リテンションマーケティングとは?
リテンションマーケティングは、顧客を維持し、長期的な関係を構築するためのマーケティング手法です。
ここでは、リテンションマーケティングの定義について詳しく解説します。
リテンションマーケティングの定義とは?
「リテンション(retention)」は直訳すると「維持」や「保持」という意味を持ちます。ビジネスの文脈では「既存顧客を維持(既存顧客の流出防止)」するためのマーケティング施策として使われます。
新規顧客の獲得に比べて、既存顧客の維持にはコストが大幅に抑えられるという点で、企業にとって非常に効果的な戦略とされています。
この手法では、顧客のニーズに応じたフォローアップやサービス向上、価値の提供を通じて、長期的なリピート顧客を増やし、売上を安定化させることが目的です。
リテンションマーケティングが重要な理由
リテンションマーケティングが重要な4つの理由は、以下の通りです。
- コストを抑えて売上拡大ができる
- LTVの向上につながる
- 休眠顧客の掘り起こしができる
- 既存顧客のロイヤリティ向上が新規顧客獲得につながる
それぞれの理由を確認し、リテンションマーケティングを取り入れましょう。
コストを抑えて売上拡大ができる
ウェブマーケティングの浸透により誰もが簡単に広告が出せるようになった今、競争が激化し、新規顧客獲得のコストが大幅に上昇しています。
このような状況下において、新規獲得よりもコストを抑えて売上拡大できるということで、リテンションマーケティングが注目を集めています。
企業が持続的に成長するためには、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の維持が重要であり、LTV(顧客生涯価値)を最大化するためのリテンション施策が有効です。
特に人口減少が進む日本において、さらなる競争激化は多くの市場の命題であり、顧客一人ひとりを大切にし、長期的な関係を築くことが、企業の競争力向上に寄与します。
LTVの向上につながる
リテンションマーケティングは、顧客生涯価値(LTV)の向上に直結します。LTVとは、顧客が一生の間に企業にもたらす総利益を示す指標です。
既存顧客に対しては、リピート購入を促したり、関連性の高い別の商品を提案するクロスセル、より高価な商品への切り替えを促すアップセルを促進することで、1人あたりの利益を最大化することが可能です。
LTVが高まると、企業は安定的な収益を確保できるため、リテンション施策の重要性は非常に高いといえます。
▼LTVの計算方法や向上のためのポイントは別の記事でも詳しく解説しています。併せてご覧ください。
休眠顧客の掘り起こしができる
休眠顧客とは、過去に商品やサービスを利用したことがあるものの、現在は利用が停止している顧客のことです。リテンションマーケティングによって休眠顧客を掘り起こせば、新規顧客を獲得した場合と同レベル、あるいはそれ以上の成果を期待できます。
休眠顧客を掘り起こす利点は、既に商品やブランドの価値をある程度理解しているため、比較的商品購入までスムーズに到達しやすいところです。また、以前とは状況が変わり、商品やサービスへのニーズがさらに高まっている可能性もあります。
例えば、一定期間商品を購入していない顧客限定のキャンペーンを実施し、パーソナライズされたメッセージを送ると効果的です。過去の購入履歴から顧客のニーズを分析し、最適な新商品やサービスを紹介するのもよいでしょう。
既存顧客のロイヤリティ向上が新規顧客獲得につながる
顧客ロイヤリティとは、ブランドや企業に対して信頼や親しみ、愛着を感じることです。リテンションマーケティングを通じてロイヤリティが向上した顧客は、他の人に商品やサービスを勧める可能性が高まります。
近年は、SNSの口コミが商品購入の決め手になる場合も少なくありません。既存顧客がSNS上で商品の魅力を発信したり、利用を迷っている人に「この商品がおすすめだよ」と後押ししたりすることで、新たな顧客を創出するきっかけが生まれます。
新規顧客の獲得は、既存顧客の維持よりコストがかかるといわれています。既存顧客のロイヤリティを向上させ、自発的に口コミを発信してもらえる状況を作ることで、コストや時間をかけることなく、効率的に新規顧客を獲得できるでしょう。
