中3 社会 社会の一員として意思決定する生徒を育成する社会科の授業 二度の世界大戦と日本【実践事例】愛知教育大学附属名古屋中学校 石田賢司

中3 社会 社会の一員として意思決定する生徒を育成する社会科の授業 二度の世界大戦と日本【実践事例】愛知教育大学附属名古屋中学校 石田賢司


基本情報
授業担当者石田賢司
ICT環境1人1台タブレット
学年 / 教科中学校3年 / 社会科
単元二度の世界大戦と日本
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〈実践の概要〉
単元を「考えをもつ場」と「考えを広げる場」,「考えを創り上げる場」の三つの場で構成する。
「考えをもつ場」は,追究課題の背景となる時代の特色や地域的特色,社会の状況を捉えさせた上で,追究課題の解決方法を考えさせ,それらを分類したものを切り口として複数設定する。そして,切り口を比較させた上で意思決定させる。
「考えを広げる場」は,資料を基に切り口の良い点,問題点を整理させた上で,切り口を比較させる。切り口についての学習後,根拠を基に切り口を比較した上で意思決定させ,その後,小集団による「個々の討論」を設定する。「個々の討論」では,「ステップチャート」を使って,意思決定した過程を発表させ,その内容について議論させる。その後,議論の中で出された意見を基に,これまでの過程を振り返らせた上で,改めて意思決定させる。
「考えを創り上げる場」は,追究課題について議論し,それを踏まえて最終的な意思決定をする。この場では,複数の立場に立ち,根拠を基に切り口を比較するとともに,概念的知識を踏まえて意思決定することをねらいとする。この場では二つの討論を行う。まず,「立場の討論」を行い,「個々の討論」と同様に小集団をつくらせ,複数の立場の意見を踏まえて,どの切り口が追究課題の解決策として最もふさわしいかを議論させる。その後,帰納的に考えられるよう教師がこれまでの学習内容や本時に議論したことを俯瞰させるような発問をし,概念的知識を導き出させる。次に「集団の討論」を行い,「立場の討論」で議論したことを基に,概念的知識を踏まえて,どの切り口が追究課題の解決策としてふさわしいかを学級全体で議論させる。最後に,他の時代や地域,事例などにも活用できることはないか考えさせ,概念的知識を踏まえさせて追究課題について意思決定させる。
三つの場を通して,意思決定した過程は「ステップチャート」に記述させる。単元を通した学習のまとめとして,「ステップチャート」に記述した意思決定の過程を,「単元レポート」として文章で記述させる。

〈ロイロノート・スクール導入の効果・メリット〉
視覚性に優れ,生徒も教師も操作がしやすく使いやすい。
生徒がノートやプリントを使用しなくても,調べ学習の記録をしたり,わかったことを仲間同士で共有できたりする。
アンケート機能を使うことで,クラス全員の意見を短時間で把握できるようになった。
提出箱の機能を使うことで,全体の場での発言が苦手な生徒もクラス討論に参加できる。
生徒の学習の成果をいつでも把握でき,場合によっては評価を入れて返却できる。

〈実践の目標〉
社会の一員として意思決定する生徒を育てるため,概念的知識を踏まえて意思決定する力を身に付けさせる。(ロイロノートはこの目標を達成するための授業・指導の一助とする)

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〈場面1〉考えをもつ場
第一次世界大戦後から第二次世界大戦までの時代の特色を捉えさせ,追究課題を「日本が日中・太平洋戦争に向かうことになった最も大きな要因は何か」とし,切り口を「A:経済の悪化」「B:軍の台頭」「C:国際関係の悪化」の三つとした。ここで最初の意思決定をさせ,ふさわしいと思った切り口ごとに,Aを薄赤色,Bを薄青色,Cを薄緑色の付箋(テキスト)に分けて提出させた(資料1参照)。
資料1:「考えをもつ場」での意思決定の一覧

〈場面2〉考えを広げる場
切り口の学習を行った後,「個々の討論」で「ステップチャート」を使って,意思決定した過程を発表させる場面で,各々の「ステップチャート」を撮影して「提出箱」に提出し,共有させた。同じグループの仲間の「ステップチャート」を見ながら議論したり,気付いた点を指摘しあったりすることができた(資料2参照)。
資料2:生徒が記述し,撮影した「ステップチャート」

〈場面3〉考えを創り上げる場
「立場の討論」を行い,複数の立場の意見を踏まえて,どの切り口が追究課題の解決策として最もふさわしいかを議論させる場面で,グループごとに考えをまとめさせ,付箋(テキスト)に記述させた(資料3参照)。その後,導き出した概念的知識を基に「集団の討論」を行った。その討論中にもロイロノートを使用し,根拠となる資料を共有したり,討論で伝えきれなかった意見をテキストで送ったりして,討論の内容を充実させた。生徒からは,「根拠となる資料を見ながら友達の意見が聞けるのでわかりやすかった」「人前で意見を言うのが苦手だが,ロイロノートでも意見を伝えることができるので自分も討論に参加しているという意識が高まった」といった感想が聞かれた。
資料3:「立場の討論」後のグループごとの考え
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