ボイスボットとは?
ボイスボットとは、AIを活用した自動音声応答システムのことをいいます。ここでは、「IVR(自動音声応答)」との違いやボイスボットの仕組みについて解説します。
IVRとの違い
ボイスボットと間違えられやすいものに、IVRがあります。IVRは自動音声で各担当部署へとつなげることを目的として運用するのに対し、ボイスボットは幅広い応答が可能です。
例えば、IVRはユーザーからの電話に対し、購入前の相談は「1番」、製品に関する問い合わせは「2番」など、番号を入力するように案内して担当オペレーターへつなげます。
一方で、ボイスボットは、住所や氏名などユーザーの言葉を聴取できるため、予約の受付やサービスの申し込み、変更の受付なども対応できます。
▼IVR(自動音声応答)について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
ボイスボットの仕組み
ボイスボットは、AIによる音声認識や音声合成技術などにより、ユーザーからの問い合わせに回答できるシステムです。
電話を受信すると、音声認識AIが問い合わせ内容を解析し、テキスト化します。テキスト化されたデータは、自然言語処理システムによって回答が作成され、音声合成技術で読み上げられるという仕組みです。
応答にはシナリオが必要ですが、会話を重ねる中で学習していくことが、AIならではの特徴といえます。
ボイスボット活用事例:業界別導入シーン
業界別にどのようにボイスボットを活用しているのか、以下の業界の導入シーンを紹介します。
- コールセンター・EC:24時間注文受付と顧客体験向上
- 官公庁・地方自治体:24時間受付と住民サービスの向上
- 通信・情報サービス:定型問い合わせ対応の自動化と業務効率化
- 金融・保険:ウェブサイトと連携した顧客対応の効率化
- 飲食・宿泊:予約受付の自動化と多言語対応
コールセンター・EC:24時間注文受付と顧客体験向上
従来のコールセンターやECの現場では、オペレーターが電話で受注対応をすることが一般的でした。
しかし現在では、ボイスボットの導入により注文の受付から受注に関する登録までの自動化が実現しています。
オペレーターの対応では、受付時間や対応できる受注数に限りがありましたが、ボイスボットを導入することで24時間受付が可能になりました。ユーザーはいつでも都合の良い時間に注文でき、顧客満足度の向上にもつながっています。
官公庁・地方自治体:24時間受付と住民サービスの向上
官公庁や地方自治体では、電話の受付は平日の9時から17時までが一般的でした。12時から13時は電話が混み合うことも多く、待ち時間が長くなることも少なくありません。
ボイスボットを導入すると、問い合わせや各種申請の受付が24時間対応できるようになります。
対応時間の拡大だけでなく、ボイスボットでは電話が集中した場合でも対応できるため、ユーザーは「待たされる」というストレスから解放されるでしょう。
通信・情報サービス:定型問い合わせ対応の自動化と業務効率化
通信・情報業界での問い合わせは、多くが固定通信サービスに関する工事の予約や契約内容の照会・変更です。このような問い合わせには定型文で対応できるものが多いため、AI向けといえるでしょう。
定型の問い合わせにボイスボットを導入し、定型文で対応できないものだけをオペレーターが対応すれば、効率化が可能です。
また、オペレーターの負担が軽くなり、1件ずつの対応に余裕が生まれることから、顧客満足度の向上も期待できます。
金融・保険:ウェブと連携した顧客対応の効率化
金融・保険業界に問い合わせをする人の多くは、事前にウェブ検索をしています。そのため、FAQの活用が一般的となっていますが、それでも電話での問い合わせニーズが低くなっているわけではありません。
ボイスボットを導入し、24時間365日の対応やスピードアップを図る傾向が見られます。
また、オペレーターとボイスボットを併用することで、顧客対応の質を高めることを目指しています。
飲食・宿泊:予約受付の自動化と多言語対応
飲食店やホテルなどでは、予約の受付にボイスボットが導入されています。
より多くの顧客を呼び込むには、多言語での対応が必要です。音声を正確に認識できるボイスボットでは、日本語だけではなくさまざまな外国語に対応できるものもあります。
予約受付は、問い合わせとは異なり収益に直接結びつくため、自動で多言語に対応できることはメリットといえるでしょう。
