シンキングツールを学ぶ

シンキングツールを学ぶ


目次


シンキングツールとは

「深い学び」の実現 ー考える方法を教えるー
シンキングツールは「比較」「分類」「関連付け」などの思考スキルの活用を促す図です。
児童生徒が自らの考えを可視化するのに役立ちます。シンキングツールを使って情報や考えを整理することで、
他者の意見との比較や共有がしやすくなり、新たな考えや気づきを得ることができます。
児童生徒の活動に取り入れることで、自らの考えをつくり出す「深い学び」を実現することができます。

シンキングツールの価値
自分の考え方が目に見える形で表現されることで、自分自身の思考をより理解しやすくなり、他の人にも説明しやすくなります。さらに、自分と他者の考えの違いが明確になるため、効果的な対話が生まれ、思考が深まります。
自分の考えを他者の考えと比較することで、気づかなかったアイデアに出会い、知識や価値の枠組みが組み変わって新しい概念が生まれます。これは、学習指導要領における「主体的・対話的で深い学び」と対応します。

学習活動に適したシンキングツールを選択する
思考スキル
思考スキルとは、考える際に用いる「順序付ける」「比較する」などの考える活動のパターンです。アイデアを出すには、さまざまな「思考スキル」が必要となります。シンキングツールは、「思考スキル」に合わせて考える活動を図式化したものです。「思考スキル」に応じたシンキングツールを活用することで、児童生徒はアイデアを出しやすくなります。
授業においては、児童生徒の活動と組み合わせることで、自らの考えを作り出す「深い学び」を実現することができます。
  


シンキングツールの活用法 発散と収束のメソッド
考えをつくり出す授業デザイン
思考の発散と収束
児童生徒が主体的に考えをつくり出す授業では、思考の 「発散」と「収束」 という2つのプロセスを意識し、それぞれに適したシンキングツールを活用することが重要です。
思考の「発散」
自由にアイデアを生み出し、広げる段階です。拡散的思考、水平思考とも呼ばれます。
Yチャートやフィッシュボーン図、くまでチャートなどを使い、関連する情報を増やし、発想を広げることができます。
思考の「収束」
発散した情報を整理・統合して、一つの考えにまとめます。収束的思考、垂直思考とも呼ばれます。
ステップチャートや座標軸、ピラミッドチャートを用いて、アイデアを整理し、論理的に構築します。

発散と収束の授業デザイン
児童生徒が自らの考えをつくり出す過程では、「発散」と「収束」が連鎖的に繰り返されます。ツールの切り替え機能を使い、背景のシンキングツールを変えて、新しい考えをつくり出す授業をデザインしましょう。
「発散の場面」と「収束の場面」をバランスよく取り入れることで、児童生徒が自らの考えを構築しやすくなります。
「発散」に偏りすぎると思考が広がりすぎ、児童生徒は考えをまとめにくくなります。逆に、「収束」に偏りすぎると、創造性が制限され、新しいアイデアが生まれにくくなります。

1. アイデアを出す
トピックを提示し、視点を設定する
シンキングツールを使用してアイデアを出す際には、まずトピック(話題)を提示し、それに対する視点を設定します。(※)この視点をもとに考えることで、児童生徒は自由にアイデアを出しやすくなり、学習課題の達成につながります。
※視点をあらかじめ設定せず、自由にアイデアを出させたり、児童生徒自身に視点を考えさせたりする場合もあります。

視点に沿ってアイデアを書き出す
視点に沿ってアイデアを書き出します。この際、共有ノートを使うと、グループで効率的にアイデアを出すことができます(「2.アイデアを共有する」パターン②参照)。
アイデアを視覚的に整理することで、自分の考えを俯瞰することができ、新たなアイデアも浮かびやすくなります。

情報を集めて整理する
主体的な課題解決には、観察や実験、調査などで情報を集め、目的別に整理・分析することが重要です。シンキングツールを使うと、集めた情報をどこにどう配置すれば良いかがわかり、整理や分析がしやすくなります。

