顧客インサイトとは
「顧客インサイト」とは、顧客が自分で自覚していない本音や直感のことで、モノやサービスの購入に至った本質的な理由を指します。ここでは、顧客インサイトの意味と、顧客ニーズとの違いについて解説します。
顧客インサイトの意味
顧客インサイトとは、表面的な感情に隠された、顧客が自覚していない直感や本音のことです。例えば、コンビニエンスストアでホットスナックを買った顧客に理由を聞くと、「何となく食べたくなったから」「揚げ物が好きだから」と、本人が認識している感情や欲求が語られる場合がほとんどです。
しかし、この感情や欲求の奥には「たまに食べると、ちょっとしたぜいたく感を味わえ、気分が上がるから」「一日の終わりに高カロリーのものを食べて、背徳感も感じながらも多幸感を味わいたい」など、購買に至った本質的な理由、すなわち顧客インサイトが隠れています。
このように、顧客インサイトは意識の裏にある無意識的かつ本質的な欲求のため、当事者も自覚していない場合が大半です。
顧客ニーズとの違い
顧客インサイトと混同されやすいものに、「顧客ニーズ」があります。
顧客ニーズは、顧客が求める「欲求」や「必要性」を指し、「顕在的ニーズ」と「潜在的ニーズ」に分けられます。顕在的ニーズは顧客自身が自覚しているもので、ヒアリングや調査で直接把握できるのが特徴です。一方で潜在的ニーズは、顧客が自覚していないものの、ある程度質問や観察を通じて引き出せる可能性があります。
これに対して、顧客インサイトは顧客ニーズよりもさらに深いレベルにあり、顧客の無意識に隠れた購買行動の動機を意味します。インサイトは、本人ですら認識できていない心の奥底に存在し、簡単には発見できません。そのため、顧客インサイトを掘り下げて活用することは、商品やサービスの差別化や新しい価値の創造につながります。
顧客インサイトの見つけ方と活用方法5ステップ
顧客インサイトを見つけて活用するには、以下の5つのステップで進めていきます。
- Step1. データを収集する
- Step2. 収集したデータを分析する
- Step3. 分析したデータから顧客インサイトを発掘する
- Step4. 顧客インサイトを検証する
- Step5. 企業活動に活用する
具体的な手順を、詳しく確認していきましょう。
Step1. データを収集する
顧客インサイトを発掘するには、まず調査を行い、購買者のデータを集めます。このとき、顧客の無意識に潜む深い動機や価値観を探るための手がかりを得るための質問を準備しましょう。
具体的には、アンケートやインタビュー・行動観察・購買履歴・SNS上の投稿・レビューなど、顧客の行動や言葉に表れるデータを幅広く収集していきます。
重要なのは、表面的な行動や発言の背後に隠れた思いや感情を見つけるため、顧客が「なぜその選択をしたのか」を深掘りできるデータを集めることです。例えば、単に「この商品が便利」と答える理由の裏には、「自分の時間を効率的に使いたい」というインサイトが隠れている可能性があります。
観察記録や自由回答などに着目して、顧客の無意識にアプローチする基礎を築いていくことが大切です。
Step2. 収集したデータを分析する
収集したデータを分析する段階では、顧客の無意識に潜むインサイトを明らかにすることを目指します。このとき、顧客満足度や購買履歴などの定量データと、アンケートや行動観察から得られる定性データを組み合わせて分析してください。
数値だけでは表層的な理解にとどまる可能性があるため、顧客の本音に近づくために、定量データで全体の傾向を把握し、定性データでその裏にある理由や感情を掘り下げていきます。
例えば、リピート率が高い顧客が「なぜその商品を選ぶのか」という理由を定性データで探り、その仮説を定量データで裏付けるといったアプローチが有効です。また、性別や年齢、趣味などで顧客をセグメント化し、それぞれのグループに共通する行動や価値観を見いだせば、さらに深いインサイトを得られます。
顧客インサイトを分析する段階では、仮説の検証を繰り返しながら、顧客の購買行動や選択の根底にある動機を見つけ出すことを意識しましょう。
Step3. 分析したデータから顧客インサイトを発掘する
分析したデータをもとに、顧客の行動や感情を引き起こした根本的な動機や原因を探り、顧客インサイトを明確にします。発掘したインサイトは、得られたデータと必ずしも論理的に一致するとは限りません。消費者自身も気付いていない深層心理にアプローチする必要があるためです。
