【理科】シンキングツール 活用法
目次
理科教育に、なぜシンキングツールが必要なのか?
学習指導要領 概要
小学校の学習指導要領における「理科」の目標は以下のように示されています。中学校では、この趣旨が若干高度化・深化されて書かれています(例えば「理解を図り」→「理解を深め」など)。
自然に親しみ,理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,自然の事物・現象についての問題を科学的に解決するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 自然の事物・現象についての理解を図り,観察、実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
(2) 観察,実験などを行い,問題解決の力を養う。
(3) 自然を愛する心情や主体的に問題解決しようとする態度を養う。
「なぜ?」という疑問が主体的な問題解決の出発点となります。「なぜ?」を生み出す元になるのは比較です。ある現象を時間や場所などで比較し、その変化や違い、共通点に気付いた時、「なぜ?」という疑問が生まれます。その答えを知るためには、予想や仮説を立て、実験や観察を行い、結果を比較します。そして、情報を集めて解釈します。こうして、「情報の収集、比較、整理、解釈」という思考のプロセスが連続的に行われます。また、科学的な事実をもとに、社会的課題に対する解決策を導き出すことも学びの重要な要素です。
理科教育におけるシンキングツールの活用
理科では、事実やデータの収集からきまり(法則)を見つけることが重要です。実験結果の整理には、よく表(マトリクス)が使われますが、変化を見つけたり表したりする際には、同心円やピラミッドチャートが適することもあります。このように、シンキングツールを活用することで、事実やデータが可視化しやすくなります。
理科教育での情報の可視化は、現象から帰納法的に法則を見出す「科学的思考」の育成に役立ちます。仮説実験授業や実験結果の考察でも、キャンディチャートなどのシンキングツールが有効です。
理科において育成したい能力とシンキングツール
1.理科に関する基本的な知識・技能
理科の学習では、用語の単純暗記ではなく、特徴を比較・把握して理解することが求められます。
⇨ シンキングツールで思考を可視化することで、既知の用語を整理・比較して特徴を具体的に把握したり、実験・観察に必要な知識・技能が身につきやすくなります。
2.問題解決能力
理科では特に問題解決力が求められます。問題(課題)を発見する力や、情報を収集する力に加え、適切な実験・観察方法を選択する力、結果を整理・分析する力なども求められます。
⇨ 問題解決の段階に応じたシンキングツールを使うことで、どのように思考すればよいかがわかり、問題解決のプロセスが俯瞰できます。また、実験結果の深い考察から新しい考えを生み出しやすくなり、科学的概念と多角的に向き合えます。
3.科学的に探究する力
理科では、実験・観察を通して変化や違い、共通点に気づき、仮説検証から結論を導く能力が重要です。実験結果や観察記録の正確な記録・分析から新たな気づきを得て、個別現象から科学的結論を導き出す力が求められます。したがって、「実験結果から論理的に考え、予想や仮説を確かめる」科学的な姿勢の育成が必要です。
⇨ シンキングツールで実験・観察結果を可視化することで、情報を俯瞰し、きまりや規則性を見つけやすくなります。仮説とその検証計画を立案し、実験や観察を続けるというプロセスは、科学的な探究心の育成につながります。
4.自然への関心と理解
理科では、自然の仕組みや現象への興味を深め、環境保護などの社会的課題を理解することも目指されています。
気候変動やエネルギー問題、気温と蒸発の関係、発電方法など、理科の学習内容は、社会問題と直結しており、その解決策を考えることも求められます。
社会問題に対して、既習事項を使って多角的にアプローチすることで、児童生徒は新しい視点や価値観を発見し、自己成長や社会的責任感の形成にもつながります。
⇨ シンキングツールを活用して身近な現象や物質、生物への理解を深めることで、その重要性が具体化され、自然への関心と理解を深めることができます。また、人々の活動と自然現象との関わりを可視化し、関心・理解を深めることも重要です。
どのように教科教育に取り入れていくべきなのか?
能力育成の活用例
理科に関する基本的な知識・技能
理科用語は、それぞれの特徴をしっかりと理解する必要があります。また、事物や現象の共通点・相違点の整理も大切です。シンキングツールを活用した知識の整理・比較・分類によって、知識技能の定着を図ることができます。
参考
問題解決能力
シンキングツールを使うことで、問題解決のための課題発見や情報収集がスムーズに行えます。
身の回りの出来事から課題を発見し、問題設定ができます。さらに、情報の収集・分析では視点を設定して多角的に俯瞰することで、科学的な検証が容易になります。
参考
科学的に探究する力
シンキングツールを活用して自分の考えや既習事項を構造的にまとめることで、問題に対する仮説が立てやすくなります。
実験結果の考察では、視点を持って結果を比較・分類することで新たな気づきが得られます。
シンキングツールを用いた仮説立案や結果考察により、探究的な学びが深まり、科学的な探究力が育成されます。
参考
自然への関心と理解
自然科学の知識だけでなく、自然現象への深い理解と関心を育むことは、理科教育において非常に重要です。シンキングツールを使って、身近な現象と授業で学んだ内容を関連付けることで、自然への関心や理解をより深めることができます。
科学技術が発達した現代社会において、自然のしくみや現象に対する興味関心を深めることは、気候変動やエネルギー問題などの社会的課題への解決策を考える上でも重要です。その際、シンキングツールを使って調べた内容や自分の考えを構造化することで、社会課題への解決策も見出しやすくなります。
参考
授業事例
全国のロイロ認定ティーチャーが作成した、授業案を学年・科目・単元ごとにまとめたページです。
シンキングツールを活用した授業案も多数掲載しています。ぜひご覧ください。