株式会社LIXIL(リクシル)は、トイレ、浴室、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供している企業です。
同社のマーケティング部門カスタマーサービス統括部では、商品購入後の相談や修理の問い合わせに対応するとともに、LIXILブランドが顧客の「第一想起」(最初に思い浮かぶブランド)に入るためにVOC(Voice of Customer:顧客の声)を活用した改善活動を行っています。
以前のカスタマーサービス統括部は、商品を使うお客様や取付工事をする工務店などが困りごとをFAQサイトで解決しきれず、お客さま相談センターに電話での問い合わせが集中するという課題を抱えていました。
この解決のために、2022年にHelpfeelを導入。電話の問い合わせが減少し、FAQ記事の作成スピードも向上するなどの効果が見られています。カスタマーサービス統括部の髙野様、長崎様、輿水様にHelpfeel導入の背景や運用方法、具体的な効果などを伺いました。
エンドユーザーから選ばれるために、顧客目線で負荷を強いないFAQを模索
──Helpfeel導入以前、カスタマーサービス統括部で抱えていた課題を教えていただけますか。
髙野様 まず私の管轄するチームでは、LIXILブランドとしてNPS(Net Promoter Score:顧客推奨度)を向上させたいというミッションがあります。LIXILが考えている顧客としては、我々の商品を購入してくださる流通店、その先に製品を取り付ける工務店、そして実際に使用するエンドユーザーの3つがいると考えておりますが、実はエンドユーザーとの繋がりにおいては他の2つの顧客と比較して強い状態とは言えませんでした。
一方、昨今はデジタル化が進みエンドユーザー自身が検索によって自分の好きな商品を選べる環境が整ってきていることもあり、建売で付帯している設備をそのまま購入するのではなく、エンドユーザー自身が商品を選ぶ傾向にシフトしています。
このようななかで、弊社の商品を選んでいただくためには第一想起を取りつつも顧客のリテンションを意識してこれまで以上にエンドユーザーに積極的に向き合っていく必要があり、そのための手だてを強化する必要があると考えていました。
長崎様 今、髙野が言ったとおり、このような背景から、まずはお客さま相談センターなどに寄せられるエンドユーザーのご意見を基にしたVOC分析をして顧客の二ーズに合わせたFAQを作成し自己解決率を向上させようと考え実践してきました。ところが当時使っていた別のFAQシステムの検索性が低く、お客様が欲しい情報に辿り着けていないという課題がありました。お客様が検索窓に言葉を入力しても記事が一件も表示されなかったり、言葉を変えて何回も検索し直したりしていたのです。
輿水様 逆に、FAQの記事が何十件もヒットしてしまい、お客様にとってはどの記事を見ればいいのかがわからなくなってしまうことも多くあり、顧客に負担を強いていると感じていました。
髙野様 お客様がFAQで困りごとを解決できなければ、問い合わせをいただくことになります。体制面の課題として、メンバーによる業務負荷の偏りが生じていました。弊社は合併して今のLIXILになった経緯があるため、問い合わせを受ける担当者はそれぞれ特定商材にのみ詳しい状態だったのです。そのため、複雑な問い合わせがあると特定のメンバーが対応せざるを得ず、結果として属人化してしまったり、特定の人材に負荷が偏ったりしてしまう状況が起きていました。
長崎様 こうした課題が起きている理由は、大きく二つあると考えていました。一つは当時使っていたシステムには、検索エンジンの機能が不足していたことです。もう一つは、私たちにSEOのノウハウが弱く、お客様が検索をして適切な情報がヒットするように記事を作成できていなかったように思います。
──当時使っていたシステムで、その他に課題感はありましたか。
髙野様 機能が豊富なシステムだったのですが、あまり使いこなせていませんでした。運用の途中で、多すぎるがゆえに使うのを諦めてしまった機能も多くあったほどです。使いこなせないほどの多機能があることよりも、顧客の検索性や利便性を重視したいと考え別のシステムにリプレイスすることを検討することになりました。
──新たなFAQシステムとして、Helpfeelを導入した背景を教えてください。
輿水様 導入候補のひとつとしてHelpfeelを挙げており、2021年の秋に相談をもちかけました。検討にあたって重要視していたことは、検索性の高さです。お客様が検索した際、欲しい情報を的確に絞り込める状態を作りたいと考えていました。
髙野様 最終的にHelpfeelに決めたのは、検索性が優れていることはもちろんのこと、弊社は商材が多く、問い合わせも工務店やエンドユーザーからなど多岐にわたるという特徴があるため、その特性を考慮したうえでやりたいことに特化しているシステムだったことも大きな理由です。
また以前のFAQシステムが多機能すぎて逆に使いにくかった経験があったので、Helpfeelであればメンバーも理解しやすくスムーズに運用ができるだろうという期待がもてました。