インタビューやアンケートの回答は表面的な内容にとどまることが多く、そこから顧客の本音を引き出すのは容易ではないでしょう。分析結果を踏まえつつ、顧客が明言しない潜在的な欲求や価値観を導き出せるかが、重要です。
顧客インサイトを発掘するときには、共感マップやカスタマージャーニーマップなどのフレームワークを活用するのが効果的です。顧客視点でデータを整理すれば、新たな気付きを得られるでしょう。固定観念に縛られず、柔軟な発想で仮説を立ててください。
仮説が構築できたら、さらに顧客に確認したり、他のデータと組み合わせて検証を重ねたりして、顧客インサイトの精度を高めていきましょう。
Step4. 顧客インサイトを検証する
見つけた顧客インサイトが正しいかどうかを確認する検証プロセスは、顧客の実際の購買行動や反応と照らし合わせる重要なステップです。
検証方法には、新たな調査を実施したり、インタビューやフィードバックを収集するなどがあります。また、チーム内で議論し、複数の視点から顧客インサイトの妥当性を検討したり、マーケティングの専門家に相談して意見を求めることも効果的です。
もしインサイトが消費者の行動や心理と一致しない場合、そのインサイトは破棄し、再度データ分析に立ち戻る必要があります。検証のプロセスを繰り返し実施すれば、正確で効果的なインサイトを見つけ出せるでしょう。
Step5. 企業活動に活用する
顧客インサイトの検証が終わったら、いよいよ実際にマーケティングに活用します。具体的には、商品やサービスのターゲット像や商品の方向性、広告の見直しなどです。
マーケティングに顧客インサイトを用いれば、欲求や悩みが把握できるため、消費者との関係構築がしやすくなります。
また、顧客インサイトは、継続して活用することが大切です。時期が変われば流行や価値観も変化し、それにつれ顧客インサイトも変化して活用の効果も変わります。1つのインサイトのみを考えるのではなく、常に検証を繰り返し、現状に合ったインサイトに更新しながら活用していってください。
顧客インサイトの収集方法5つ
顧客インサイトの主な収集方法には、以下の5つがあります。
- インタビュー・アンケート
- 行動観察調査
- ソーシャルリスニング(SNS)分析
- 投影法
- MROC
それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、場合によって使い分けたり、組み合わせたりして情報を集めましょう。
インタビュー・アンケート
顧客の声を直接集められる方法として、アンケートやインタビューがあります。事前に用意した設問に回答してもらうため、低コストで回答が得られるのが特徴です。また、アンケートでは質問紙を用いて大量に回答を集められる他、インタビューでは時間がかかる代わりに直接顧客と対話するので、顧客の本音を引き出しやすいという特徴があります。
しかし、顧客が常に本音を言うわけではなく、実際の言動と本音が食い違っていることも少なくありません。また、インタビューでは実施者やその場の状況によって結果が変わる可能性があるため、条件を統一して行ってください。
行動観察調査
行動観察調査は、対象者が実際に行っている行動を観察し、その過程から事実やデータを収集する手法です。この方法では、言葉だけでは把握しにくい行動の傾向や習慣、好みを客観的に理解することが可能です。
例えば、店舗内やウェブサイト上で顧客がどのように行動しているかを観察することで、購買の流れや商品選びの基準、反応などを詳しく分析できます。さらに、顧客の自宅や職場を訪問して、商品やサービスの使い方や利用時の様子を直接観察するケースもあるでしょう。
このような調査を通じて、顧客の日常的な行動から重要な洞察を得られるため、顧客の本質的なニーズを探るのに非常に効果的な手段です。
ソーシャルリスニング(SNS)分析
顧客インサイトを得る手法の1つとして、ソーシャルリスニング(SNS分析)が挙げられます。ソーシャルメディア上で交わされる投稿や会話をモニタリングし、顧客の意見・感情・嗜好(しこう)などを分析する分析方法です。
ソーシャルメディアの情報は、多くの場合、匿名で自発的に発信されているため、顧客の本音やリアルな反応を把握しやすい点が大きな利点です。投稿内容を分析し、企業の商品やサービスに対する評価や、ブランドのイメージを的確に理解することが可能です。
しかし、大量の投稿から必要な情報を抽出し分析することから、多くの時間やコストがかかります。また、SNSは匿名性が高く自由度が高い分不確実な情報も多く、中には思い込みや憶測に基づく意見もあるので、適切な情報を見分けるのが困難である点にも注意が必要です。
