リテンション率とは?
リテンション率とは、新規顧客が一定の期間内に再びサービスを利用した割合を示す言葉です。
マーケティング業界では、サブスクリプションサービスやアプリなどで「顧客の維持率」を測定するために用いられており、英語で「保持・維持」を意味する「retention」が語源となっています。
リテンション率自体は、人事領域で社員の離職率や定着率を測る指標として活用されることもあります。
リテンション率の基本
「リテンション率が高い=顧客満足度が高い」と判断できるため、リテンション率はウェブサービスやアプリの現状分析に欠かせない数値といえます。
リテンション率の対義語は「解約率(チャーンレート)」です。リテンション率が「どれだけの顧客が継続利用しているか」を示すのに対して、解約率は「どれだけの顧客が解約したか」を示します。
リテンション率は顧客のサービス維持状況を把握するのに大切な指標ですが、同時に解約率もサービス改善に必要な数値です。
リテンション率の計算方法
リテンション率は、下記の計算式で算出が可能です。
- 継続顧客数÷新規顧客数×100
例えば、ある月の既存顧客数が500人で、そのうち翌月も継続して利用している顧客が400人だったケースでは、計算式に当てはめると以下のようになります。
- 400÷500×100=80%
この場合、リテンション率は80%と計算できます。
自社のリテンション率に必要なデータ
自社のリテンション率を把握するためには、以下3つの数値が必要です。
- 計測開始時のユーザー数
- 計測終了時のユーザー数
- 計測期間中の新規ユーザー数
例えば、2024年12月1日〜2025年1月31日までの2カ月間におけるリテンション率を知りたいとします。その場合は、2024年12月1日時点のユーザー数と2025年1月31日時点のユーザー数、2024年12月1日〜2025年1月31日の新規ユーザー数の3つが必要です。
「計測期間中の新規ユーザー数-計測終了時のユーザー数」により、継続ユーザーの正確な数値を出すことができます。
リテンション率低下の原因
リテンション率の低下は、売り上げ減少や顧客ロイヤルティー低下につながってしまいます。リテンション率が下がる原因は、主に以下4つが考えられます。
- 商品・サービスの品質低下で顧客の期待に応えられない場合
- 競合との価格差や値上げによる影響
- 競合他社の出現で魅力的な代替サービスの登場
- カスタマーサポートの質の低下
改善策を講じる前にどのような原因があるのか、把握しましょう。
商品・サービスの品質低下で顧客の期待に応えられない場合
競争激化により他社サービスの方がサービス内容が魅力的だった場合、リテンション率が下がる可能性があります。リテンション率が低下した場合には、競合他社のサービス内容に変化がなかったかを重点的に確認してください。
また、ユーザーが期待した機能・価値が適切に提供されているかも大切です。利用者アンケートなどを通して、ユーザーが抱えている課題を把握し、課題に対する解決策をスピーディーに実行することが重要です。
リテンション率が下がった場合は、対象期間内に「機能のエラー・不具合」「システムダウン」など、ユーザー満足度を下げる要因がなかったかを分析しましょう。
競合との価格差や値上げによる影響
サービス内容だけではなく、競合他社の料金設定に変更がなかったか、また直近自社サービスで料金の値上げを実施していないかどうかの確認も重要です。
競合他社が魅力的なキャンペーンを実施している場合、サービス自体の料金体系が変わっていなくてもリテンション率が下がる可能性があります。
また、AIの登場により、競合他社との料金比較は容易になりました。競合他社に比べて著しく料金が高くなっていないか、料金に見合ったサービスを提供できているか、しっかりと分析することが大切です。
競合他社の出現で魅力的な代替サービスの登場
新規の競合他社の出現により、リテンション率が下がってしまうケースもあります。
例えば、大手企業が参入してきたケースです。「料金」「サービス」の面で互角以上であれば、安心感から大手にユーザーが流れてしまう可能性もあります。
