チャットボットとは?
チャットボットとは、パソコンやスマートフォンの画面上で、ユーザーが入力したテキストや音声に対し、自動的に回答するプログラムのこと。その名前は、「チャット」と「ロボット」を組み合わせたことに由来しています。
チャットボットは、回答を作成する仕組みによって種類が分かれます。主な種類は、下記の4つです。
- ルールベース(シナリオ)型
- あらかじめシナリオを用意しておき、相手の選択肢に合わせた回答を表示する。
- 辞書型
- あらかじめ質問と回答を登録しておき、相手が入力したテキスト内のキーワードをもとに適切な回答を表示する。
- ハイブリッド型
- ルールベース(シナリオ)型と辞書型の両方の機能を持つもの。選択肢の提示や事前に登録した辞書からの回答が可能。
- AI型
- 回答に必要な情報を学習したAIが、入力されたテキストの解釈や回答の作成・提示をする。
例えば、金融機関では、チャットボットが幅広く活用されています。主な活用例として、口座情報の照会や手続き案内、ローン審査状況の確認などが挙げられます。
これらの対応により、顧客はわざわざ店舗に足を運ぶことなく、必要な情報を素早く得ることが可能です。
▼チャットボットの基本情報についてはこちらの記事でも詳しく紹介していますので、併せてご覧ください。
チャットボットを社内外の対応業務に導入するメリット
顧客や社員などの対応業務にチャットボットを導入することで、主に下記5つのメリットが得られます。<チャットボットを導入する主なメリット>
- 対応遅れを防げる:自動応答を取り入れることで、限られた人員でより多くの問い合わせに対応できる
- 24時間365日対応が可能:営業時間外や会社の休日も、常に対応可能な体制を構築できる
- 担当者の負担軽減と人件費削減:すべての問い合わせにオペレーターが対応する必要がなくなる
- 商品・サービスの改善に役立つ:質問内容をデータとして蓄積・活用できる
- その他、社内業務の効率化にも寄与:教育コンテンツやヘルプデスクとしての活用も可能
これらのメリットを活かすことで、企業全体の業務効率化と顧客満足度の向上につながります。
また、従業員の負担を軽減し、より戦略的な業務に注力できる環境を整えることが可能です。
チャットボットの導入手順
チャットボットを社内外の対応業務に導入する際には、下記の手順に沿って進めるとスムーズです。それぞれのステップで行うべきポイントについて解説します。
1. 導入目的と導入後の目標を明確にする
まずは、チャットボットを導入する目的と、どのような成果を目指すのかを明確にしましょう。チャットボットの用途や利用シーンは多岐にわたるため、具体的な目標を設定することが重要です。チャットボットの導入目的と導入後の目標の一例は、下記のとおりです。
<チャットボットの導入目的の例>
- 顧客からのよくある問い合わせを自動化し、オペレーターの負担を軽減する
- Webサイト上で製品やサービスの案内を行い、顧客体験を向上させる
- 社内の問い合わせ対応を効率化し、従業員の作業時間を削減する
<チャットボット導入後の目標の例>
- 問い合わせ対応の工数を30%削減する
- 顧客の自己解決率を50%以上に向上させる
- 新入社員の教育にかかる時間を半減する
チャットボットはサービスごとに特徴や機能が異なるため、目的や目標が曖昧なままでは、必要な機能を見極められない可能性があります。その結果、期待した効果が得られないことも考えられます。
導入ありきで進めるのではなく、まずは「なぜ導入するのか」「何を目指すのか」を具体的に定めることが大切です。
2. 設置場所を決定する
次に、チャットボットを設置する場所を決めます。チャットボットの主な設置場所として、下記が挙げられます。<チャットボットの主な設置場所>
- Webサイト
- SNS(LINE、X、Facebookなど)
- 社内用チャットツール(Slack、Microsoft Teamsなど)
設置場所を検討する際は、費用や実装工数といった自社の都合だけでなく、ユーザーの視点を考慮することが重要です。ユーザーにとって使いにくいチャネルに設置してしまうと、せっかく導入したチャットボットが活用されない可能性もあります。
