SECI(セキ)モデルとは
「SECIモデル」とは、従業員の暗黙知を形式知に転換し、組織内で管理・共有しながら新たな知識を創出するための手法です。
ここでは、SECIモデルに関する以下の項目を解説します。
- 暗黙知・形式知とは
- ナレッジマネジメントとは
それぞれの概要を詳しく見ていきましょう。
暗黙知・形式知とは
「暗黙知」とは、経験や感覚に基づいた知識やノウハウのことです。
例えば「ファッションデザイナーのセンス」「熟練職人の手の感覚」「ベテラン営業の交渉力」などが当てはまります。言語化が難しく、他の人に伝えにくいのが特徴です。
「形式知」とは、図や数値、文章などを用い、誰もが理解できる形にまとめた知識を指します。「業務マニュアル」「新人研修資料」「社内FAQ」などが該当します。
暗黙知を形式知に転換することで、個人ごとの知識を組織全体で管理・共有でき、業務効率の向上やスキルアップにつながるでしょう。
ナレッジマネジメントとは
「ナレッジマネジメント」とは、個人の知識を組織で管理・共有し、事業成長や課題解決に役立てる方法のことです。
知識の共有によって業務の属人化を防ぎ、生産性や業務効率を向上させることを目的としています。
SECIモデルは、ナレッジマネジメントをかなえるための手法の1つです。暗黙知から形式知に転換した知識を組み合わせ、新たな知識を創出するサイクルを繰り返すことで仕組化され、精度の高いナレッジマネジメントを実現できるようになります。
▼ナレッジマネジメントに関しては別の記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
SECIモデルの4つのプロセス
SECIモデルのプロセスは、以下の通りです。
- 共同化プロセス(Socialization)
- 表出化プロセス(Externalization)
- 連結化プロセス(Combination)
- 内面化プロセス(Internalization)
それぞれの具体的な内容を見ていきます。
共同化プロセス(Socialization)
「共同化プロセス」では、業務やコミュニケーションを通じて従業員同士の暗黙知を共有します。
例えば「ミーティングで、それぞれの意見を交わし合う」「ベテラン従業員から新人従業員へ指導を行う」などが挙げられるでしょう。
あくまで暗黙知を共有するプロセスであるため、形式知への転換は行いません。個人の感覚や勘を、できるだけ相手が理解できるように共有することが大切です。
共有体験を通じて、従業員の信頼関係が構築されたり、コミュニケーションしやすい雰囲気が作られたりといった効果も期待できます。
表出化プロセス(Externalization)
「表出化プロセス」では、共同化プロセスで共有した暗黙知を形式知へ転換します。
マニュアルや図表、プレゼンテーションなどで個人の知識を言語化し、第三者が見ても分かりやすいようにまとめるのがポイントです。主観的な知識を客観的な形で表現しなければならないため、深い議論が必要な場合もあるでしょう。
個人の勘や感覚を形式知で表せるようになれば、より多くの人と知識を共有できるようになり、生産性や業務効率の向上につながります。
連結化プロセス(Combination)
「連結化プロセス」は、形式知化した知識を連結し、新しい知識をつくるプロセスです。
例えば「先輩から教えてもらった業務のコツを自分流にアレンジする」「マニュアルにまとめたノウハウを現場環境に合わせて改善する」といった行動が当てはまります。
連結化プロセスを経ることによって、より汎用性・網羅性の高い知識にブラッシュアップされるため、「新しいアイデアが見つかる」「新しい方法で業務が効率化する」などの効果が期待できるでしょう。
内面化プロセス(Internalization)
「内面化プロセス」は、連結化プロセスで得た知識を個人が学習し、自分の暗黙知として習得するプロセスです。
例えば「新しく導入した業務プロセスを反復し、自分なりの工夫を生み出す」「新人トレーニングを受けた後、実務を通じて獲得した知識を自分のスキルとして吸収する」などがあります。
