チャットボットとは?
チャットボットとは、ユーザーがチャット(chat)上で送信したメッセージに対して、ロボット(bot)が自動で回答・対話してくれるツールのことです。
あらかじめ設定されている質疑応答集にしたがって回答を表示したり、行動経済学や顧客対応ノウハウを活かしたりして、利用者の気持ちに寄り添った対話をします。その結果、まるで人と話しているかのような自然なやりとりを通じて、自動的に質の高い対応が実現します。
チャットボットが活用されているシーン
WebサイトのTOPページで「お困りごとはありませんか?」と表示される入力エリアもそのひとつであり、近年はWebサイトに限らず、あらゆる場所でチャットボットが活用されています。
例えば、JR線・高輪ゲートウェイ駅に設置されている多言語案内サイネージにも、AI搭載型のチャットボットが使われています。
このように、今日ではチャットボットはただの自動応答プログラムではなく、精度の高いコミュニケーションを通じて利用者をナビゲートする存在として活用され始めています。
チャットボットの活用が広がっている背景
チャットボットの活用が広がっている背景には、顧客行動の多様化があります。インターネットが普及した現在、顧客が商品やサービスについて問い合わせる手段は、電話やメールに限りません。
例えば、Webサイトに設置されたチャットボットを使えば、疑問点や不明点を解消し、購入をためらう原因を取り除ける可能性があります。
さらに、人手不足や業務効率化の必要性も、チャットボットの普及を後押しする大きな要因です。有人対応には多くの人的リソースが必要ですが、企業にとって人材の確保が難しい状況が続いています。こうした中で、チャットボットの自動応答を活用すれば、限られたリソースで効率的に対応できるでしょう。
また、スマートフォンの普及やデジタル化の進展、AI技術の進歩によって、多くのビジネス課題をテクノロジーで解決できる環境が整いつつあります。このような背景から、チャットボットの導入が幅広い業界で進んでいるのです。
チャットボットの導入メリット
チャットボットには多くの導入メリットがあります。代表的なメリットは次の4つです。
問い合わせ対応工数を大幅削減
チャットボットの導入によって問い合わせ対応工数を大幅に削減できる可能性があります。チャット上での自動回答によって、有人で対応するべき問い合わせ件数を減らし、カスタマーサポート業務を効率化できるからです。
「自己解決できる軽微な問い合わせ対応に忙殺され、本来注力するべき業務に集中できない」「すでにカスタマーサポート部門の負荷が大きく、今後の事業成長に耐えられるか不安」
このような課題に直面している場合、質問に自動回答してくれるチャットボットの導入は有効な解決策になります。
▼チャットボットのほかに、FAQシステムも問い合わせ対応を効率化できるツールの1つです。それぞれの違いやメリットデメリットを詳しくご紹介していますので、併せてご利用ください。
顧客満足度の向上が期待できる
チャットボットは24時間リアルタイムで自動回答できるため、カスタマーサポートの稼働時間以外にも顧客の質問に対応できます。
また、チャットボットによって問い合わせ件数が減った場合はカスタマーサポートが一人当たりに対応できる工数が増え、より丁寧に適切なご案内ができる確率が高まります。
これにより、迅速かつ的確な対応を実現し、顧客との信頼関係を深める効果が期待できるでしょう。
コンバージョン率の改善
チャットボットの導入によって、Webサイトからのユーザー離脱を防ぐことにつながり、コンバージョン率の向上が期待できます。
顧客がWebサイトを離れる主な理由のひとつは、不明点や疑問点をその場で解決できないことです。問い合わせるのが面倒だと感じると、ページを閉じてしまうのも無理はありません。
しかし、チャットボットが設置されていれば簡単に質問でき、疑問や不明点をその場で解消できます。この手軽さが顧客の不安をやわらげ、最終的にコンバージョン率の向上につながる点は大きなメリットです。
VOC分析が可能になる
チャットボットを活用することで、VOC(Voice of Customer:顧客の声)を分析し、マーケティングや製品開発に役立てられます。
チャットボットには、顧客とのやりとりがデータとして蓄積されていきます。このデータを分析することで、「顧客がどのような疑問を持ちやすいか」「不明点が解消されたときに、コンバージョンに至る確率がどの程度高まるか」といった把握が可能です。これにより、Webサイトやランディングページの改善点を明確にできます。
さらに、顧客が不満を感じやすいポイントが見えてくると、製品開発やサービス向上に反映させることもできます。これまで埋もれがちだった顧客の声をデータとして可視化できる点は、チャットボット導入の大きなメリットといえるでしょう。
▼VOC分析ができるFAQシステム「Helpfeel」について詳しくはこちら