投影法
投影法は、対象者の無意識に隠れた感情や心理を引き出すための調査手法です。未完成の文章や抽象的な図形、写真などを提示し、対象者の本音を連想や比喩を通じて探ります。直接的な回答が難しい感情も、投影法を使えば本質に迫ることが可能です。
メリットは、回答者が意図的に回答を操作しにくく、虚偽や打算的な回答を防げる点です。また、無意識に基づく回答を得やすいため、インサイトの特定に効果的でしょう。一方で、結果の解釈には専門的なスキルが求められる点には注意が必要です。
MROC
MROC(Marketing Research Online Community)は、特定のテーマを設けたオンラインコミュニティー内で、参加者同士の対話や投稿を通じて情報を収集する手法です。一定期間、対象者が自由に意見を交わすことで、調査者が顧客の「本音」や深層心理を把握しやすくなります。
MROCのメリットは、参加者がリラックスした環境で自発的に意見を発信するので、アンケートやインタビューでは得られない深い洞察が得られる点です。また、対話の中で新たなアイデアや視点が生まれる可能性も少なくありません。一方で、参加者のモチベーション維持や、投稿内容を適切に分析するためのリソース確保が課題となることもあります。
見つけた顧客インサイトを活用する方法
発掘した顧客インサイトを活用することで、自社の商品・サービスをより効果的に広め、新規顧客の獲得につなげられます。
代表的な顧客インサイトの活用方法は、以下の2つです。
- セグメント別の顧客アプローチ
- 商品・サービスの改善
それぞれについて、詳しく解説します。
セグメント別の顧客アプローチ
顧客インサイトを活用して顧客をセグメント化することで、より顧客一人一人に対応したマーケティング施策の展開が可能です。各セグメントの特徴に応じたメッセージやコンテンツを作成し、メール・LINE・SMS・プッシュ通知などのチャネルを活用してアプローチすることで、クロスセルやアップセルや再購入の促進が期待できます。
例えば、顧客インサイトで得たデータを基に、それぞれのニーズに応じた情報や特典を提供して顧客の満足度を高め、関係性を深めることができます。これにより、顧客のロイヤルティー向上と持続的な売上拡大が見込めるでしょう。
商品・サービスの改善
顧客インサイトを活用することで、顧客の行動パターンや好みを深く理解し、表には出てこないニーズや課題を発見できます。洞察を基に、新しい商品やサービスの発想を生み出すことで、市場での競争優位を築ける可能性があります。
さらに、顧客インサイトを分析してフィードバックや満足度のデータを活用すれば、今の商品の改善ポイントを明らかにすることも可能です。例えば、製品の機能性や使いやすさ、デザインを見直すことで、顧客の期待に応える商品へと改良できるでしょう。
顧客インサイトを活用すれば、顧客の潜在的な要望に応えられる商品やサービスを提供でき、ブランドの信頼性向上や顧客満足度の向上が図れます。
インサイトを見つけるためのデータ収集はFAQからも可能
顧客インサイトの発掘に必要なデータ収集には、FAQシステム「Helpfeel」の活用がおすすめです。Helpfeelは、ユーザーが求める情報を迅速に検索できる高精度なFAQシステムで、検索ログやよく閲覧されている回答などを分析することで、顧客の隠れたニーズや課題を発見できます。
例えば、頻繁に検索されるキーワードや未解決の問い合わせ内容を解析すれば、顧客が本当に知りたい情報や抱えている悩みを明確化できるVOC分析機能を備えています。
Helpfeelを導入すれば、顧客の声を効率的に収集でき、顧客インサイトを導き出すプロセスを大幅に改善できます。データドリブンな施策で顧客体験を向上させる強力なツールとして、Helpfeelの導入をぜひ検討してみてください。
まとめ:インサイトを発掘してマーケティングに活用しよう
本記事では、顧客インサイトとは何かということから、顧客インサイトの見つけ方や分析に必要なデータの収集方法、顧客インサイトの活用方法を解説しました。
顧客行動の裏にある深層心理を掘り下げることは、顧客満足度の向上や競争優位性の確立につながります。また、共感マップやカスタマージャーニーマップなどのフレームワークを活用すれば、より精度の高いインサイトを見つけることが可能です。
安定した顧客の獲得や新規顧客の開拓のため、ぜひ顧客インサイトを発掘してマーケティングに活用しましょう。