個人で新しい暗黙知を生み出すには、共有された知識やノウハウを繰り返すだけでなく、創意工夫を加えることが重要です。内面化が進めば、個人のスキルアップや組織全体のパフォーマンス向上につながります。
SECIモデルのプロセスに必要な4つの場と具体例
SECIモデルのプロセスには、4つの場が必要です。
- 創発場
- 対話場
- システム場
- 実践場
それぞれの概要と具体例を詳しく解説します。
創発場
「創発場」とは、コミュニケーションを通じて知識を交換し合う場のことです。
主な具体例は以下の通りです。
- ミーティングでの意見交換
- 休憩所での会話
- 飲み会や昼食といった食事の場
創発場では、それぞれの意見を尊重し、相手を批判しないことが大切です。違う視点を持った従業員同士で意見を交わすことで、新たな知識が生まれやすくなります。
対話場
「対話場」とは、個人の暗黙知を形式知化し、他者と共有する場のことを指します。業務内で事前にセッティングされるケースが一般的です。
主な具体例は以下の通りです。
- 社内研修
- 社員合宿
- チームディスカッション
- マニュアルの作成
対話場では、目的を明確にし、雑談で終わらないようにすることが重要です。具体的な表現や言葉で知識を共有することで、お互いの成長や学びを促せるようになります。
システム場
「システム場」は、形式知同士を組み合わせて新しい知識を創出する場のことです。事前に資料やプレゼンテーションなどを準備し、共有事項を具体的に示しながら対話を進める必要があります。
オンラインと対面のどちらでも実施できますが、リアルタイムで資料を共有・更新するのであれば、オンラインの方が効率的でしょう。
主な具体例は以下の通りです。
- 社内チャットツールでのディスカッション
- オンラインミーティング
- オンラインドキュメントの共有
実践場
「実践場」は、新たに創出された知識を自分の暗黙知として取り込む場を指します。従業員が自ら形式知を実践し、知識を習得することになるため、特別な場を設ける必要はありません。
主な具体例は以下の通りです。
- 従業員のデスク
- 作業スペース
知識を頭に入れるだけでなく、実際に試すことで習得が早まり、効率的なスキルアップにつなげられます。実践によって新たな暗黙知が創出された場合、SECIモデルのプロセスを繰り返せば、より洗練された知識の共有が可能になるでしょう。
SECIモデル導入時によくある課題
SECIモデル導入時によくある課題は、以下の通りです。
- 習得に個人差があり容易にはいかない
- 暗黙知を共有するメリットが少ない
- 明確なゴールがない
それぞれの課題を確認し、的確にSECIモデルを導入するための参考にしてください。
習得に個人差があり容易にはいかない
個人の経験に基づいた知識を第三者が内面化するのは、簡単な作業ではありません。
従業員ごとにスキルや条件が異なるため、形式知の習得度合いにばらつきが見られたり、習得に時間がかかったりする可能性があります。習得に大きな個人差が出ると、途中で挫折してしまう場合もあるでしょう。
組織全体で均一に知識を習得するためには、一時的ではなく継続的な取り組みとしてSECIモデルを導入することが重要です。従業員一人ひとりが知識を習得しやすい環境を整え、共有と内面化のプロセスを繰り返せるようにしてください。
暗黙知を共有するメリットが少ない
従業員によっては、自分が苦労して習得したノウハウや技術を共有することに抵抗を感じる場合があります。情報共有で得られるメリットを具体的にイメージできないのが原因と考えられるでしょう。
そのため、組織全体で知識を共有することの重要性を従業員に理解してもらうことが大切です。
ノウハウや技術の共有に対してインセンティブを提供したり、評価制度を見直したりといった対策も求められます。また、社内研修や合宿、ミーティングなどで対話場を設け、暗黙知が表出しやすい環境を整えるとよいでしょう。
明確なゴールがない