チャットボットを導入するデメリット
チャットボットの導入には多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。ここでは、主なデメリットとして、下記の3点を解説します。
準備・運用に手間がかかる
チャットボットの導入・運用に際しては、準備やメンテナンスの手間がかかります。導入時には、FAQやシナリオの作成が不可欠です。また、運用開始後も、定期的なメンテナンスを行い、回答の精度を高める必要があります。
これらの作業に伴う負担は、軽く見ないことが重要です。導入時に必要な準備や、運用後の体制について計画を立てることで、スムーズな運用が可能になります。適切な計画と体制の構築が、チャットボットの効果を最大化するポイントといえるでしょう。
複雑な質問には対応できない
チャットボットは、すべての問い合わせに対応できる万能なツールではありません。特に、複雑な質問や個別対応が求められる問い合わせには、有人対応やFAQページとの連携が必要になります。
さらに、前述のとおり、チャットボットの運用には事前のシナリオ設計が欠かせません。しかし、このシナリオが不十分だと、顧客からの問い合わせに対して「申し訳ございません。その質問には対応できません」といった回答が増え、顧客体験を損ねる可能性があります。
適切なシナリオ設計と、必要に応じた有人対応の体制づくりが、顧客満足度を維持するためのポイントとなります。
費用に見合った効果が得られないこともある
チャットボットの活用には、初期コストだけでなくランニングコストも含めた一定の費用がかかります。
特に、コスト削減を目的に導入する場合、削減できるコストと新たに発生するコストのバランスを慎重に検討する必要があります。新しいツールは、導入直後から想定どおりの費用対効果を発揮するとは限りません。
また、チャットボットを導入したからといって、必ずしも問い合わせ件数が減るわけではありません。シナリオ設計が不十分で顧客が期待する回答を得られなかったり、よくある疑問点を十分に把握していなかったりすると、最終的に有人対応が必要になるケースもあります。
そのため、自社の課題や導入目的を明確にし、それに合った機能や特徴を持つチャットボットを選ぶことが重要です。中長期的な予算計画を立て、どのタイミングでコスト回収が可能になるかを見通すことで、無理のない運用が実現します。適切な計画と選択が、費用対効果を最大化するポイントとなるでしょう。
チャットボットの種類は大きく2種類
チャットボットには、大きく分けて「ルールベース(シナリオ)型」と「AI型」があります。
ルールベース(シナリオ)型とは?
あらかじめ用意・設定しておいた質問と回答(シナリオ)をもとに、ロボットがユーザーに対応します。
一般的なWebサイトでよく見られるのがこのルールベース・シナリオ型です。「〇〇の使い方を知りたい」や「〇〇の申込方法を知りたい」などの選択肢から当てはまるものを選ぶと、それに紐付く回答をチャットボットが返すという仕組みです。
基本的には「あらかじめ登録されている質問」にしか対応できないため、質問と回答が定型または一問一答で事足りる場合に重宝します。
後述するAI型と比べて仕組みがシンプルなので、構築が容易で、コストを抑えて導入できます。
AI型とは?
AIを搭載したチャットボットです。「人工知能型」「機械学習型」とも呼ばれます。
対応を繰り返すことでデータを蓄積・学習し、ルールベース(シナリオ)型に比べてより複雑な質問に対応したり、回答の精度を高めたりできるのが特徴です。冒頭で挙げた、駅で採用されている案内サイネージや、iPhoneのSiriといった「AIアシスタント」もAI型チャットボットの応用例です。
ルールベース(シナリオ)型より自然で複雑な対話が可能ですが、導入・運用コストがかかります。また、AIは学習を経てようやく複雑な対話ができるようになるので、学習するまでの対応精度は高くありません。あらかじめ教師データを用いて学習を行った上で、実際の運用を通じて学習データを蓄積しながら精度を向上させていく必要があります。
チャットボットを選ぶ際にチェックすべき4つのこと
チャットボットは、さまざまなベンダーから提供されています。自社に最適なチャットボットを選ぶためには、下記の4点を確認することが重要です。
1. 適切な費用対効果を見込めるか?
「せっかく導入したのに思ったほどの効果が出なかった」
「チャットボットの利用料金に効果が見合っていない」
チャットボット導入後、このような状況に陥らないようにするためには、費用対効果の調査が不可欠です。
チャットボット導入で月間何時間分の工数削減になるか、生産性にどれくらい差が出るのか、有人対応すべき問い合わせ件数を何割削減できるかなどを試算しておく必要があります。導入費用と照らし合わせた上で、費用対効果に見合ったチャットボットを選定しましょう。
2. 運用できる体制が整っているか?
