ホンダモビリティソリューションズ株式会社は、「移動を変え、日常を変え、未来を変える」というミッション実現に向け、カーシェアサービスなどのモビリティサービス事業を手がける会社です。
同社では、カーシェアサービス「EveryGo」の事業拡大に向け、お客様が不明点を自己解決できる環境を用意し、電話による問い合わせを減らしたいと考えていました。2023年10月、電話問い合わせ件数10%削減を目指してHelpfeelの運用をスタート。導入して7カ月でこの目標を達成し、お客様が自己解決できる環境が整ってきています。
Helpfeelの導入理由や活用方法、効果について、第二ソリューション部 カーシェア事業ユニットの釘屋様、有賀様、大川様に話を伺いました。
車の操作など基本の問い合わせは自己解決できる環境を整え、事故やトラブルの緊急時に電話が繋がるように
── はじめに、第二ソリューション部 カーシェア事業ユニットにおける皆さまの業務内容を教えてください。
釘屋様 当社はホンダグループにおいて、さまざまなモビリティサービスを展開する会社です。その中で我々のチームはマーケティングや事業開発、カスタマーサポートなどの機能があり、それぞれの専門性をもつメンバーが連携して業務を行っています。
有賀様 私は、カスタマーサポートやオペレーションを担当しています。お客様からコールセンターへ寄せられた問い合わせ内容をもとに改善点を見出したり、エスカレーションされた問い合わせへの対応をしたりしています。
大川様 私の役割は、マーケティングおよび新規事業開発です。定量データやコールセンターに寄せられるお客様の声をもとにマーケティング施策を考え、実行しています。
── Helpfeelを導入する前、どのような課題を抱えていましたか。
有賀様 お客様の問い合わせチャネルは、外部委託しているコールセンターへの電話のみです。今後、モビリティサービス事業を拡大していくにあたり、比例して問い合わせも増えてコストが膨らんでしまわないよう、このタイミングで入電の件数を減らしたいと考えました。
「EveryGo」の利用顧客は、カーシェアリングを初めて利用する、あるいは車の運転が久しぶりといった方も多く、サービスの会員登録や車両操作などの基本的な問い合わせも少なくありませんでした。こうした問い合わせが増えてしまうと、事故やトラブルといった急を要する電話の際にお客様を待たせてしまいかねません。
基本操作についてはFAQページで情報提供していたものの、Q&A形式のテキストが並んでいるシンプルなものだったため、お客様が欲しい情報に辿り着けないことが多く、アクセス数も少なかったのです。FAQページのアクセス分析や改善にも着手できていませんでした。
また、お客様にとっても、不明点の解決方法が電話しかないのは、心理的にも時間的にも負担がかかります。こうした状況から、基本操作などの不明点は自己解決できるようにし、電話は緊急時の問い合わせ対応窓口としての役割が果たせるようにしたいと思っていました。
釘屋様 当時、「EveryGo」利用顧客の3割が電話問い合わせをしている状態でした。カーシェアサービスは気軽に利用できるというメリットがあるにもかかわらず、お客様にその満足度を届けられていないという課題感があったのです。
── 課題を解決するために、どのような検討をしましたか。
有賀様 当社にとってどのツールが最適なのかを考えるために、コールセンターの担当者とも相談しながら、FAQシステムの他、チャットボットやボイスボットの導入も幅広く検討しました。電話対応には緊急時や複雑な問い合わせを解決できるというメリットがありますから、今回のツール選定では電話にはない部分に強みをもつツールを考えていました。
── 比較検討していたツールの中から、最終的にHelpfeelを選んだ決め手を教えてください。
有賀様 幅広いシチュエーションで効率的に不明点を解決でき、かつ多くのお客様が同時に自己解決できるツールが理想だという考えに至り、FAQシステムを導入する判断をしました。
カーシェアサービスの性質上「今から車を運転したいが、操作方法がわからない」といった、軽微ながらもスピーディーな解決が必要な問い合わせが多くあります。
この特徴をふまえると、チャットボットやボイスボットの場合、解決までに何回かやり取りが発生すると時間がかかってしまう懸念が残りました。そこで、スマートフォンですぐに自己解決する方法として、FAQシステムが最適だと考えたのです。
Helpfeelに惹かれたのは、サポートが手厚いことです。どのように運用すればいいのかが見えていない状態からのスタートでしたので、伴走してくれる体制が整っているサービスを求めていました。
そして、自己解決率を上げて入電数を減らすことで、コールセンターのコストを削減できるという費用対効果が見込まれ、上層部からの了承も得られたので、まずはPoC(実証実験)の形で半年ほど運用することにしました。
大川様 マーケティングの観点では、利用を検討している見込顧客のニーズを捉える方法が当時ありませんでした。Helpfeelを導入することで多くの見込顧客がFAQページにアクセスし、そのデータから見込顧客への理解を深めたいという期待がありました。
具体的なKGIとKPIを設定し、データに基づいた施策を積み重ねた
── Helpfeelを導入して、PoCを始めるにあたって注力したことを教えてください。
