中1国語 言葉を自覚的に用いながらより良い考えを創り上げることができる国語科の授業 話し方はどうかな【実践事例】愛知教育大学附属名古屋中学校 堀田忠孝
授業担当者 | 堀田忠孝 |
ICT環境 | 1人1台タブレット |
学年 / 教科 | 中学1年 /国語 |
単元 | 話し方はどうかな |
〈実践の概要〉
単元を二つの場で構成する。
「考えを形成する場」は,言葉についての汎用性のある知識を習得させることをねらいとし,「はじめの時間」「ひとり読み」「読みの交流」「読みのまとめ」で構成する。段階を踏んで関わり合いを行わせることで,既存の知識と新たに習得した知識を関連付ける精緻化や,新たな知識を分類,整理する体制化をさせ,言葉についての汎用性のある知識を習得させる。「読みの交流」を終えて授業ごとに記述する付箋紙としてロイロノートのテキストを用いて提出させ,次時の始めに全員でその内容を共有した。
「考えを基に表現する場」は形成した知識を基に「言語活動」を通して表現する場である。言葉を自覚的に用いながらより良い考えを創り上げることをねらいとし,「下書き」「意見交流」「清書」(スピーチの場合は「本番の発表」)「まとめの時間」で構成する。「まとめの時間」に,単元を通してどのような知識を習得したかを振り返らせることで,既存の知識とこの単元で習得した知識を関連付けたり,習得した知識を分類,整理させたりして,知識について改めて精緻化と体制化を行い,より言葉についての汎用性のある知識として定着させる。まとめの時間に用いる「足跡シート」は作成したものをPDF化し,ロイロノートで生徒に送り,テキストを付箋紙として貼らせて提出させた。
〈ロイロノート・スクール導入の効果・メリット〉
・ 生徒が付箋紙などを使用しなくても自分の考えを提出箱に提出し,共有することで学級の考えを一覧しやすい。
・ プリントに付箋紙を貼っていくよりも生徒が管理しやすく,視認性が高い。
・ 「下書き」から「清書」をする際に,推敲して文章を修正するのが容易である。
・ 生徒の学習の成果をいつでも把握でき,場合によっては評価を入れて返却できる。
・ スピーチなどの動画を保存することができ,提出箱を用いて提出させることで,全体での発表が苦手な生徒も気兼ねなくスピーチをすることができる。
〈実践の目標〉
・ 形成した自分の考えを基に,相手や状況に応じて適切な言葉を用いているかどうかを考えた上で表現する力を身に付けさせる(ロイロノートはこの目標を達成するための授業・指導の一助とする)。
〈場面1〉考えを形成する場
「はじめの時間」に単元の課題を確認した後,これまで学んだ人と話すときのポイントを既存の知識として確認して発表させ,ロイロノートのテキストにメモをさせた。その際,自分の考えは黒字,友達の考えは赤字で記入させ,自分の考えと他者の考えを分けて比較できるようにした。「ひとり読み」後の「読みの交流」では,本文の内容についての自分の考えを交流させた後に,単元の「言語活動」につながる「アナウンススピーチ」の練習をした。練習後,テキストに「アナウンススピーチの練習をして気づいたこと」を記述させ,提出箱に提出させた(資料1)。提出した内容は次時のはじめに共有し,自分の考えと比較・検討させることで,話し方にかかわる汎用的な知識を形成させた。
資料1「アナウンススピーチを終えて気づいたことの一覧
〈場面2〉考えを基に表現する場
「考えを基に表現する場」では「考えを形成する場」で形成した話し方にかかわる汎用的な知識を用いて「冬休みの思い出」についての1分間スピーチを行った。まず,発表原稿もしくは発表メモを個々で作成し,それを基にスピーチを行い,ロイロノートで撮影した(「下書き」)。「下書き」の際には,撮影した自分のスピーチを見直すこともできたため,話し方にかかわる汎用的な知識に照らし合わせながら,より思いが伝わりやすくなるよう,試行錯誤する姿が見られた(資料2)。この映像を基に,「意見交流」を行った。意見交流では「自分の思いが伝わるように発表の仕方を工夫できているか」「話す構成や内容が興味をひくものであったか」という二つの観点で行い,互いに指摘し合った。その後,「意見交流」で指摘されたことで取り入れたいと思ったことや取り入れずにおこうと思ったことを理由とともにテキストに記述させ,提出箱に提出させた。次の時間にテキストの内容を共有した後,「本番の発表」としてペアで撮影し合い,撮影した映像を提出箱に提出させた(資料3)。生徒からは,「撮影した映像を自分で見るのは恥ずかしかったが,よりよくなるように改善できた」「人前でスピーチをするのは苦手だったが,ロイロノートで提出できたので,少し自信をもって発表できるようになった」といった感想が聞かれた。単元の最後の「まとめの時間」には,それぞれの場面で記述したテキストに加えて,単元の振り返りを記述させ,PDFファイルの「足跡シート」にすべて貼って提出箱に提出させた(資料4)。
資料2 自分のスピーチを聞き直す生徒の様子
資料3 提出した「本番のスピーチ」 資料4 提出した「足跡シート」
〈まとめ〉
ロイロノートを使うことで,学級の生徒の考えを簡単に共有することができ,考えが深まった。また,提出する手間も少なく,生徒も教員も管理がしやすいというメリットもあった。
課題としては,テキストを記述する際に,漢字の間違いがあっても気づかない,段落ごとの改行ができないなど,本来国語教育で同時に身に付けさせるべき,作文の記述能力の向上にはつながらなかった点が上げられる,
ロイロノートを使用する前に,このようなテキストの記述の仕方などを共通理解し,より効率的に相手や状況に応じて適切な言葉を用いているかどうかを考えた上で表現する力を身に付けさせられるよう,工夫を重ねていきたい。