俯瞰してみる
シンキングツール上に並んだアイデアや情報を俯瞰し、課題解決に役立つものを見極めます。また、アイデア同士の関連性を考えながら、どのような考察や結論が導き出せるか考えることも重要です。

2. アイデアを共有する
パターン① 提出箱で共有する・他者の回答を使う
提出箱を使って、児童生徒がまとめたシンキングツールを共有することで、互いの考えに触れ、学びが一層深まります。
提出箱の「使う」機能を活用することで、児童生徒は他者の回答を自分のノートに取り込むことができます。自分の考えに他者の考えを加え、思考を深めることで、思考の収束に向かうことができます。

パターン② 共有ノートでアイデアを出し合う
共有ノートを使うと、グループで1つのシンキングツールを共同編集できます。複数の児童生徒で同時にアイデアを出し合い、整理することが可能です。
各自でアイデアを紹介する時間が不要になり、協働学習を効率的に進められます。

パターン③ カードを送り合う
他の児童生徒からカードを送ってもらうことで、他者のアイデアを自分のシンキングツールに取り入れることができます。
カードのやりとりが簡単に行えるため、他の児童生徒の意見を取り入れながら、自分の考えをさらに深めることができます。

3. アイデアを構築する
ツールの切り替え
シンキングツールを切り替えることで、異なる角度からアイデアを再構成し、新たな発想を得ることができます。
同じアイデアでも、ツールを変えるとそれまでとは異なるように見えることがあります。異なる角度から見ることで、新たな意味や関係性が見え、新しい考えをつくり出すことができます。
ツールの切り替え機能を活用することで、児童生徒はアイデアを保持したまま背景のシンキングツールを変更できます。これにより、思考の「発散」と「収束」のプロセスを短時間で行うことができます。

4. 考えを説明する
アイデアを整理し、まとめる
カードをつないでプレゼンテーションを作成できます。
思考を整理しながらカードをつなぐことで、発表内容をわかりやすくまとめられます。

考えを説明する
グループやクラスで発表することで、児童生徒は互いのアイデアを知ることができ、学び合いにつながります。
シンキングツールでアイデアが可視化・整理されているため、説明もスムーズに行えます。

意見を比較する
同じシンキングツールで考えをまとめると、意見の比較がしやすくなります。
説明もしやすくなるため、言語活動が活発になります。
このように、シンキングツールで「思考を可視化」することで、児童生徒は自分の考えに気づき、深め、新たなアイデアをつくり出すことができます。


教科別活用法
各教科の特性に合わせたシンキングツールの活用法をご紹介しています。以下のボタンからご覧ください。

シンキングツール活用マニュアル本
基本的な使い方や、授業デザインのポイント、教科別活用法をご紹介しています。思考力を育む授業づくりを学びたい先生におすすめの一冊です。
※ PDFデータはこちら


シンキングツールのオンライン研修&校内研修
オンライン研修情報
  無料でオンライン研修を受講することができます。

校内研修マニュアル
  シンキングツールを利用した校内研修ワークショップの方法をご紹介しております。


【監修】黒上 晴夫 教授(関西大学)
関西大学総合情報学部教授。専門は教育工学。専門領域はICTや教育放送の教育利用、カリキュラム開発、教育評価。米国や豪州における授業研究をもとに、日本の教育界において15年以上にわたり「シンキングツール(思考ツール)」の普及啓蒙に尽力。学習指導要領改訂に関わる各種会議委員を務める。

〈主な著書〉
『子どもに向きあう授業づくりー授業の設計, 展開から評価までー』(共著, 図書文化社, 2006)
『シンキングツール ~考えることを教えたい~』(共著, NPO法人学習創造フォーラム, 2012)
『考えるってこういうことか!「思考ツール」の授業』(共著, 小学館, 2013) ほか多数
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