中1 国語 小説『トロッコ』【実践事例】(駿台学園中学高等学校)

中1 国語 小説『トロッコ』【実践事例】(駿台学園中学高等学校)


基本情報
授業担当者石井孝明
ICT環境1人1台タブレット
学年 / 教科中学校1年/国語
単元小説『トロッコ』
hr
〈実践の概要〉
国語の授業においては、意味段落や場面にわけた上で内容を整理し、それらを集約して最後に全体像を理解するという手法が現在でも一般的であると考えられる。この授業方法の利点としては、細かいところまで(複数回に授業を分けて)丁寧に説明できることだが、授業を受けている間、生徒には全体像が見えづらいという大きな欠点がある。小説によっては前後を対照して読むことが重要な場合が少なからずあるのだが、場面分けしてしまうと、最後のまとめに至るまで前後関係を説明できないことも往々にしてある。そこで、今回は小説『トロッコ』を題材とし、主人公良平の心情の変化が捕らえられる場面を全体から四つピックアップした上で、そのどれが最も心情の変化が大きいかを問う授業を行った。この方法ならば、小説全体を見通した授業が可能である。その際、必ず「根拠」と「理由」をまとめさせる。その作業をロイロノートで行い、生徒全員の意見を把握、比較することが今回の実践の主眼である。なお、このいくつかの場面を比較して発問し、「根拠」と「理由」を区別して考えさせる方法は、佐藤佐敏著、『思考力を高める授業 作品を解釈するメカニズム』(三省堂)に基づくことをあらかじめ断っておく。

〈ロイロノート・スクール導入の効果・メリット〉
全員の意見を比較、参考できるので、これまでのような生徒の意見の取りこぼしがなくなる。
生徒の意見を比較する際、これまでは前に出させて板書させていたが、各自のタブレットに配信したり、スクリーンに投影できるためその時間が不要となり、授業に無駄がなくなる。
生徒自身が他の生徒の意見を受け止め、相互に評価しやすい。

〈実践の目標〉
「根拠」と「理由」が異なることを明確に理解して自分の意見をまとめる。
ロイロノートをとおして、他者の意見を知り、自分の意見と比較する

〈授業写真〉

hr
〈場面1〉課題の配信
教員から、事前にロイロノートのテキストで作成したカードを配信し、本時の課題を確認する。今回は、小説『トロッコ』において①から④として四つの場面を選び、そのどれが最も「主人公の考えや心情が変化したのか」を考える課題である。まずは、生徒に①から④の記号を一つ選ばせ、ロイロノートで提出させる。

〈場面2〉クラス全体の意見の相違を確認
ロイロノートで集約した結果をスクリーンに投影し、①から④の場面について、それぞれ何人の生徒が選んだかを確認する。本校は端末を一人一台所持しているので、画面配信してもよいのだが、スクリーンに投影すると教員が指示しながら話せるのが利点である。視線がこちらを向くので、生徒の反応を確認しながら説明ができる。

〈場面3〉各自で根拠、理由をまとめる
各自でロイロノートのカードを作成し、自分が選んだ場面が最も心情の変化が大きいと言える「根拠」と「理由」をまとめる。ここでいう「根拠」とは、実際に教科書に書かれている記述のことである。それを「心情の変化が最も大きい」という解釈に結びつけるのが「理由」である。国語の授業ではしばしば「根拠」と「理由」が混同されがちだが、「根拠」を明確にすることで、読みをより深めることが可能である。

〈場面4〉ロイロノートに挙げられた「根拠」「理由」を比較する
生徒から提出されたカードをスクリーンに投影、それぞれの「根拠」、「理由」を確認する。その際、教員からは「根拠」が「根拠」になっているか、理由づけがきちんとなされているかの指摘にとどめ、その内容の妥当性にまでは話を及ぼさない。それが妥当かどうかを生徒自身が考えるのが重要である。中1だとまだ根拠と理由を混同することも多いので、その点のみを確認する。次時は、生徒自身がそれぞれの「根拠」「理由」の妥当性を評価しあう。

〈授業写真〉
Powered by Helpfeel