▼顧客ロイヤリティについて、顧客満足度との違いや実践的な方法まで、以下の記事で徹底解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
リテンションマーケティングの具体的な施策
リテンションマーケティングの具体的な7つの施策は、以下の通りです。
- メールマーケティングによる顧客維持の実践
- SNSを活用した顧客とのコミュニケーション強化
- プッシュ通知やサイト内レコメンドの効果的な活用
- カスタマーサポートによる適切な対応
- カスタマーサクセスの働きかけ
- ツールの導入
- オフラインマーケティングの実施
それぞれの施策を、具体的に確認していきましょう。
メールマーケティングによる顧客維持の実践
メールマーケティングは、最も基本かつ効果の高いリテンション施策の1つです。パーソナライズされた内容を顧客に届けることで、関心度の高い情報をタイミングよく提供し、顧客との関係を深められます。
具体的には、定期的なメルマガ配信や、購入履歴に基づいたリターゲティングメール、休眠顧客に向けて強いインセンティブを設けた再アクティブ化メールなどが有効です。
これらの施策を通じて、顧客にブランドの存在感を示し、再購入や継続的な利用を促すことが可能です。
SNSを活用した顧客とのコミュニケーション強化
SNSを活用したリテンション施策では、顧客との双方向のコミュニケーションが鍵となります。
企業は、定期的な投稿やキャンペーン情報の発信に加え、コメントへの返信や個別のメッセージ対応を行うことで、顧客との信頼関係を強化できます。
また、SNSは顧客からのフィードバックを即時に直接得られるため、サービス改善や新商品開発にも役立ちます。
その高い拡散力は、既存顧客とのエンゲージメントを高めるだけでなく、新規顧客獲得にもつながるため、非常に有用なツールと言えるでしょう。
プッシュ通知やサイト内レコメンドの効果的な活用
スマートフォンアプリのプッシュ通知や、ウェブサイト上でのレコメンド機能は、顧客のリピート利用を促進する強力な手法です。
プッシュ通知では、顧客にリアルタイムでお得な情報やキャンペーンを直接伝えられ、レコメンド機能では、過去の購入履歴や閲覧履歴に基づきパーソナライズされた商品提案が可能です。
これらの機能により、顧客は「自分に合った情報やサービスを提供されている」と感じて企業へのロイヤリティが向上し、自然な形でリピート購入や継続利用が促されるでしょう。
カスタマーサポートによる適切な対応
カスタマーサポートは、顧客が抱える疑問や不満を解消するための大切な接点です。丁寧かつスピーディーに解決策を提示すれば、顧客ロイヤリティが高まり、リピート率の上昇や継続利用につなげられます。
例えば、ウェブサイト上にチャットボットやFAQ(よくある質問)を設置し、24時間いつでも顧客が自己解決できる環境を整えることは非常に効果的です。
営業時間が決まっているコールセンターと比べ、ウェブサイト上のツールは時間や場所を選ばずに活用できるため、顧客満足度が向上します。
チャットボットやFAQでは解決できない複雑な問い合わせには、専門スタッフが対応できる仕組みを構築しておくとよいでしょう。また、カスタマーサポートで集めた顧客の声を、商品やサービスの改善に活用するのも有効な施策です。
カスタマーサクセスの働きかけ
カスタマーサクセスとは、商品やサービスを通じて顧客が自身の目標を達成できるよう、企業が能動的に働きかけ、支援することを指します。商品やサービスを購入した後もサポートを継続することで、顧客に成功体験をもたらします。
特に、サブスクリプション型サービスやBtoBビジネスでは、顧客が成功体験を感じることで、追加購入や契約継続を期待できるでしょう。
具体例として、導入初期の慣れない状態でも、スムーズに商品やサービスを利用してもらうための手厚いサポート提供が挙げられます。また、定期的に顧客の利用状況を確認・分析し、最適な機能の活用方法やアドバイスを与えるのも効果的です。
カスタマーサクセスを強化すれば、顧客満足度が高まるだけでなく、継続利用によるLTVの上昇にもつながります。
▼以下の記事にて、カスタマーサクセスについて詳しく解説しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