ターゲットユーザーが普段どのチャネルをよく利用しているかを分析し、最も親しみやすく利用しやすいチャネルを選ぶことがポイントです。ユーザー目線で設置場所を選ぶことで、効果的な運用が実現します。
3. 求める機能を洗い出す
チャットボットの導入目的や目標、設置するチャネルを踏まえ、必要な機能を具体的に洗い出します。チャットボットには、テキストによるシンプルなやりとりだけでなく、FAQ検索、商品提案、レポート、外部システム連携など、多様な機能を備えたものもあります。
まずは、求める機能をリストアップし、導入目的に合った機能を明確にすることが重要です。この段階で必要な機能を絞り込むことで、後の運用体制の構築やチャットボットの選定がスムーズになります。
注意すべきは、各チャットボットの機能に合わせて目的を後付けするのではなく、自社のニーズにもとづいて必要な機能を優先的に検討すること。目的に沿った機能の選定が、導入の成功につながります。
4. 運用担当者と体制を決定する
続いて、チャットボットの運用・管理を担当するメンバーを選出し、各自の責任範囲を明確にします。導入後のメンテナンスや効果測定も担当者の役割となるため、事前にしっかりと体制を整えておくことが重要です。
チャットボットは導入がゴールではなく、運用を進める中で利用状況や導入効果を分析し、改善を繰り返していく必要があります。そのため、導入時のシナリオ作成やFAQの準備から、運用・管理までを一貫して担える人材を選ぶのが理想的です。
また、運用担当者がチャットボットの管理業務に集中しやすい環境を整えることも大切です。適切な体制を構築することで、チャットボットの導入効果を最大限に引き出せるでしょう。
5. チャットボットを比較検討する
導入目的や求める機能をもとに、さまざまなチャットボットを比較検討します。拡張性なども比較し、自社のニーズに最適なチャットボットを選ぶことが重要です。
例えば、チャットボットによっては、AI対応や多言語対応、FAQシステムとの連携機能を備えているものがあります。特に優先度の高い機能を搭載したチャットボットを選ぶとスムーズです。
また、チャットボットは、費用面の検討も欠かせません。導入費用を抑えるだけでなく、中長期的な運用を見据え、月額費用も考慮して選定しましょう。
6.ベンダーに相談し、無料トライアルを試す
チャットボットの候補が絞り込めたら、ベンダーに問い合わせてみましょう。可能であれば、無料トライアルを利用できるか相談するのがおすすめです。実際にチャットボットを試すことで、操作感や機能性が自社に合っているかを確認しやすくなります。
トライアル期間中に確認すべき点は、下記のとおりです。
<チャットボットのトライアル期間で確認すべきポイント>
- 管理画面の見やすさ
- シナリオの登録や更新のしやすさ
- 応答の精度や速度
また、チャットボットによっては、契約プランごとに利用できる機能が異なります。そのため、実際に契約を検討しているプランで、トライアルを行うことが大切です。これにより、導入後のミスマッチを防ぎやすくなります。
7.FAQやシナリオを作成する
チャットボットが決まったら、いよいよ導入準備に取りかかります。ユーザーの質問に正確かつ迅速に対応するために、よくある質問を整理し、顧客の行動や心理を考慮してシナリオを構築することが重要です。
ただし、想定される質問の範囲や項目数が多い場合、シナリオ作成に時間と労力がかかることもあります。そのため、既存のWebサイトや社内ポータルなどに掲載されているFAQがあれば、それを有効活用するのがおすすめです。既存のリソースを活かすことで、効率的にシナリオ作成を進めることができるでしょう。
8.テスト運用を行い、改善点を見つける
チャットボットをリリースする前に、実際のユーザーを想定したテスト運用を行う必要があります。チャットボットのシナリオを最初から完璧に構築するのは難しいため、テストを通じてFAQやシナリオの内容を随時見直し、ブラッシュアップすることが重要です。
本格運用を開始すると、予想外の質問や動作が発生するケースもあります。そのため、できる限り多くのパターンを想定してテストを実施し、改善点を洗い出すことが大切です。