競合他社にはない明確な強みを持っていれば、大手の新規参入でもリテンション率の低下を防ぐことができるでしょう。常に市場状況を適切に把握し、一歩先を見て機能の実装やサービス改善に励むことが重要です。
カスタマーサポートの質の低下
カスタマーサポートの質が低い場合、リテンション率が低下してしまうリスクがあります。
具体的には、「不具合への対応が遅い」「質問に対する回答が遅い」「対応が不適切」「メルマガや通知などが多すぎる」などが考えられます。
BtoCビジネスでは、ユーザーの意見がサービスをより良いものにするために重要です。ユーザーの意見が届きづらい、届いても対応が遅かったり不十分だったりすると、ユーザーが離れてしまうのは仕方がありません。
カスタマーサポートの質を高めることは、顧客ロイヤリティの向上や、長期優良顧客の獲得につながります。長期的な視点で、カスタマーサポートの質向上は不可欠です。
▼顧客ロイヤリティについては別の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
リテンション率を向上させるメリット
リテンション率を向上させるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、大きく3つのメリットを紹介します。
- 顧客単価の向上につながる
- ロイヤルカスタマーの育成につながる
- 離脱率の改善が見込める
リテンション率を向上させる目的を定めるためにも、詳しく見ていきましょう。
顧客単価の向上につながる
リテンション率向上により顧客満足度が高まると、アップセル・クロスセルが見込めます。
サービスや商品に対して満足度が高いユーザーは、運営・販売している企業に対しても好印象を持っている可能性が高いといえます。その場合、上位モデルへの切り替えや関連する別商品の購入などにつながりやすくなるでしょう。
「セット購入で10%OFF」「上位モデルが初月無料」など、ユーザーに対して適切なタイミングで割引・特典のキャンペーンを行うことで、アップセル・クロスセルが期待できます。
ロイヤルカスタマーの育成につながる
リテンション率が向上すると「ロイヤルカスタマー」の育成が可能です。ロイヤルカスタマーとは、企業やブランドに対して高い忠誠心を持っており、サービスや商品の継続利用・継続購入の期待値が高い顧客のことです。
一般的に、ロイヤルカスタマーは、口コミ投稿などを通じて新規顧客獲得の役割も担うとされています。競合他社への乗り換えもしにくく、アップセル・クロスセルの期待値も高いため、重要な存在です。
リテンション向上施策に加え、顧客体験(CX)の向上やコミュニティ形成も並行して進めることで、よりロイヤルカスタマーの育成が進むでしょう。
離脱率の改善が見込める
リテンション率を向上させることは、離脱率や利益率の改善にもつながります。
リテンションの重要性を示す法則として「5:25の法則」があります。「離脱率を5%改善するだけで、利益が25%向上する」というものです。
つまり、新規顧客獲得には既存顧客の維持(リテンション)の5倍のコストがかかるということです。リテンション率の向上が、いかに収益性の高い施策であるかが伺えます。
リテンション率の向上により、顧客と良好な関係が築ければ離脱率が改善され、利益率は大幅にアップします。リテンション率に課題を抱えている商品・サービスは、伸び代が大きいといえるでしょう。
リテンション率向上のための具体的な施策
ここからは、リテンション率を向上させる具体的な施策を4つ紹介します。
- 顧客体験(CX)の向上
- 顧客一人ひとりに合わせた対応
- 購入後・利用後のサポート
- FAQの充実
顧客基盤を強化するためにも、それぞれの施策について詳しく見ていきましょう。
顧客体験(CX)の向上
CX(Customer Experience)とは、顧客が企業やブランドと接点を持つ全ての過程で生じる体験や印象のことです。商品やサービスの提供だけでなく、購入前から購入後まで、全ての体験が含まれます。
商品やサービスによって適切なCX向上施策は異なりますが、例を挙げると「チャットボットの導入」「定期的なアフターフォローメール」などが考えられます。
