも人手による支援を前提とするものですが、テックタッチはシステムやツールを利用し、極力人手がかからない支援を実施します。
ハイタッチ、ロータッチはどうしても人の介在がありますが、テックタッチの設計はカスタマーサクセスの工数を大幅に削減できる可能性があるため、非常に重要な施策です。
またFAQや使い方ガイドなどの設置でよくある質問への回答をテックタッチで実施できれば、顧客が即時に疑問や課題の自己解決ができるというメリットがあります。
限られたリソースでカスタマーサクセスを実現するには、FAQの活用が有効です。FAQは顧客の課題を素早く自己解決へ導けるため、カスタマーサクセスのテックタッチを強化することができます。
弊社では、株式会社ビザスク様が運営するセルフマッチング型のスポットコンサルサービス「ビザスクlite」のFAQサイトに、次世代FAQシステム「Helpfeel」を導入した実績があります。
「ビザスクlite」には質問が多く寄せられており、WordPressでFAQページを作成・公開したものの検索精度が低く、あまり活用されていない状況でした。そこでHelpfeelを導入したところ、1ヵ月で問い合わせ数全体の3分の1を減らすことに成功しています。
Helpfeelは、顧客ごとに異なる言葉で検索がおこなわれた際も、独自技術によって最適な回答を提示します。検索ヒット率は98%と非常に高く、事例のように、大幅な問い合わせ数の削減が期待できます。
また、Helpfeelにはポップアップ形式でFAQを表示できる機能や、サジェスト経由でFAQ記事を閲覧できる機能があります。こうしたシームレスなFAQへの導線も、問い合わせ数を削減できた要因のひとつです。
限られたリソースを有効活用してカスタマーサクセスを実現したいとお考えの方は、ぜひ1度サービス資料をご覧ください。