ツールの導入
顧客データの収集・整理・分析を効果的に行うための、専用ツールを導入する方法もあります。リテンションマーケティングで使用される主なツールは、以下の通りです。
ツール名 |
特徴 |
CRM |
顧客管理ツール |
DMP |
インターネットに蓄積されたさまざまなデータを一元管理できるツール |
ツール導入の主な5つのメリットも確認しておいてください。
- 効率的にデータを集められる
- 分析精度が上がる
- 分析プロセスを簡略化・自動化できる
- 顧客の課題や改善点を把握しやすい
- データに基づいた高い精度の仮説を立てられる
ツールを上手に活用すれば顧客の状況を整理・分析できるようになり、課題解決に向けた改善策を立案しやすくなります。
オフラインマーケティングの実施
オフラインマーケティングとは、セミナーやワークショップ、無料体験会などのオフラインイベントを開催し、顧客とのつながりを強化する手法です。
商品やサービスを実際に体験できる場を提供したり、ユーザー同士が交流する機会を作ったりすることで、顧客との信頼関係を構築し、ロイヤリティの向上につなげます。
メールマーケティングやSNSなどのオンライン施策と比べて、一度にリーチできる人数は少ない一方、顧客との直接的な接点を通じて、商品やサービスへの理解を深めやすいのが特徴です。
オフラインイベントを通じて、自社に親しみや愛着を感じてもらえれば、競合他社と差別化を図ることができます。また、顧客との直接的なコミュニケーションを通じて、商品やサービスに対するリアルな反応や貴重な意見も確認でき、今後の改善や開発にも役立てられるでしょう。
リテンションマーケティングを成功させるポイント
リテンションマーケティングを成功させるポイントは、4つあります。
- 顧客をセグメント別に分類、分析する
- KPIを明確にする
- セグメントごとに適切な施策を展開する
- 施策の効果検証を実施、得られた結果を次の施策に反映する
それぞれのポイントを確認し、効果的なリテンションマーケティングを実施しましょう。
顧客をセグメント別に分類、分析する
リテンションマーケティングを行う上で大切なのは、顧客を深く理解することです。属性や過去の購入商品、利用状況などのデータを収集し、セグメント別に分類して顧客のニーズをくみ取る必要があります。
セグメント別に分類する代表的な手法として挙げられるのが、RFM分析です。最新購入日(Recency)・購入頻度(Frequency)・累計購入金額(Monetary)という3つのベクトルを多次元的に分析します。
分析結果をもとに休眠顧客や優良顧客などのセグメントに分類すれば、顧客に合わせた施策を立案できるようになります。
ただし、膨大な顧客データを保有している場合、手動での管理・分析は困難です。効率的に作業を進めるためには、CRMやBIツールなどの分析ツールを活用するとよいでしょう。
KPIを明確にする
KPIとは、ゴール達成に向けたプロセスや進捗(しんちょく)を測るための目標数値(中間目標)です。リテンションマーケティングでは、主に以下の指標がKPIに用いられます。
- ユニットエコノミクス:商品や店舗などのユニット単位でLTV/CACを計算し、事業の経済性を確認する指標。ユニット単位を1顧客とした場合、顧客1人あたりの経済性を数値で示せる。
- リテンションレート(既存顧客維持率):商品やサービスを継続購入する顧客の割合を示す数値。顧客満足度を測る指標として知られ、リテンションレートが高ければ顧客からの評価も高いと考えられる。
ユニットエコノミクスとリテンションレートでKPIを設定し、双方の目標数値を明確にすることで、施策の効果を客観的に可視化し、適切な評価と改善につなげることができます。
セグメントごとに適切な施策を展開する
セグメント別に分類した顧客ごとに、キャンペーンや情報提供などの施策を展開します。セグメントによって異なるニーズをくみ取り、適切な施策を取り入れることが大切です。
【具体例】
- リピーター向け:既に商品やサービスの購入歴があり、一定の関係を構築できているリピーターは、さらなる利用を促してロイヤリティを深めるクーポンが効果的。「新サービス先行体験割引」「限定商品〇〇%オフ」など、付加価値や特別感のあるクーポンで継続的な購入意欲を高める。