また、顧客の不満や悩みを解決し、ストレスのない対応を実現するために、「24時間対応のAIチャットボット」や自己解決できる「FAQ・ヘルプセンターの充実」も有効な手段として考えられるでしょう。
顧客一人ひとりに合わせた対応
顧客に合わせた対応(パーソナライズ施策)とは、顧客一人ひとりの興味や関心、行動履歴などを参考に、最適な商品・情報・サービスを提供することです。
パーソナライズ施策の具体例
- レコメンド機能(Amazonの「あなたにおすすめ機能」やNetflixの「レコメンドアルゴリズム」など)
- メール・プッシュ通知の最適化(楽天市場の「再入荷メール」など)
- ウェブサイトやアプリのパーソナライズ(ユニクロのオンラインストアやGoogle検索の最適化など)
顧客属性や購買履歴などのデータをAI・学習機能で分析させることで、顧客が求めている商品にたどり着くスピードが格段にアップします。その結果、使いやすいサービスとなり、リテンション率の向上につながるという仕組みです。
購入後・利用後のサポート
商品やサービスを購入・利用することがゴールではなく、継続して使ってもらうことがゴールだと考えれば、購入後・利用後のサポートも大切です。
例えば、どんなに有益なサービスや商品であっても、使い方が顧客に伝わらなければ意味がありません。上記のケースを防ぐためには、商品やサービスの購入後に、使い方を解説したメールやパンフレットを送付することが重要な施策となります。
例えば、Appleのカスタマーサポートでは、購入履歴や過去の問い合わせを元に適切なサポートを提供しています。LINEチャットボットでは、ユーザーごとの質問履歴を蓄積し、個別に最適な回答を自動提供するなど、購入後・利用後のサポートに力を入れています。
FAQの充実
購入後・利用後に生じたユーザーの疑問や不満を解決する上では、FAQの充実が効果的です。
24時間いつでも確認でき、問題の解決方法が正確かつ分かりやすく記載されていれば、リテンション率の向上が期待できるでしょう。
商品の購入直後は、顧客の利用意欲が高い状態です。そこで、商品やサービスの使い方が分からない、不具合があってどう解決してよいか分からないなどの事象が起こってしまうと、大きなストレスになることは容易に想像できます。
24時間365日カスタマーセンターを運営し、顧客が問い合わせできる状態にしておくことは難しく、運営コストがかかります。一方でFAQの導入や改善は、コストも抑えつつ、顧客の課題や不満の解消が可能な手段として有効です。
リテンション率の向上にはFAQの改善が有効
リテンション率の向上にはFAQの改善が有効です。FAQを導入するとユーザーが自身で疑問を解決できるため、迅速な問題解決が可能となり、顧客満足度の向上につながります。
また、FAQを充実化することでカスタマーサポートへの問い合わせ件数が減少し、サポートスタッフの負担軽減や業務の最適化が図れるのも魅力です。
購入前のユーザーが抱える不安を解消することにもつながるため、コンバージョン率の向上にも寄与するでしょう。加えて、FAQの利用状況を分析することで顧客の潜在ニーズを把握し、新たな商品やサービスの提案に生かすことも可能です。
Helpfeelは、独自のAI技術と検索特許技術を備えた検索型AI-FAQシステムです。どんな検索キーワードでも必ず欲しい回答に導くことで、自己解決を促し、個別の問い合わせ件数の削減が可能です。導入前後のサポートも充実しているため、初めてFAQ改善を行う方にもおすすめです。
リテンション率の低下で悩んでいる場合は、ぜひHelpfeelを試してみてください。
まとめ:リテンション率を向上するには顧客中心のサポート体制構築が重要
今回は、リテンション率とは何かと、低下する原因や改善方法を詳しく解説しました。
企業やブランドにとって、長期的なファンとなる「ロイヤルカスタマー」の育成はとても重要です。リテンション率を向上できれば、同時にロイヤルカスタマーの育成にもつながるため、大きな効果が期待できます。
コストを抑えながらCX改善を図る場合には、FAQを改善してリテンション率を高めましょう。