また、過去の問い合わせ履歴を参照することで、足りないFAQや適切な回答が得られにくい質問を特定できるので、効率的な改善ができるでしょう。
9.運用体制の最終確認とトレーニングを実施する
テスト運用で見つかった課題が解決したら、本格運用に向けて体制を最終確認します。担当者やサポートチームに、チャットボットの操作方法や管理手順をしっかりと教育し、スムーズな運用を実現するためのトレーニングを実施しましょう。
チャットボットを導入する際には、担当者が実際に操作しながら使い方を習得することが重要です。マニュアルやレクチャーも役立ちますが、実際に手を動かして機能を確認することで理解が深まり、現場での活用がスムーズになります。実践的なトレーニングを通じて、運用体制をしっかり整えることが大切です。
10.本格運用と効果測定を開始する
チャットボットの本格運用を開始したら、ユーザーからのフィードバックやデータを定期的に確認し、効果を検証します。導入時に設定した目標をもとに成果を測定し、必要に応じて改善を繰り返すことが大切です。
特に、ユーザーが離脱しやすいポイントや、低評価のフィードバックが多い箇所は迅速な対応が求められます。データを定量的に確認するだけでなく、その背景にあるユーザーの心理や行動を分析し、具体的な改善策を取り入れることがポイントです。
こうした継続的な見直しと改善が、チャットボットの効果を最大限に引き出します。
チャットボットの利用にかかる費用の内訳
チャットボットをビジネスに導入する際には、主に「導入費用」と「月額費用」が発生します。ここでは、それぞれの費用がどういうものか、詳しく見ていきましょう。
導入費用
導入費用はチャットボットで問い合わせを受けられる状態に準備するための費用で、主に利用環境の構築やシナリオ設計などの作業が対象です。
費用相場は、チャットボットの種類によって異なります。ルールベース(シナリオ)型や辞書型は比較的費用が安く、導入費用は数万円程度が相場です。サービスによっては、導入費用が無料のものもあります。
一方、特殊な機能を実装したい場合やAI型チャットボットを導入する場合、導入費用は20万円から100万円が相場です。
月額費用
チャットボットはクラウドサービスとして提供されるケースが多いため、導入費用の他に月額費用が発生します。こちらも選ぶサービスや提供される機能によって金額が変わりますが、ルールベース(シナリオ)型で月額数万円、AI型で月額10万円から30万円程度が相場です。
ただし、高性能なチャットボットサービスはルールベース(シナリオ)型でも月額10万円を超えるものがあり、AI型になると月額100万円以上の費用がかかるケースもあります。
月額費用は毎月発生するため、「コストパフォーマンスの高いサービスを選ぶ」「必要以上の性能を求めない」などの点を意識しましょう。
なお、チャットボットの利用には、「初期サポート費用」や「運用コンサルティング費用」などがかかる場合もあります。
チャットボットの費用についての詳しい解説は、下記のコラムをご覧ください。
チャットボットを導入する際に知っておきたい注意点
チャットボットはメリットの多いツールですが、いくつか注意点もあります。注意点を把握しないままチャットボットの導入を進めると、十分に活用しきれない可能性があるため注意しましょう。
ここでは、チャットボットを導入する際に知っておきたい注意点を4つ紹介します。
導入に向けた準備が必要となる
チャットボットは、導入すればすぐに使い始められるというわけではありません。問い合わせに対して適切な回答を提示するには、想定される質問と回答をまとめてシナリオを設計するなど、事前準備が必要です。
質問と回答の想定が不十分では、実際に問い合わせの受け付けを開始しても相手が求める回答を提示できません。せっかくチャットボットを導入しても疑問や困りごとを解決できなければ意味がないため、導入時には入念な準備が必要になります。
すべての問い合わせにチャットボットが対応できるわけではない
シナリオ型や辞書型のチャットボットは、あらかじめ用意された質問やシナリオにしか対応できません。AI型はデータを学習することで臨機応変な回答が可能になりますが、学習する時間やデータが少ないと精度の高い回答は困難なケースもあります。