SECIモデルは、各プロセスを繰り返しながら継続的に知識の精度を高めていく取り組みであり、明確なゴールがありません。
また、部署やチームによって蓄積される知識のジャンルが異なるため、それぞれに適したゴールも変わります。ゴールが曖昧なままだと成果が見えづらく、SECIモデルに対する意欲が削がれるかもしれません。
取り組みを継続するためには、部署やチームごとに中間目標を決め、定期的に振り返る時間を設ける必要があります。さらに、SECIモデルを実践した従業員の成果を評価する制度を作るとよいでしょう。
SECIモデルを活用するためのポイント
SECIモデルを活用するポイントは、以下の通りです。
- ナレッジ共有の体制を整える
- 情報共有のメリットを伝える
- ツールやシステムを導入する
意識すべきポイントを確認し、SECIモデルを有効活用しましょう。
ナレッジ共有の体制を整える
組織全体で知識を管理・共有するためには、体制を整える必要があります。まずは、企業トップからSECIモデルを導入することを明言し、従業員とともに体制を整備する姿勢を見せることが大切です。
ナレッジ共有の体制づくりにはさまざまな方法があるため、企業の傾向に合わせて選択するとよいでしょう。
例えば、暗黙知が蓄積されやすい企業は、対話場を増やして共同化プロセスを促進する工夫が求められます。
多くの形式知を有する企業であれば、連結化プロセスを重視し、ディスカッションやミーティングを通じて新たな知識を生み出す機会を増やしてください。
情報共有のメリットを伝える
個人の知識やノウハウを積極的に提供してもらうには、情報共有のメリットを伝えることが重要です。
例えば「業務の属人化を防ぎ、効率的に作業ができるようになる」「新人従業員の教育に活用でき、パフォーマンス向上につながる」など、組織全体にメリットがあることを従業員に周知するようにします。
また「インセンティブの付与」「人事評価アップ」など、知識やノウハウを提供した従業員が得られるメリットも明確にするとよいでしょう。組織・個人ともにメリットがあると分かれば、知識の共有が促進され、SECIモデルに取り組みやすくなります。
ツールやシステムを導入する
SECIモデルのプロセスを効率化するためには、ツールやシステムを導入するのがおすすめです。
例えば、社内FAQシステムや文章管理ツール、マニュアル作成ツールなどは組織内のスムーズな情報共有に役立ちます。社内ポータルサイトや社内SNSを構築してコミュニケーションを活性化し、暗黙知を共有・表出化しやすい環境を整えるのもよいでしょう。
ただし、ツールやシステムにはさまざまな種類があり、企業によって最適なものは変わります。テストをしながら自社に適したツールやシステムを見極めるようにしてください。
SECIモデルの実践ができるナレッジ共有・検索システム
SECIモデルの実践には、ナレッジ共有・検索システム「Helpfeel」の導入がおすすめです。
従業員から頻繁に寄せられる質問やマニュアルを集約し、誰でも見つけることができるような検索アルゴリズムの技術で、不要な問い合わせやコミュニケーションコストを削減します。AIによる自動応答機能を搭載しており、即時回答も可能です。
また、Helpfeelは検索型のシステムです。曖昧な表現やスペルミスにも対応しているため、スムーズな自己解決に導きます。SECIモデルを効率的に実践するためのナレッジ共有・検索システムを探している方は、ぜひHelpfeelを試してみてください。
まとめ:SECIモデルを実践して社内ナレッジを活用しよう
SECIモデルは、属人化しやすい知識を組織内で共有し、業務の効率化や生産性の向上を実現するための手法です。
しかし、個人の知識を組織全体で均一に共有するのは容易なことではありません。社内ナレッジをスムーズに管理・共有するには、適切なツールやシステムを導入する必要があります。
ナレッジ共有・検索システム「Helpfeel」は、よくある問い合わせやマニュアルを集約・整理し、常に最新の情報を共有するために役立ちます。SECIモデルを実践する際には、ぜひHelpfeelの導入を検討してみてください。