有賀様 はじめに、PoC期間の目標と、正式導入した際の1年後の目標を立てました。PoC期間は、電話問い合わせ件数を10%削減することをKGIとしました。付随するKPIとしても、セッション数や検索利用率などの定量的な数字目標を設定して運用をスタートしました。
── Helpfeelのカスタマーサクセスへのご感想もお聞かせください。
有賀様 手厚いサポートをいただきました。お互いに目標を常に意識し、毎月のデータをもとに成果や改善点、および具体的な施策のアドバイスをいただいたことに感謝しています。
我々だけでは、こうしたきめ細かい運用はできなかったと思います。データ分析はできたとしても、そこからお客様が満たされていないポイントを見出し、改善行動に繋げられたのは、カスタマーサクセスの力あってのことだと思っています。
私自身も、やみくもに施策を打つのではなく、根拠をもってFAQ記事の追加をはじめとする改善策を打ち、お客様が求めている環境を構築できつつあることに充実感を覚えています。
大川様 カスタマーサクセスとの定例会には、私も参加していました。カスタマーサクセスの伴走支援の幅広さと柔軟性はすばらしいと感じましたね。
難易度の高いKPIにもしっかり向き合って、施策全体を見渡し、効果が出ているポイントと改善点の両方を網羅した分析をしていただきました。
入電数10%削減を達成し、コールセンターのコスト削減に貢献。データ分析からヒントを得て初心者向けガイドも設置へ
── Helpfeelを導入してからの具体的な効果を教えてください。
有賀様 導入して3カ月目から入電数が減るという効果が現れ、PoC期間で電話問い合わせ数10%削減の目標を達成することができました。また、削減したいと考えていた軽微な問い合わせについては、利用台数あたりの入電率が減少傾向にあります。
FAQページへのアクセス数も増えています。当社のメインユーザー層である20〜40代はスマートフォンを使いこなす年齢層であるため、自分の端末からFAQ画面にアクセスし、その場で自己解決できるHelpfeelがマッチしていたのだと思います。
導入前に比べて会員数や利用件数が増加傾向にありますが、コールセンターのコストは比例して増やすことなく、予算の削減を実現しております。
── その他、Helpfeel導入によって着手できた施策などはありますか。
有賀様 Helpfeelのデータから、FAQにアクセスするお客様は「EveryGo」の利用が初めて、もしくは利用回数が少ない方が多いことがわかりました。これを受けて、初めて利用する方向けのマニュアルをFAQページ内にまとめる準備を進めています。情報量が豊富なページを設置するアイデアはなかったので、Helpfeelを導入したからこそ着手できた施策だと思っています。
車内にも冊子のマニュアルを置いているものの、初心者の方にフォーカスしている内容ではなく、ページ数の兼ね合いもあって車の操作方法など詳細な説明はしていません。
Helpfeelであれば「初めての方向け」などターゲットを絞った記事や、ひとつの場面における詳しい情報を知りたい時の記事も作成できることをPoC期間で学ぶことができました。
FAQの認知度を上げて顧客満足度を高め、カーシェアサービスを社会に浸透させたい
── 今後、目指していきたいことをお聞かせいただけますでしょうか。
有賀様 「EveryGo」利用顧客のうち、FAQページの存在を認知している割合はまだ50%にも至っておらず、課題感が残っています。そのため、車両内にFAQページにアクセスするQRコードを順次設置しているところです。
一度FAQページにアクセスした経験をもつお客様は、次回利用時にわからないことが起きても、再度FAQページを利用するでしょう。今後、こうした利用顧客を増やしていきたいと思っています。
今はPoC期間を終え、正式運用に入ったばかりではありますが、今後はさらに入電数を減らして顧客満足度を上げていきたいですし、マーケティング施策に生かすなど、データ活用の範囲を広げていきたいと思います。
大川様 私の立場としては、カーシェアをはじめとするモビリティサービスを社会へより浸透させたいと思っています。そのために、Helpfeelのデータを生かしてお客様が満たされていないポイントを探り、そのナレッジをホンダグループで蓄積していきたいです。
釘屋様 カーシェアサービス業界全体でも電話問い合わせ率はまだ高い状況にあり、このサービスが成長中であることを感じます。カーシェアをはじめとするモビリティサービスを世の中で当たり前の存在にしていくことも、電話問い合わせの削減に繋がると思うのです。
自己解決率を上げて電話問い合わせを減らすだけでなく、他の点でも改善を重ねて、車だけでなくバイクなどもシームレスに、かつストレスなくシェアリングできる世の中にしていきたいですね。モビリティサービスの発展に向けて、さまざまなチャレンジを重ねていきたいと思います。
── 最後に、同様の課題を抱えている企業様にメッセージをお願いいたします。
有賀様 Helpfeelは、しっかりした伴走支援があることを身をもって感じています。当社もそうでしたが、他の業務もある中、自社だけでFAQを運用して改善を重ね、結果を出せる会社は少ないのではないでしょうか。
また、検索データを通して、今まで見えていなかったユーザー行動やニーズを把握できるようになります。こうしたデータを活用においても、伴走支援をしてもらうことでより大きな効果が見込まれると考えます。