いずれの場合も、イレギュラーな問い合わせや、状況を細かく聞き取る必要がある問い合わせもあり、チャットボットだけで全ての問い合わせに対応できるわけではありません。「チャットボットを導入すれば問い合わせ対応を完全自動化できる」とは考えず、状況に応じて有人対応が必要となることを前提として導入を進めてください。
導入や運営にコストがかかる
先述の通り、チャットボットを導入するには念入りな準備が必要です。想定される質問・回答の洗い出しやシナリオの設定など、人手や時間などのコストをかけなければなりません。
加えて、導入費用や月額費用などのコストもかかります。具体的な金額はチャットボットの種類や契約するサービスによって異なりますが、高いものでは導入費用と月額費用のいずれも100万円を超えるケースもあります。
定期的な分析と改善が必要となる
どれだけ念入りに準備をしたとしても、導入直後から完璧に回答できるわけではありません。チャットボットは導入して終わりではなく、運用しながら改善を重ねていくことが大切です。
蓄積したデータを定期的に分析し、質問・回答の追加や更新、シナリオの修正などを行いましょう。利用者からの意見を集めて反映させるのも効果的です。定期的な分析と改善を重ね、回答の精度を高めたり対応できる問い合わせの幅を広げたりして、より利便性の高いチャットボットに育てていく必要があります。
企業や自治体のチャットボットの導入事例
チャットボットの導入を検討しているなら、実際にチャットボットがどのように活用されているのかも気になるポイントでしょう。
チャットボットの導入事例を2件紹介しますので、参考にしてください。
JAL
JALは公式サイトにAI型のチャットボットを導入し、2022年9月末から英語版のチャット自動応答サービスの提供を開始しました。導入目的は、入国制限や渡航制限が緩和されたことで、増加が見込まれる海外からの問い合わせに対応するためです。チャットボットの活用によって、混雑時や受付時間外でも24時間問い合わせに対応できるようになりました。
運行情報の確認やチケットの購入といった定型的な問い合わせから、検疫体制や入国制限など適宜変化する情報まで、自動応答が可能です。高度なAI型チャットボットによって、英語圏のネイティブ表現や表記揺れ、複数の解釈が可能な言い回しなどにも適切に対応できています。
参考:PR TIMES「JAL、世界26地域・Webサイト47ページに英語版AIチャットボットを一斉リリース ~海外入出国緩和に合わせて最短2か月で導入、回答範囲カバー率92%へ」
東京都
東京都は、賃貸住宅や不動産取引について24時間365日問い合わせができる賃貸住宅チャットボットサービスを提供しています。チャットボットを導入したのは、サービスの品質をより向上させるためです。
従来、賃貸住宅のトラブル防止のために専門の電話相談窓口や予約制の対面窓口を用意していましたが、これらは受付時間が都庁の開庁日に左右されます。土日祝日や夜間などの時間帯は、対応できません。
賃貸住宅チャットボットサービスは、都庁総合ホームページから誰でも利用できます。チャットボットによっていつでも問い合わせに対応できるようになり、利用者の利便性が向上しました。
問い合わせ対応にはFAQも活用しよう
チャットボットを導入することで利用者の利便性を高められるだけでなく、担当者の負担軽減など企業側にもメリットがあります。「問い合わせが多く対応漏れが起きている」など課題を感じている場合は、チャットボットの導入を検討してみましょう。
ただし、チャットボットの導入で全ての問題を解決できるとは限りません。「うまくシナリオが作動しない」「チューニングがうまくいかない」など、チャットボットの運用中に課題が出てくるケースもあります。
状況に応じて、チャットボットとFAQの併用も検討してみてください。FAQシステムの『Helpfeel』は、「相手の意図を予測する」独自技術によって利用者に最適な回答を提示できます。チャットボットの構築や運用改善の提案も可能なので、問い合わせ対応に課題を感じている人はぜひお気軽にご相談ください。