- 休眠顧客向け:一定期間、商品・サービスの購入がない休眠顧客は、リピートの機会を作るクーポンが必要。「〇週間ぶりのご利用で全品〇〇%オフ」「人気商品の〇〇%オフ限定クーポン」など、具体的なメリットで休眠顧客の関心を惹きつけ、商品・サービスへの引き戻しを目指す。
ただし、ただ安売りをすればよいわけではなく、商品・サービスの価値を再認識してもらう必要もあります。顧客にとって魅力的な体験や特典を提案し、ロイヤリティを高めましょう。
施策の効果検証を実施、得られた結果を次の施策に反映する
リテンションマーケティングを成功させるポイントは、定期的な効果測定です。事前に設定したKPIの確認と評価を実施し、課題が見つかった場合は改善策を検討します。
そして、改善策を取り入れた施策を展開し、再び効果測定を行うのが基本的な流れです。このようなPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を継続的に回すことで、施策がブラッシュアップされ、より高い効果を期待できるようになります。
PDCAサイクルを安定して継続するためには、スケジュールや人員の配置、コストなどで無理をしないことが重要です。リソースに無理があるとPDCAサイクルを回すのが難しくなり、破綻してしまう可能性が高まります。
データ分析ツールを活用して業務負担やコストを低減するなど、リソースに余裕を持たせるようにしましょう。
▼以下の記事で、リテンション率を向上させるポイントや実際の計算方法まで、詳しく解説しています。ぜひ併せてご確認ください。
リテンションマーケティングの成功事例
「リテンションマーケティングのやり方やポイントは理解したけど、実際の導入イメージがわかない」という場合は、過去の成功事例を参考にしてください。ここでは、リテンションマーケティング導入に役立つ成功事例を紹介します。
ユーザー視聴傾向の分析から導くLTV改善施策
「Amazon Prime」や「Netflix」をはじめとしたサブスクリプション型の動画配信サービスは、代表的な成功事例として挙げられます。
動画配信サービスのリテンションマーケティングで重要となるのが、ユーザーの行動データ分析です。ユーザーが視聴したコンテンツや使用したデバイス、視聴時間帯などの行動データを収集・分析し、ユーザーごとにおすすめのコンテンツを表示する仕組みを取り入れています。
また、全体の視聴傾向を分析し、ユーザーの興味関心を引くオリジナルコンテンツを戦略的に制作しているのも成功のキーポイントです。ユーザーの行動データを上手に活用することで解約率を下げ、LTVの向上につなげています。
FAQはリテンションマーケティングに貢献する?
FAQ(よくある質問)の充実度は顧客満足度に影響を与える要素の1つです。FAQは、顧客の疑問や不安を迅速に解決し、サービス利用の障壁を取り除き、ロイヤリティを向上させ、リテンション率改善に寄与します。
FAQが顧客満足度に与える影響
FAQの整備は、顧客体験(CX)を向上させる重要な要素です。顧客が商品やサービスを利用する際に抱える疑問を迅速に解決できれば、CXは大幅に向上し顧客満足度の向上に結びつきます。
そして、顧客がカスタマーサポートに直接問い合わせることなく、問題を解決できるようになるため、時間と労力の削減にもつながります。
このようなストレスフリーでスムーズな体験を通じて、顧客はブランドへの信頼感を深め、リピート購入やサービス継続利用への意欲が高まることが期待されます。
FAQを最適化してリテンション率を向上させる方法
FAQの最適化は、顧客の問い合わせのパターンを分析し、よくある問題やニーズに合わせた解決策を提供することから始まります。
検索しやすいインターフェースや、適切なタグ付けを行い、顧客が最小限のクリックで必要な情報にたどり着けるように設計します。
これにより、顧客は自己解決力を高め、ストレスなくサービスを利用し続けられます。FAQの改善は、顧客維持と満足度向上の鍵となり、結果としてリテンション率の向上に貢献するでしょう。
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