ボイスボット導入のメリット
ボイスボットをカスタマーセンターやコールセンターに導入するメリットには、主に以下の8つがあります。
- オペレーターの負担軽減
- 人件費の削減
- 24時間365日対応の実現
- 顧客の待ち時間短縮
- オペレーターの定着率向上
- パーソナライズされた対応
- 「あふれ呼」や「放置呼」などの機会損失防止
- データ分析による業務改善
個々のメリットを把握し、業務改善の具体的な目的を定めてください。
オペレーターの負担軽減
まず挙げられるメリットは、オペレーターの負担軽減です。
ボイスボットを導入すれば、オペレーターの対応量は大幅に少なくなります。簡単な問い合わせはボイスボットが対応するため、時間がかかる複雑な問い合わせに対して、余裕を持って対応できるでしょう。
対応量の負担が軽減されるだけでなく、オペレーターが気持ちにゆとりのある状態で仕事に取り組める環境は、離職率を下げる効果も期待できます。
人件費の削減
ボイスボットの導入は、人件費の削減につながります。
ボイスボットの自動応答にFAQを設定すれば、定型的な問い合わせにはボイスボットが答えてくれます。簡単な問い合わせや予約の受付などは、オペレーターに代わってボイスボットが対応すれば、その分の人件費を削減できるでしょう。
24時間365日対応の実現
ボイスボットは自動で対応するため、24時間365日の稼働が可能です。
カスタマーサポートなどオペレーターだけで対応しているコールセンターは、受付時間が17時や18時で終了するところが少なくありません。日中働いている人であれば、夜間に問い合わせたいと思うこともあるでしょう。
ボイスボットを導入すると、オペレーターがいない時間も対応できます。需要が多い夜間にカスタマーサポート対応ができれば、顧客満足度の向上にも影響する可能性があります。
顧客の待ち時間短縮
ボイスボットを導入すると、受電数が多く混み合う時間でも効率的に対応できます。
簡単な問い合わせはボイスボットが回答できるため、オペレーターの対応が不要です。結果的に待ち時間の大幅な短縮が期待できます。
オペレーターの定着率向上
効率化や顧客の待ち時間短縮など、ボイスボットのメリットの多くはオペレーターの定着率向上にもつながっています。
オペレーターの離職率が高いことに悩むコールセンターは少なくありません。クレームや受電数の多さなど、精神的負担が離職の大きな要因です。
ボイスボットでクレーム対応はできませんが、ユーザーが知りたい内容を的確に聞き出して引き継ぎます。そのため、ユーザーの言いたいことがうまく伝わらないことが原因となるクレームを減少できるでしょう。
▼オペレーターの離職理由について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
パーソナライズされた対応
ボイスボットでは蓄積された顧客データを活用し、ユーザーごとの購買履歴や利用履歴、過去の問い合わせ内容に合わせたパーソナライズされた対応が可能です。
個々のユーザーに合ったサービスが提供できると、顧客満足度の向上につながります。
「あふれ呼」や「放棄呼」などの機会損失防止
コールセンターで対応できる受電数を超えると、オペレーターにつながるのを待つ「あふれ呼」や「放置呼」と呼ばれる状態になります。
しかし、つながるまで待ち続ける人ばかりではありません。注文や予約受付の電話でも諦めて電話を切ってしまう人もいるため、損失につながりかねません。
ボイスボットを導入すると効率的に対応でき、対応可能な受電数を超えることが少なくなるでしょう。
データ分析による業務改善
ボイスボットの特徴として、学習を重ねて回答の精度を高めていきます。コールセンターで活用していくためには、音声データをテキスト化し、問い合わせ内容に関する分析が必要です。
データ分析をすることで、顧客ニーズを把握し、業務の改善につなげることが可能です。問い合わせのあったユーザーが、問い合わせ完了まで電話を利用したかどうかという「完了率」が、改善の際には重要なポイントとなります。
ボイスボットの選び方
業務効率化のためには、自社に合うボイスボットを選ぶことが重要です。ボイスボットを選ぶ際には、以下の6つのポイントを押さえましょう。
- 有人対応への切り替え機能
- 内容確認機能
- 連携可能なシステムの種類