FAQ更新スピードは大きく改善。カスタマーサクセスによるデータ分析で運用PDCAサイクルが回るように
──Helpfeelを導入し、運用面で工夫あるいは意識していたことはありましたか。
髙野様 Helpfeelの導入と同じ時期にサービス改革推進部ではフレームワークとしてスクラムを導入しました。それまでは組織内で役割分担し、メンバーは与えられた役割に徹していましたが、メンバー個々人が自立して動ける体制に移行したのです。
長崎様 Helpfeelの立ち上げは、スクラムのミッションのひとつでした。受け入れやすく、操作ハードルの低いUIだったこともあり、体制を変えても大きな混乱が生じず、メンバーの成長スピードも早かったと思います。今振り返ると、Helpfeelとスクラムは相性がよかったと感じています。
輿水様 日々の業務においては、FAQの記事公開をスピーディーに行うようにしています。以前は、記事を1件公開するまでに2か月を要するものもあり、言葉の一つひとつのチェックにもかなりの時間をかけていました。
今は、ホットな内容は早く情報を出すことを意識し、作業着手から1週間ほどで公開しています。記事の案を作るためのVOC分析も早くできるようになりました。ここまでスピードアップできたのは、ひとつの記事を複数人が同時編集できる管理画面も一因です。打ち合わせをしながらその場で修正を終えることができるので、現在は改修も含め50件は新規追加や更新ができるようになりました。常にFAQを新陳代謝できていると感じています。
──カスタマーサクセスに対するご感想もお聞かせいただけますか。
輿水様 テクニカルライターのサポートによってFAQ記事の質を上げられているとともに、月次で詳しくデータ分析をしていただいていています。その中で着目すべき数字も提案いただき、感謝しています。
髙野様 分析データ自体は以前のシステムでも取得できたのですが、データが膨大にあるために何から分析すればいいのかが掴めず、結果としてアクションができていませんでした。
今はそもそも見るべきデータがどれなのか、重要なデータを絞りこんで改善活動につながるKPIを設定していただけているのが大変ありがたいです。PDCAがきちんと回っている状態が作られています。
省力化や生産性の向上を評価され「LIXILアワード」を受賞
──Helpfeel導入から1年ほどが経ちましたが、どのような効果が出ていますか。
輿水様 目に見えて効果が表れています。中でも大きな成果が出ているのは直帰率です。Helpfeel導入直後の直帰率は43%だったのですが、今は37%を切るまでに改善しました。
髙野様 検索利用率も上がり電話問い合わせの件数も5〜7%ほど減りました。コロナ禍でお客様が以前よりホームページを見るようになったという環境要因もあると思いますが、それでも、かなりの方が電話問い合わせをする前にホームページを見て疑問を解決できる状況になりました。結果として、問い合わせを受ける担当者も、以前ほど業務が逼迫しなくなっています。
──現場で運用している皆さまは、Helpfeelに対してどのような感想をおもちですか。
長崎様 操作に迷うことが少なく、人事異動で新たに着任したメンバーもすぐに使いこなせています。他部門から昨年異動してきたメンバーが、早くもFAQ作成でもっとも貢献しているほどです。
社内の他部署からも好評です。弊社の製品は、機能や特徴を説明するために難しい用語を使うことがあります。お客様がその機能を違う言葉で検索したとしても、適切な情報が検索結果に表示される点を評価してもらっているのだと思います。検索窓のポップアップ部分を、他のページにも表示させたいという声も出てきているほどです。
そして、カスタマーサービス統括部は今年「LIXILアワード」という社内表彰を受けました。問い合わせが減少して省人化もできており、生産性が向上した点が評価されたのだと思います。
「困りごとの解決」を超え、販売サイトへの誘導やナレッジ構築など新たな価値提供を目指す
──今後の展望をお聞かせください。
長崎様 お客様の課題を解決するだけでなく、もう一歩踏み込んだ価値提供をしたいですね。今、リピート利用を促進するためにも、FAQの中でショールームや販売サイトへの誘導をし始めているところです。こういった能動的な形で、EC販売やリフォーム需要に対応するなどの事業貢献につなげていきたいと思います。
髙野様 中長期的には、ナレッジをもっとオープンにしていきたいと考えています。取付工事をするプロ向けのナレッジも含めて可能な限り情報を公開して、お客様も工務店も流通店も同じ情報を見ながら、悩みごとの解決ができるようになるといいのではないかと思うのです。
これが実現できると、社内外のすべての関係者が同じ情報を見るので、営業担当の工数や個別問い合わせの減少が期待でき、コストダウンにも繋がります。
──最後に、Helpfeelの導入を検討している企業へ、メッセージをお願いいたします。
長崎様 Helpfeelは使いやすいシステムであることはもちろんのこと、カスタマーサクセスの伴走支援がすばらしいと感じています。プロの目で見た改善活動ができるようになるので、システムへ投資しただけの効果が期待できると思います。