小4 理科 ものの体積とあたたまり方【実践事例】(京都教育大学附属桃山小学校)
京都教育大学附属桃山小学校
長野 健吉教諭
シンキングツールは、パフォーマンス課題(performance task)授業に必須
空気のあたたまり方を、実験結果を根拠として温度の変化による体積の変化と関係付けて説明します。
このような論理的思考を獲得した姿を目指します。そのために、パフォーマンス課題「住空間に最適な空調を設計士として大工さんへ提案する」を設定しました。
根拠を考えるためにシンキングツール「キャンディチャート」であたたまり方の根拠をまとめ、論理的に説得するために構造化の思考をシンキングツール「ピラミッドチャート」で、“あたたまり方の事実を根拠にした主張”を構築します。どのように事実から主張できるかについてカードをつなぎ変えて様々な角度から相手を説得する主張を作成します。
ロイロノート導入のメリット
まず自分で考えたことを瞬時に共有できる点です。さらに共有によって、友だちの考えを元に自分の考えをさらに発展させることができます。例えば「4分で〇〇について考えを書く」とした場合、まずは自分でカードに書いて2分後に先生に提出し、先生から共有されたクラス全員の考えを見て、すぐ自分の考えに取り入れ修正して再提出するという2段階にします。これによってお互いに高め合い、思考を高速化させることができます。
ロイロノート上で、シンキングツールを使う利点は、カードの移動、コピーが簡単なため、シンキングツール間での考えの移行が、自然な流れで行えるようになった点です。例えば、比較したことを根拠に考えを述べる場合、ベン図上で作成したカードを、そのままピラミッドチャートに移行して使うことができます。
実践の目標
空気のあたたまり方を温度、体積の変化と関係づけて考え、パフォーマンス課題の「住空間に最適な空調を大工さんへ提案する」について根拠をもって説明することができることです。
実践の場面
1. 生徒とルーブリックを作成する(この授業で到達したい自分の姿)
自分たちで具体的な到達点を作ることにより、これまでの学習を思い返すことができ、学習への気持ちがより高まっていきます。
「あたたまり方」の言葉から温度や体積など、これまでの学習で学んだ言葉を使って学習の目当てを分析します。そこから生徒がルーブリックのA評価を作ります。グループで話し合いを2分間行い、その後、生徒同士の発言を連鎖させてるためにハンドサインを使用して全体の意見の統合をします。
【本時のルーブリック】
A:空気のあたたまり方を、粒子と温度と体積の変化を関係付けて説明できる。
S:図やシンキングツールで、わかりやすく水のあたたまり方と比べて説明できる 。
2. 実験の結果を振り返り、考察する
実験した動画や画像を振り返り、どんな現象であるのか根拠をもって考察します。
空気の対流という現象から、「水のあたたまり方」の考えが使えないか、「体積変化」の考えが使えないかを、前に学んだカードを見て考えていきます。
ベン図を使って「体積の変化」と「あたたまり方」を比較して考えを深めます。まず、個人で考えた後、グループで活動することで深い考察ができ、さらに、グループの考察を全体発表することで、高め合うことができます。
3. 結論を導くために全体で考えを交流し高め合う
グループ間での考えのギャップを埋めるために、全体で発表します。全体で考えを深める方法として、始めのグループ発表に対して付け足す意見の生徒が発表していきます。今回の授業では、水のあたたまり方での粒子モデルを引用しての説明、空気があたためられた時の体積の粒子モデルの説明へと考えが付け足されました。
全体での発表後、再びグループで話合いを行い、学習問題である「空気はどのようにあたたまるのだろうか」に対する考えを個人でまとめます。
4. パフォーマンス課題の解決「最適な空調を大工さんへ提案」
習得したことを活用できる力を身に着けるために、空気のあたたまり方の考えを使って、「エアコン・床暖房・電気ストーブ」の3つのうちから、より部屋をあたためるものを考えます。条件(空調設備)と結果(あたたまるかどうか)を明らかにし、その根拠に目を向ける思考を促すために、シンキングツールの「キャンディチャート」を使います。根拠の欄には、これまでの学習で作成したカード(対流のイメージ図、実験の様子、粒子モデルなど)をつなぎ合わせます。よくあたたまる空調設備を、明確な理由をつけてグループに伝えられるようになりました。
5. 説得力のある説明をするために、考えを構造化する
シンキングツールの「キャンディチャート」で作った考えを、説得力のある説明にするためシンキングツール「ピラミッドチャート」を使い構造化します。「キャンディチャート」での「条件」と「結果」の部分(〇〇ならよくあたたまる)を、自分の「主張」とするために、ピラミッドチャート」上部にそれらのカードを移します。次に「理由」としたカードをピラミッドチャートの下部「事実」に移動させます。
中段のまとめの部分に対流のイメージをもってきて、事実を根拠とした論理的な構造が完成します。
6. 説得力のある説明をするために、構成を練る
「住空間に最適な空調を大工さんへ説得力をもって提案する」ために、ピラミッドに配置したカードを、上(主張)下(事実)中(事実まとめ)の順番でつないでいくと説得力が増す説明ができるようになります。さらに工夫する点として、頭括型、尾括型、双括型などでつなぎかえ、説明順番を何度も再構築していきます。まず個人で作成し、グループ内で根拠をもって説明を行います。
声にだして説明することで、伝わりやすい構成に気が付き、何度も伝える順番を変更して発表していました。完成した「ピラミッドチャート」は先生に提出し全体で共有して学び合いました。