前述のとおり、チャットボットの導入にあたってはシナリオ作成をはじめ、さまざまな専門的な知識が必要です。社内にチャットボットの導入経験があるメンバーがいない場合には外部の専門家の手を借りることになります。
チャットボットを提供しているベンダーの中には、シナリオの作成や、Webサイトやアプリへの導入をサポートしてくれるベンダーもあります。自社にチャットボット導入の経験者がいない場合は、こうしたサポートを受けられるベンダーや代理店のチャットボットを選ぶと安心です。
3. 必要な機能を備えているか?
チャットボットによって機能がさまざまなので、導入しようとしているツールが自社の求める機能を備えているか、事前に確認しておく必要があります。
例えば、問い合わせ対応をした後に、その顧客データを既存の顧客管理システムに連携させたいとします。その実現には、外部サービスやアプリケーションとAPI連携できる機能が必要です。顧客対応業務全体のフローを俯瞰した上で、必要な機能を洗い出しておきましょう。
4. 導入後のサポート体制が整っているか
「シナリオの設定方法がわからない」
「シナリオを動かしてみたら、予期せぬ処理が発生してしまった」
「Webサイト上で適切にチャットボットウィンドウが表示されない」
「CRM(顧客関係管理)ツールとのデータ連携を正常に実行できない」
チャットボット導入後には、このようにさまざまなトラブルが発生する可能性があります。そのため、ベンダーや代理店側のサポート体制が整っていることは非常に重要です。もし、「導入支援は行うが、導入以降のサポートは対象外」であれば、問題解決を自社で行わなければなりません。
ツール選定の際には、希望通りのサポートが受けられるか、ヘルプデスクやサポート体制が整っているかにも注目しましょう。例えば、海外製ツールの場合、「サポートは一切対応していない」「サポートはしているが日本語には対応していない」といったことが珍しくありません。
サポートに対応している場合でも、「月に◯回まで対応可能」「相談1回ごとの従量課金制」「メール相談のみ」「無料でいつでもサポート」など、ベンダーによって対応が違うので注意が必要です。
落とし穴として「導入後もサポートします」と言っていたにもかかわらず、コールセンターにまったくつながらずサポートを受けられないこともあるので、ツール比較サイトで口コミを確認しておくと安心です。
チャットボット以外に問い合わせ工数を削減する方法はある?
チャットボットはテキストで会話するだけの単純なツールに感じますが、実際の仕組みは複雑で、導入には費用も手間もかかります。
チャットボットの導入を検討している場合、その多くが問い合わせ対応にまつわる業務の効率化、自己解決を促せる軽微な問い合わせの削減といった課題を抱えていると考えられます。問い合わせ対応の工数を削減する手段はチャットボットだけなのでしょうか?
実はチャットボット以外にも多くの手段があります。その中でも、王道なのがFAQシステム(FAQツール)です。
FAQシステム(FAQツール)とは?
FAQは「Frequently Asked Questions」の頭文字を取った言葉で、一般的には「よくある質問」と訳されます。そして、質問をQ&A形式にまとめたページのことをFAQサイトやFAQページと呼び、FAQサイトに蓄積された情報を顧客にとって使いやすくするための橋渡しを担うのがFAQシステム(FAQツール)です。
Q&Aを羅列しただけのFAQサイトは、顧客にとっては必要な情報を探しにくく、使いづらいのが実情です。FAQシステムは顧客の意図を汲み取り、顧客が困ったときにその場で自己解決を促すことで、顧客の目的達成を支援し、満足度を向上させます。さらに、カスタマーサポート担当者が本来時間をかけて対応すべき問い合わせに人的リソースを集中させられます。
チャットボットと何が違う?
チャットボットとは共通点もありますが、FAQシステムは導入・運用が非常に簡単であることが魅力です。FAQシステムはチャットボットと異なり、導入に専門的な知識を必要としません。また、UI(インターフェース)も直感的であることが多く、カスタマーサポート担当者など非IT人材でも簡単に操作できます。
▼FAQシステムとチャットボットの違いや共通点は、下記のコラムで詳しく解説しているのであわせてご一読ください。
問い合わせ対応の工数削減には、チャットボット以外にも選択肢があります。中でもFAQシステムは「操作が簡単」「比較的短時間で構築可能」「専門知識不要」なため、ITツール初心者でも安心です。
問い合わせ対応の工数削減にお悩みの企業担当者様は、FAQシステムも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
「FAQシステムについてさらに知りたい」
「問い合わせ対応工数を削減したい」
「カスタマーサポート業務の効率化/負担軽減が課題である」
このようにお考えの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。