- シナリオのカスタマイズ性
- ベンダーのサポート体制
- 管理画面の使いやすさ
有人対応への切り替え機能
オペレーターが対応する必要がある場合に、有人対応へスムーズに切り替えられる機能があることを確認しましょう。
問い合わせは、ボイスボットで完了できる簡単なものばかりではなく、オペレーターの対応が必要なケースがあります。
また、ユーザーがオペレーターの対応を希望することもあり、そのような場合にオペレーターが対応することが、顧客満足度の向上にもつながります。
内容確認機能
内容確認機能とは、通話後にLINEやSMSなどで、受付内容を確認するための通知を送るシステムをいいます。
電話を終えた後に、ユーザーが受付完了メールなどで通知を受けられる機能です。受付内容に間違いがあれば、変更するためのフォームを送信できる機能が搭載されているものもあります。
AIによる音声認識では、100パーセント正しくユーザーが話す内容を認識できているとは限りません。ボイスボットの運用方法に合わせて、必要であれば内容確認機能が搭載されているものを選びましょう。
連携可能なシステムの種類
現在使用しているシステムとボイスボットを連携できれば、効率的に業務を進められます。
ボイスボットを導入する際には、FAQなど既存のシステムと連携が可能かどうかを確認してください。
コールセンターの場合は、顧客管理システムのCRMやSFA、チャットツールなど社内のコミュニケーションで使用しているシステムと連携すると、より効率的です。
シナリオのカスタマイズ性
ボイスボットのシナリオをどの程度自由に作成・変更できるかも重要なポイントです。ボイスボットはシナリオの作成や変更をしやすいことが特徴で、ブラウザ上から簡単にカスタマイズできます。
サービス内容の変更やキャンペーンの実施中には、回答のシナリオに変更点が出てくることもあります。ボイスボットのシナリオをリアルタイムで変更することで、重複がなくなるでしょう。
ベンダーのサポート体制
ボイスボットは導入時のサポートに目を向けがちですが、導入した後の運用に関するサポート体制も確認してください。
メンテナンスはもちろんのこと、トラブルが起きた際の対応や、FAQの更新についてのサポートが受けられれば安心できます。
一方で、導入時のサポートも大切で、案件定義やシステム構築、運用のテストなどのサポートがあることも確認しましょう。
管理画面の使いやすさ
ボイスボットの管理画面が使いやすいと、効率的な運用ができるだけでなく、オペレーターの負担軽減にも大きく影響します。
特に、エンジニアが常駐していないコールセンターでは、直感的な操作が可能なボイスボットを選ぶことをおすすめします。
可能であれば無料トライアルを使って実際に管理画面を操作し、導入を判断してみてください。
コールセンターの生産性向上にはボイスボットの他にFAQシステムの導入もおすすめ
ボイスボットを導入すると、24時間365日対応が可能になり、オペレーターの業務負担の軽減やコスト削減が実現できます。最適なボイスボットを導入するためには、機能やコスト、使い勝手などを比較・検討しなければなりません。
コールセンターの運用改善には、FAQシステムの活用も効果的です。ボイスボットの導入を考えている場合には、FAQシステムの併用も検討してみましょう。
「Helpfeel」はどんな検索キーワードでも必ず欲しい回答を提案してくれる検索型AI-FAQシステムです。独自の特許技術で検索キーワードの表記揺れや意図も汲み取り、回答を導くことでユーザーの自己解決を促進し、実際に64%もの問い合わせを削減した実績もあります。
ボイスボットを導入する場合でも、FAQによってユーザーの問い合わせ傾向を分析する基盤になるため、まずはFAQシステムのHelpfeelを導入してみてはいかがでしょうか。
まとめ:ボイスボットで業務効率と顧客満足度を向上させよう
今回はボイスボットについて、業界別の活用方法から、導入するメリットや選び方などを紹介しました。
ボイスボットとはAIを活用した自動音声応答システムです。最適な窓口へ誘導するIVRとは異なり、ユーザーが話す言葉に対して回答が可能です。
コールセンターの効率化だけでなく、顧客満足度の向上を図れることも大きな魅力といえるでしょう。
ボイスボットを導入する際は、既存のシステムとの相性も確認し、FAQシステムや顧客管理システムなどを連携できるものを選んでください。